スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
224 / 589
第11章(1)雪side

11-1-1

しおりを挟む

紫夕しゆうに手を引かれて町を出て、そのままオレ達はジープが止めてある茂みまで走った。
途中、残して来てしまった響夜きょうやの事が気になって何度も振り返りたかったけど、オレじゃなんの力にもなれなくて、むしろ足手纏いになるだけ……。
それに、オレには他にするべき事があると思った。

響夜きょうやが今日一緒に過ごした時間で教えてくれた事を、無駄にしないーー。

そう心に誓って、走って走って……。オレは紫夕しゆうと、何とか追っ手に追われる事もなくジープの元まで辿り着けた。

……
…………でも、オレは情けない。
すぐに紫夕しゆうと話したかったけど、全力で走ったせいで息が上がっちゃって……。結局、話を切り出せず助手席に座らされて、「とりあえず、町を離れよう」って言う紫夕しゆうに従うしか出来なかった。

そして、車が走り始めてから約三十分。
タイミングと勢いを逃しちゃって、車内はシーンッとしたまま。
チラッと様子を伺うけど、紫夕しゆうは運転に集中してて、全然こっちを見てくれない。

このまま家に着くまで、何も言えないのかな……?

そんな不安が過って……。でも、それじゃ駄目だと思ったオレは話を切り出そうと決意して、拳をギュッと握り締めた。
けど、その時。車が止まった。

!っ、……え?

ハッとして窓の外を見る。
が、家、ではない。そこは家の付近でもなさそうな、知らない場所だった。
微かに耳に届く水の流れる音と同時に、少し離れた場所にある川が目に映って、ここが河原だと言う事が分かる。
すると、シートベルトを外した紫夕しゆうが運転席から降りた。オレもシートベルトを外すと、後を追うように車から降りる。
そして、すぐに反対側の紫夕しゆうの方へ行くと、彼は夕方から夜に変わりそうな空を見つめていた。

あとどれだけ、オレは紫夕しゆうと居られるんだろうーー?

その瞬間、真っ先に浮かんだのはそんな感情だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと…… 帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。 生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。 そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。 そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。 もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。 「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!

選択的ぼっちの俺たちは丁度いい距離を模索中!

きよひ
BL
ぼっち無愛想エリート×ぼっちファッションヤンキー 蓮は会話が苦手すぎて、不良のような格好で周りを牽制している高校生だ。 下校中におじいさんを助けたことをきっかけに、その孫でエリート高校生の大和と出会う。 蓮に負けず劣らず無表情で無愛想な大和とはもう関わることはないと思っていたが、一度認識してしまうと下校中に妙に目に入ってくるようになってしまう。 少しずつ接する内に、大和も蓮と同じく意図的に他人と距離をとっているんだと気づいていく。 ひょんなことから大和の服を着る羽目になったり、一緒にバイトすることになったり、大和の部屋で寝ることになったり。 一進一退を繰り返して、二人が少しずつ落ち着く距離を模索していく。

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。

Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。 彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。 そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。 この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。 その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました

奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」  妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。 「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」 「ど、どうも……」  ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。 「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」 「分かりましたわ」  こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。

この恋は無双

ぽめた
BL
 タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。  サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。  とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。 *←少し性的な表現を含みます。 苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...