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第12章(1)紫夕side
12-1-1
しおりを挟む橘がいつまでも、俺達を野放しにしておく筈がないーー。
ずっとそう、覚悟はしていた。
だから家を捨てて、旅に出る事を計画していたんだ。
橘に壊されなくても、遅かれ早かれあの家は出るつもりだった。
……
…………けど。
「……雪、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。……ありがとう」
車の荷台で紫雪にやられた傷の手当てをしてやると、雪は俺にお礼を言って微笑った。
でも、その笑顔は明らかに無理してて、落ち込んでいるのが目に見えて分かる。
せっかく昨夜、いっぱい仲良しして、朝は本当に幸せそうにしていてくれたと言うのに……。
これも全て橘のせいだ。
全く。とんでもなく酷い親父だな。
崩された家から何とか必要な物だけは発掘して、ひとまず橘達がまたやって来る前にあの場からは離れたが……。おそらく、あれはただの脅し。
すぐに俺達を捕まえる気はなくて、ただ、いつでも自分はお前達を引き裂く事が出来る、って警告だ。
雪も、そんな橘の考えに……気付いてる、よな?
そう思うと不安が過ぎる。
雪の事だから、自分のせいで紫雪が怖い想いしちまった、とか。
自分のせいでこれからも大変だ、とか、思い込んでないか心配だった。
そんな気持ちから俺は思わず雪を抱き締めて、頬の傷にそっと口付けた。
すると、雪が俺を見つめた後に目を閉じてキスを強請る。俺は雪に応えてキスすると、その後に胸に抱き寄せて頭を撫でてやった。
何があっても、俺は絶対にお前と離れる気はねぇからなーー。
そう言ってやるべきか迷っていると、雪が俺を見上げて言った。
「ね?紫夕のお母さんって、どんな人?」
「!……あ?」
その意外な質問に驚いた。
この状況で、まさかそんな事を聞かれるとは思ってなかった俺がポカンッとしていると、雪は言葉を続けた。
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