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第12章(1)紫夕side
12-1-2
しおりを挟む「お父さんの……。三月さんの事は聞いた事あったけど、お母さんの事は聞いた事なかったでしょ?
だから、どんな人なのかな~?って、思って」
そう言って、微笑む雪。
その笑顔を見たら、さっきまでの落ち込んでいる様子が少し消えている気がして……。俺との他愛もない会話で雪が元気になるなら、話してやりたいと思った。
でも、どんな人、って聞かれてどう説明していいものか分からなかった俺は、荷台の片隅に置いてあった段ボールの中に入っていた写真立てを取り出して雪に渡した。
「!……これ」
「俺と親父と、お袋が写ってる写真だ」
雪に渡したのは、昔、親父が大事そうに飾っていた写真の一枚。お袋が死んじまう少し前、俺の4歳の誕生日に撮った家族写真だった。
容姿を説明するのはなかなか難しいからな。言葉より見せた方が早いと思ったんだ。
「お袋、綺麗だろ?親父と一緒になる前は守護神で受け付け嬢兼オペレーターやってて、モテモテだったらしいぜ~?
ハハッ、よく親父と結婚したよな~」
雪にそう話しながら、俺はお袋の事を思い出した。
自分が4歳の時亡くなってしまったからあまりたくさんの想い出があるとは言えないけれど、とても綺麗な人だった、と写真を見返しても思う。
でも、可愛い見た目に似合わず、親父に結構ポンポンもの言ってて、夫婦、って言うよりは友達や兄妹みたいだ、って雰囲気だったっけ。
そんな風に思い出しながら、ふと写真から雪に目を移すと……。
「……可愛い」
「ん?ああ、そうだろ、そうだろっ?お袋……」
「紫夕、可愛い~!!」
「!っ、はぁ……?!」
そっち?!
お袋じゃなくて、俺っ?!
予想外の言葉に、俺は思わず心の中でツッコんでしまった。
少々呆れて、「おいおい、雪。今はお袋の話じゃなかったのか~?」って、苦笑いしながら言おうと思った。……が。
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