スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
241 / 589
第12章(1)紫夕side

12-1-1

しおりを挟む

たちばながいつまでも、俺達を野放しにしておく筈がないーー。

ずっとそう、覚悟はしていた。
だから家を捨てて、旅に出る事を計画していたんだ。
たちばなに壊されなくても、遅かれ早かれあの家は出るつもりだった。

……
…………けど。

「……ゆき、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。……ありがとう」

車の荷台で紫雪しせつにやられた傷の手当てをしてやると、ゆきは俺にお礼を言って微笑った。
でも、その笑顔は明らかに無理してて、落ち込んでいるのが目に見えて分かる。
せっかく昨夜、いっぱい仲良しして、朝は本当に幸せそうにしていてくれたと言うのに……。

これも全てたちばなのせいだ。
全く。とんでもなく酷い親父だな。

崩された家から何とか必要な物だけは発掘して、ひとまずたちばな達がまたやって来る前にあの場からは離れたが……。おそらく、あれはただの脅し。
すぐに俺達を捕まえる気はなくて、ただ、いつでも自分はお前達を引き裂く事が出来る、って警告だ。

ゆきも、そんなたちばなの考えに……気付いてる、よな?

そう思うと不安が過ぎる。
ゆきの事だから、自分のせいで紫雪しせつが怖い想いしちまった、とか。
自分のせいでこれからも大変だ、とか、思い込んでないか心配だった。
そんな気持ちから俺は思わずゆきを抱き締めて、頬の傷にそっと口付けた。
すると、ゆきが俺を見つめた後に目を閉じてキスを強請る。俺はゆきに応えてキスすると、その後に胸に抱き寄せて頭を撫でてやった。

何があっても、俺は絶対にお前と離れる気はねぇからなーー。

そう言ってやるべきか迷っていると、ゆきが俺を見上げて言った。

「ね?紫夕しゆうのお母さんって、どんな人?」

「!……あ?」

その意外な質問に驚いた。
この状況で、まさかそんな事を聞かれるとは思ってなかった俺がポカンッとしていると、ゆきは言葉を続けた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

できそこないの幸せ

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:210

富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:924pt お気に入り:221

悪役令嬢は可愛いものがお好き

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,893

「続きがある台本たち」

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:2

【完結】うちの子は可愛い弱虫

BL / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:202

ミューズ ~彼女は彼らの眩しい人~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

処理中です...