グレイ

第４章（４）紫愛side

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そう思う事は、願う事は人間だけの特権なの？
魔物は、そう思ったり願ったりしてはいけないの？

人間だって、魔物を殺すじゃないーー……。
魔物にも感情があって、家族と静かに暮らしたいと思う事は、いけない事なのーー……？

何とも言えない想いが、私の中に広がっていた。

パパは様子を伺っているのか、すぐにはトニーさんの問い掛けに答えない。
パパが答えない以上、先に口を開いてはいけない、って私は堪えた。

すると、この空気に耐え切れなくなったのか……。いや、まだこの現実を嘘だと信じたい、という願いからなのか、アレクが言った。

「ハ、ハハハハッ……！な、何言ってんだよ！オヤジ！総指揮官紫夕さんがそんな事する訳ねぇだろっ？」

このアレクが言ってくれた一言は、上手く使えば、私達の危険を回避する事が出来ただろう。

「あれだ！総指揮官紫夕さんは良い人だから巻き込まれて……それで、騙されたまま今に至るんだよ！！そうに決まってる！！」

アレクに合わせて「そうだ」って言えば……。真実を隠して嘘をつけば、この場を乗り切る事が出来るかも知れなかった。

「ほ、ほら！紫愛シアだって、驚いてるじゃねぇか！！
お前は何も知らなかったんだよなっ？今、色々聞いてビックリしてんだよなっ？っ……そうだろ？！」

アレクが、今度は私に問い掛ける。

ーーうん、そうだよ。

そう答えるべきだって……。
そう、答えなきゃいけない、って、分かってた。

『いいか？もし、人型魔物の事や俺達家族の秘密がバレそうになった時、お前達は何も言うな。
俺が何とかする。だからお前達は、俺が話す事に合わせるんだ。……いいな？』

パパと交わした約束が、頭の中で木霊する。

それは、私達家族の平和を守る為の約束。
私達を必死で守ろうとしてくれるパパの、愛だった。
絶対に絶対に守らなくてはならない約束だと、分かっていた。