上 下
21 / 23

20話 想い その2

しおりを挟む
「……」

「……」


 私とカイルのキス……どれくらい続いているかな? なんだか、時間が経つのも忘れるというか、夢心地というか。突然、カイルに引き寄せられて唇を奪われたわけだけど、嫌な気分は全然なかった。そして、しばらくしてからカイルは私から離れる。


「ごめん、アリシア……急にこんなことしちゃって……」

「ううん、気にしないで。ちょっとビックリはしたけど、全然嫌じゃなかったし」

「そう? ならいいんだけど……」

「うん……」


 貴族街に吹き荒れる甘酸っぱい空気……一部の人にとっては、毛嫌いする空気かもしれないけれど、私達はそんなことはお構いなしに、その空気を享受していた。今、前にしている人物があの幼馴染のカイルだとは信じられない……。これから、この人と共に生きていくって考えると、人生は不思議なものよね。


「カイル、私、出来るだけあなたを見ていくように努力するから……私を離さないでね」

「うん、もちろんだよ、アリシア」


 う~~、なんだかとっても幸せな気分……! カイルってこんな男らしい人だったんだ……! やっぱり、成長しているのよねみんな。私は感動して、彼の腕にしがみついていた。カイルも照れながらも振りほどいたりはしない。

「アリシア、この後、どうしようか?」

「そうね……もう少し、貴族街を回らない? このまま帰るのはもったいないわ」

「そうだね、じゃあもう少し、一緒にいようか」

「ええ」

 すっかり板についたカップルの会話と言えるかしら? 元々が幼馴染だし、婚約関係になってもあまりギクシャクしなかったのは大きいと思う。手間が省けたっていうか……。私とカイルの二人はその後もしばらく寄り添ったまま、デートを続けた──。この日は、お互いの想いが通じ合った日となった。


---------------------------------


 カイルとのデートから3日後──


「アリシア」

「お父様……? お母様も」


 コムラータの屋敷にて、私はお父様とお母様に声を掛けられていた。なんだか二人ともニヤニヤと表情が和らいでいる。なにか、企んでいるような……。

 イグリオ・コムラータとネリス・コムラータの二人は私を引き寄せ始めた。

「な、なんでしょうか……?」

「さてさて、カイル・オーランド殿とは、どの程度進んでおるのだ?」

「この際、はっきり言ってしまいなさい」

「ええっ!?」


 お父様とお母様から出て来た言葉は意外過ぎるものだった。そんな、直接的な質問の仕方ってあるのかしら? 結構デリケートな事柄なのに……。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?

久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ? ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

初めまして婚約者様

まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」 緊迫する場での明るいのんびりとした声。 その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。 ○○○○○○○○○○ ※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。 目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)

処理中です...