スノウ2

☆リサーナ☆

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第10章(3)雪side

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そして、ヨロけた紫夕しゆうよりも早く体勢を整えると、今度は自分が胸倉を掴みかかり顔をグッと近付けて言った。

「そんなに大事なら、二度と離すんじゃねぇ。
次泣かせてみろ。……もう絶対に、返さねぇからなっ」

ーー……。
……、きょう……

その、信じられない言葉と、今まで見た事がなかった響夜きょうやの表情に、オレはまばたきも出来ずに横顔を見つめてしまう。
静かな怒りを秘めた声と、複雑な想いを抑えているような表情に見えるのは、オレの気のせいなんだろうか?
紫夕しゆうも、今までとは全然違う響夜きょうやの様子を感じ取ってか、ただ瞳を逸らさずに見つめ返していた。

暫くすると、紫夕しゆうの胸倉をゆっくり放した響夜きょうやが口を開く。

「……行け」

「っ……響夜きょうや?」

「早く行け。騒いだせいで警備が来る」

その言葉にハッとして周りを見ると、殴り合いをしたせいでいつの間にか人集りが出来ていて、オレの耳にも警備が駆けてくる足音が聞こえた。

大変だ、っ……逃げなきゃ。

オレを助ける為に、守護神ガーディアンを無理矢理抜けた紫夕しゆう。もし捕まって身元がバレたら、どうなってしまうか分からない。
そう気付いて身に迫る不安に襲われていると、ゆっくりと歩き出した響夜きょうやが言った。

「僕が引きつける」

「え?」

「僕が相手してるうちに行け」

「っ、……で、でも、響夜きょうやは?」

「ハッ、お前に心配される程弱くねぇよ。
紫夕しゆうさん、そのグズさっさと連れてって下さい」

オレの言葉に響夜きょうやは鼻で笑って、またいつもの口調に戻っていた。
でも、顔はどんな表情をしてるのか分からなくて……。もう一度見たかったけど、見る事が出来ないまま、オレはその場を離れる事になる。

「……。
っ、すまねぇ、響夜きょうやゆき、行くぞ」

紫夕しゆうに手を引かれて、何も出来ないオレはただ前を向いて走るしかなかった。

「じゃあな。
……、…………ゆき

背後から微かに聞こえたその呟きは、オレの名前なのに、違う音に聞こえた気がした。

……
…………。
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