スノウ2

☆リサーナ☆

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第10章(3)雪side

10-3-1

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紫夕しゆうと再会する、少し前ーー。

人混みに慣れる練習と自分に自信を付ける為に、オレは響夜きょうやと色んな遊び場を回った。(と、言うか連れ回された)
ダーツを始め、野球バッティングやらバスケフリースローやら……。どれも初挑戦で全然上手く出来なかったけど、そんなオレに響夜きょうやは少しも嫌な表情かおせず教えてくれた。
ちゃんと無理なく、オレの様子を見ながら適度に休憩もくれて……。

実は、優しいの……かな?

そう、オレの中で響夜きょうやへのイメージが変わった時間だった。
それに、始めの方は人に見られてるみたいで緊張したけど、最後の方は全然気にならなかったし……。何だかんだ、少し、楽しかった。


そんな時間を過ごして、「飲み物でも買いに行こうぜ」と言った響夜きょうやに付いて町中を歩いている最中。ふと、空を見上げると、いつの間にか夕陽でオレンジ色に染まっている事に気付く。

「……。
もう、夕方なんだ」

足を止めて、そうポツリと呟くと、何だか一気に現実に戻って来た気がした。
そしたら急に、胸にじわじわと広がって行く切ない気持ち。そして頭に浮かぶのは、紫夕しゆうの顔だった。

紫夕しゆう、何してるんだろう……?

お昼頃に別れて、あれからもうずいぶんと時間が経った。けど、未だに会えてない。
この町は広いし、人も多いから、その中でたった一人を見付けるのは至難の業だろう。
でも、もしかしたら……。

酷い事言っちゃったから、もう、オレの事なんて捜してくれてないのかも……。

そう思って、俯いた。
すると、そんなオレに「オイッ」と声を掛けてくれたのは響夜きょうや。ハッとして、すぐに顔を向けると、その表情は何だか少し怒っているように見えた。
けれど、そんな響夜きょうやの口から出たのは予想外の言葉。

「あ、……ご、ごめん。行こ……」

「ーーお前、このまま僕と一緒に居るか?」

ーー……え?

その言葉に、驚く。
てっきり、歩みを止めてボーッとしていた事に怒っているのかと思ってた。のに……。
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