7 / 60
7話 ビクティム・クラウス (視点変更)
しおりを挟む
「ビクティム様、それで? 私と結婚してくださるのでしょう?」
「ええ、もちろんですとも、メリア殿」
本日、私は隣国の王女を屋敷内に招き入れていた。デルトーイ王国の第一王女である、メリア・デルトーイだ。年齢は20歳と聞いている。兄が二人居るはずなので、王位継承権は第3位に属ているはずだが。
「しかし、その娘は気の毒でしたわね。確か、名前は何と言ったかしら?」
「レオーネ・ルヴィンス伯爵令嬢のことですかな?」
「そうそう、その娘です。ビクティム様はよろしかったのかしら? なかなかの器量と従順な性格をしていらしたのでしょう?」
メリアからの質問に私は考え込んでいた。確かにレオーネはなかなかの器量ではあったが、メリアほどではない。オマケにあの女は婚前交渉という意味での夜の営みは拒んでいたからな。
さらに、所詮は伯爵家の人間だ、隣国の人物ではあるがメリア王女に適うはずなどあろうものか。しかも、あの家系は直結の当主が亡くなり、親戚の男が現当主になっているはずだからな。まあ、その家庭事情には同情してやらんこともないが、権力という意味合いでは、我がクラウス家の足元にも及ばんのだよ。ふふふふ。
「メリア殿ほどの器量もなければ、度量もない。さらには権力という意味合いでは天地の差と言えましょう」
「あら、嫌ですわ。私との婚約は政略結婚でしたの?」
「そういった意味合いが全くないとは言いませぬが……」
政略結婚よりも、彼女の身体を自由に出来る……私はその部分に至上の喜びを感じていた。
「それに……私の身体が目当てということも、あなた様の視線を見ていれば想像が付きますわ」
「いやはや……メリア殿は観察力に優れているようで」
視線を追われていたか、気をつけねばならんな。
「どのみち、私の国では女性はトップには立てませんので……こうして、他国のお方と婚約することが習わしになっております。私、まだまだ若輩者ですので、お手柔らかにお願い致しますわ」
「ふふふ、こちらこそ。公式の記録では、あなたはほとんどのパーティーに出席されていない。これにはなにか、理由があったのですかな?」
「とくに大きな理由はありませんが……うふふ」
う~む、このどこまで本気かを見せない妖艶な笑み。私はこの微笑みの虜になってしまったのだろうな。
「今度、宮殿内の会場を使い、大規模なパーティーを開く予定です。そちらには出席していただけますか?」
「畏まりましたわ」
「それでは、そのような手筈で……」
さて、メリア・デルトーイを妻に迎えるという手筈が整った。この件はまだ、ほとんどの貴族に話していない。他のライバル貴族たちの悔しがる顔が浮かんでくるというものだ。ふふふふ、私がオルカスト王国で最も優秀な貴族になる日も近いかもしれんな。
「ええ、もちろんですとも、メリア殿」
本日、私は隣国の王女を屋敷内に招き入れていた。デルトーイ王国の第一王女である、メリア・デルトーイだ。年齢は20歳と聞いている。兄が二人居るはずなので、王位継承権は第3位に属ているはずだが。
「しかし、その娘は気の毒でしたわね。確か、名前は何と言ったかしら?」
「レオーネ・ルヴィンス伯爵令嬢のことですかな?」
「そうそう、その娘です。ビクティム様はよろしかったのかしら? なかなかの器量と従順な性格をしていらしたのでしょう?」
メリアからの質問に私は考え込んでいた。確かにレオーネはなかなかの器量ではあったが、メリアほどではない。オマケにあの女は婚前交渉という意味での夜の営みは拒んでいたからな。
さらに、所詮は伯爵家の人間だ、隣国の人物ではあるがメリア王女に適うはずなどあろうものか。しかも、あの家系は直結の当主が亡くなり、親戚の男が現当主になっているはずだからな。まあ、その家庭事情には同情してやらんこともないが、権力という意味合いでは、我がクラウス家の足元にも及ばんのだよ。ふふふふ。
「メリア殿ほどの器量もなければ、度量もない。さらには権力という意味合いでは天地の差と言えましょう」
「あら、嫌ですわ。私との婚約は政略結婚でしたの?」
「そういった意味合いが全くないとは言いませぬが……」
政略結婚よりも、彼女の身体を自由に出来る……私はその部分に至上の喜びを感じていた。
「それに……私の身体が目当てということも、あなた様の視線を見ていれば想像が付きますわ」
「いやはや……メリア殿は観察力に優れているようで」
視線を追われていたか、気をつけねばならんな。
「どのみち、私の国では女性はトップには立てませんので……こうして、他国のお方と婚約することが習わしになっております。私、まだまだ若輩者ですので、お手柔らかにお願い致しますわ」
「ふふふ、こちらこそ。公式の記録では、あなたはほとんどのパーティーに出席されていない。これにはなにか、理由があったのですかな?」
「とくに大きな理由はありませんが……うふふ」
う~む、このどこまで本気かを見せない妖艶な笑み。私はこの微笑みの虜になってしまったのだろうな。
「今度、宮殿内の会場を使い、大規模なパーティーを開く予定です。そちらには出席していただけますか?」
「畏まりましたわ」
「それでは、そのような手筈で……」
さて、メリア・デルトーイを妻に迎えるという手筈が整った。この件はまだ、ほとんどの貴族に話していない。他のライバル貴族たちの悔しがる顔が浮かんでくるというものだ。ふふふふ、私がオルカスト王国で最も優秀な貴族になる日も近いかもしれんな。
20
お気に入りに追加
4,203
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
寝る間が極楽、だが寝れない
Hk
恋愛
【第14回恋愛小説大賞にて奨励賞を頂きました】
修道女のステファニーは国王の庶子だが、幼い頃から修道院で暮らしていた。ある日還俗してオーウェン・バートン伯爵の元へ降嫁することを命じられる。
一方、オーウェンは自身が携わった鉱山採掘における崩落事故のトラウマで、不眠と閉所恐怖症に悩まされていた。強制的な結婚だったので、3年で離縁することをステファニーに約束するオーウェン。
しかし降嫁してきたステファニーはなんだか変わっていて、一緒に過ごすうちにトラウマが薄れだんだんステファニーのことが気になって仕方なくなってきて…
※本編完結。たまに番外編を更新しています
※他サイトにも投稿しています
※主人公の仕事については一部ふわふわ設定です
※表紙イラストはあまもり様(@amamori_stst)に描いて頂きました
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる