20 / 23
19話 想い その1
しおりを挟む
兄上……トランス王子殿下のこと。確かに私は昔から王子殿下のことが好きだったと思う。偶にしか会えないから、ヒーローみたいな存在だったし。
「カイル……やっぱり気になる?」
「うん……そうだね」
「そっか……」
カイルと婚約関係になった以上、彼が気になっているんなら応えないといけない事柄よね。
「トランス王子……兄上のことは確かに好きだったわ。それは兄妹という意味合いじゃなく、もっと深い意味合いで……うん」
私はカイルに兄上の想いを話しているけれど、とても恥ずかしいわ……。なんていうか、二股かけてるような印象与えていないかとか心配になるし……。カイルの様子はチラチラと眺めているけれど、どう感じて聞いているんだろう?
「ま、そういうことなんだけど……」
「今でも、トランス王子殿下のことは好きなのかい?」
「ううん……て、言ったら嘘になっちゃうかな」
カイルのことはもちろん好きだけど、ここで「もう完全に吹っ切れたし、まったく気にしていないわ」とまでは言えなかった。だって今まで好きな人で、それで婚約はしばらくはいいかなって思ってた時もあったんだし。絶対実らない恋だとはわかっていたけれど、そんな夢物語に浸っておきたい自分も居たことは事実。
「でも、私はカイルのことを一番に考えているわ。それは事実よ、それに兄上とは血が繋がってるんだから、どうしようもないじゃない」
「まあ、それはそうなんだけどさ」
「……ごめんね。こんな歪な感情持ち合わせてる令嬢が相手で……」
「ううん、大丈夫だよ。そんなの全然……アリシアのことは昔から知ってるんだしさ」
「あ、ありがと……」
カイルは優しく微笑んでくれている。私の兄上への想いも取り込んだ上で、私のことを愛してくれてるんだろ思うと、嬉しさが込み上げてくる。
「でもさ……」
「何? カイル」
「僕としても、やっぱり少しだけ不安なところがあるんだ」
「う、うん。そうだよね、やっぱり……」
私の言葉だけで全て信じてくれるとは考えていない。私とカイルはまだ付き合ったばかりなんだから、これから時間を掛けてゆっくりとお互いの信頼関係を構築していけば──。
「……えっ!?」
そんなことを考えていた私に、カイルからの不意打ちが襲った。不意打ちって言うと聞こえが悪いけど……彼は私の手を取り手繰り寄せ、唇を奪っていった。
「カイル……やっぱり気になる?」
「うん……そうだね」
「そっか……」
カイルと婚約関係になった以上、彼が気になっているんなら応えないといけない事柄よね。
「トランス王子……兄上のことは確かに好きだったわ。それは兄妹という意味合いじゃなく、もっと深い意味合いで……うん」
私はカイルに兄上の想いを話しているけれど、とても恥ずかしいわ……。なんていうか、二股かけてるような印象与えていないかとか心配になるし……。カイルの様子はチラチラと眺めているけれど、どう感じて聞いているんだろう?
「ま、そういうことなんだけど……」
「今でも、トランス王子殿下のことは好きなのかい?」
「ううん……て、言ったら嘘になっちゃうかな」
カイルのことはもちろん好きだけど、ここで「もう完全に吹っ切れたし、まったく気にしていないわ」とまでは言えなかった。だって今まで好きな人で、それで婚約はしばらくはいいかなって思ってた時もあったんだし。絶対実らない恋だとはわかっていたけれど、そんな夢物語に浸っておきたい自分も居たことは事実。
「でも、私はカイルのことを一番に考えているわ。それは事実よ、それに兄上とは血が繋がってるんだから、どうしようもないじゃない」
「まあ、それはそうなんだけどさ」
「……ごめんね。こんな歪な感情持ち合わせてる令嬢が相手で……」
「ううん、大丈夫だよ。そんなの全然……アリシアのことは昔から知ってるんだしさ」
「あ、ありがと……」
カイルは優しく微笑んでくれている。私の兄上への想いも取り込んだ上で、私のことを愛してくれてるんだろ思うと、嬉しさが込み上げてくる。
「でもさ……」
「何? カイル」
「僕としても、やっぱり少しだけ不安なところがあるんだ」
「う、うん。そうだよね、やっぱり……」
私の言葉だけで全て信じてくれるとは考えていない。私とカイルはまだ付き合ったばかりなんだから、これから時間を掛けてゆっくりとお互いの信頼関係を構築していけば──。
「……えっ!?」
そんなことを考えていた私に、カイルからの不意打ちが襲った。不意打ちって言うと聞こえが悪いけど……彼は私の手を取り手繰り寄せ、唇を奪っていった。
43
お気に入りに追加
5,076
あなたにおすすめの小説
【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?
如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。
留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。
政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。
家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。
「こんな国、もう知らない!」
そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。
アトリアは弱いながらも治癒の力がある。
子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。
それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。
「ぜひ我が国へ来てほしい」
男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。
「……ん!?」
え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。
氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。
吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる