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第5章(4)紫夕side
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しおりを挟む「いや~弥夜君は優秀だな~!」
「さすが総指揮官の息子!立派な後継者が出来て守護神の将来も安泰ですね~!!」
守護神の隊員として入隊した弥夜は、誰もが認める優等生だった。
魔器を扱う力だけじゃない。弥夜は勉学にも抜かりがなくて、学力が高く頭も良かった。
人型魔物で、人間よりも優れた五感と身体能力を生まれつき持っていたが、弥夜はそれだけで満足する事のない努力家。
弥夜の凄さは生まれ持った恵みでもなければ、親の七光りでもない。間違いなく、アイツ自身の輝きだった。
「いやいや、弥夜はズボラな俺には似てねぇよ。ホント、優等生過ぎて親の俺の方が頭が下がる」
自慢の息子だ。
血の繋がりはないが、弥夜が周りの人達から褒められる度、俺は本当に嬉しかった。
守護神の隊員としてだけじゃない。弥夜は息子としても、兄としても出来過ぎていた。
我が儘なんて言った事が無ければ反抗期もなく、俺を困らせた事は一度もない。
紫愛の面倒もよく見てくれて、いつも自分の事よりも妹の気持ちを優先してくれる優しい兄だった。
そんな弥夜を見て、俺は"このままでいい"と甘えてしまっていたんだ。
弥夜はいつも穏やかだった。
腹を立てている事もあったかも知れないが、それを決して表に出す事はない。
ましてや、泣き言を言う事や涙を流す姿なんて、俺は一度も見た事がなかったんだ。
穏やかに暮らしていける事が、俺は何よりも1番だと思って安心していたーー。
だから、驚いた。
『ーー……紫愛、好きだよ』
弥夜が二十歳の時。俺はきっと初めて、アイツの本音を聞いた。
いや、何となく……。薄々は弥夜の紫愛への気持ちに気付きながら、俺はずっと気付いていないフリをしていた。
紫愛を見つめる優しい弥夜の眼差しも。
大切そうに柔らかく頭を撫でるあの優しい手も。
兄として妹を大切に想ってくれているんだと、思いたかった。
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