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7話 ビクティム・クラウス (視点変更)

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「ビクティム様、それで? 私と結婚してくださるのでしょう?」

「ええ、もちろんですとも、メリア殿」


 本日、私は隣国の王女を屋敷内に招き入れていた。デルトーイ王国の第一王女である、メリア・デルトーイだ。年齢は20歳と聞いている。兄が二人居るはずなので、王位継承権は第3位に属ているはずだが。


「しかし、その娘は気の毒でしたわね。確か、名前は何と言ったかしら?」

「レオーネ・ルヴィンス伯爵令嬢のことですかな?」

「そうそう、その娘です。ビクティム様はよろしかったのかしら? なかなかの器量と従順な性格をしていらしたのでしょう?」


 メリアからの質問に私は考え込んでいた。確かにレオーネはなかなかの器量ではあったが、メリアほどではない。オマケにあの女は婚前交渉という意味での夜の営みは拒んでいたからな。

 さらに、所詮は伯爵家の人間だ、隣国の人物ではあるがメリア王女に適うはずなどあろうものか。しかも、あの家系は直結の当主が亡くなり、親戚の男が現当主になっているはずだからな。まあ、その家庭事情には同情してやらんこともないが、権力という意味合いでは、我がクラウス家の足元にも及ばんのだよ。ふふふふ。


「メリア殿ほどの器量もなければ、度量もない。さらには権力という意味合いでは天地の差と言えましょう」

「あら、嫌ですわ。私との婚約は政略結婚でしたの?」

「そういった意味合いが全くないとは言いませぬが……」


 政略結婚よりも、彼女の身体を自由に出来る……私はその部分に至上の喜びを感じていた。

「それに……私の身体が目当てということも、あなた様の視線を見ていれば想像が付きますわ」

「いやはや……メリア殿は観察力に優れているようで」


 視線を追われていたか、気をつけねばならんな。


「どのみち、私の国では女性はトップには立てませんので……こうして、他国のお方と婚約することが習わしになっております。私、まだまだ若輩者ですので、お手柔らかにお願い致しますわ」

「ふふふ、こちらこそ。公式の記録では、あなたはほとんどのパーティーに出席されていない。これにはなにか、理由があったのですかな?」

「とくに大きな理由はありませんが……うふふ」


 う~む、このどこまで本気かを見せない妖艶な笑み。私はこの微笑みの虜になってしまったのだろうな。

「今度、宮殿内の会場を使い、大規模なパーティーを開く予定です。そちらには出席していただけますか?」

「畏まりましたわ」

「それでは、そのような手筈で……」


 さて、メリア・デルトーイを妻に迎えるという手筈が整った。この件はまだ、ほとんどの貴族に話していない。他のライバル貴族たちの悔しがる顔が浮かんでくるというものだ。ふふふふ、私がオルカスト王国で最も優秀な貴族になる日も近いかもしれんな。
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