侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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8話 準備 

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 その日、フューリ王太子殿下が再び、私のルヴィンス家を訪問していた。おもてなしをするのは、私の従兄であり、現当主のダンテ・ルヴィンス兄さまだ。従兄関係ではあるので、兄さまと呼称するのはやや矛盾があるのだけれど。私を昔から可愛がってくれていた方なので、本当の兄のように慕っている。


「ようこそお出でくださいました、王太子殿下」

「ああ、ダンテ殿も壮健そうで何よりだ」

「勿体ないお言葉にございます。ところで、本日のご用件を先にお伺いしても宜しいでしょうか?」


「うむ……それなのだがな……」


 フューリは少しだけ言葉を濁している。何か、言いにくいことがあるのかしら? 私と彼は伊達に幼馴染ではない。フューリの心の中は誰よりも分かっている自信があった。


「宮殿にて今度、ビクティム侯爵が主催するパーティーがあるようなのだが……」

「ビクティム侯爵が、ですか?」


「うむ」


 私は思わず、声を高くして問いかけてしまった。ダンテ兄さまの前でもあるので、フューリには敬語を使っている。この時期にビクティム侯爵がパーティーを開催する……? どういった目的で? 私は裏を探るのに必死だった。そして、割と早くその裏を看破することが出来た。


「まさか……メリア・デルトーイ様をお呼びするのでは?」

「察しがいいな、レオーネ。その通りだろう」

「確定ではないのですか?」


「ああ、まだ確定……というわけではないが、おそらくはそれしか考えられないだろう」


 フューリも十中八九間違いはないという表情で頷いていた。確かに、この時期に開催されるパーティーに、メリア様を招待しない理由がない。今まで、ほとんどのパーティーに出席していなかった彼女を紹介できるのだから、ビクティム侯爵としては、最高の栄誉と優越感に浸れる場となるだろう。

 他の貴族たちに対する、自らの権力の強さを強調することも出来るし。


「僭越ながら申し上げます、王太子殿下。もしや、その場で何かをなさるおつもりでは……?」


 ダンテ兄さまは、少々脅えながらフューリに質問していた。フューリはどことなく、怪しげな笑みを浮かべている。


「まさか……我がオルカスト王国にとっても、隣国の王女様と我が侯爵であるビクティム・クラウスが婚約関係……それから、結婚という関係になれば喜ばしいことだ。いくら私が王太子とはいえども、その邪魔をしたりはしないさ」

「なるほど、それなら良いのですが……」


 明らかにフューリは何かを企んでいる。でも、表向きはあくまでも両国間の関係性を重視しているといった感じだ。


「ただまあ……メリア・デルトーイ王女は非常にしたたかな人物とも聞いている。彼女がなにか、ビクティムを利用していることがあれば……私は止めるつもりはないがな」


 ん? あれ? なんだろう……既に出来レースのような様相を呈しているような。もしかして、フューリとメリア王女の間では何かが取引されている……? そんなことを疑ってしまうほどに、今のフューリは「準備」が万端といった口調をしていた……。
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