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第6章(2)サクヤside
6-2-2
しおりを挟む聞けば、紫夕は雪の事を思い出してしまうだろう。
それに、紫夕の口から雪の事を聞く、勇気はなかった。
二人きりで居られる時だけは、雪が居ない今だけは、ボクだけを見てほしいーー。
そんな想いから、ずっと口に出来なかった。
本当は口にしたくない名前。でも、気になって仕方のない人。
複雑な想いを抱えたまま見つめていると、風磨さんが微笑んだ。
「ああ、もちろん知ってるよ」
「……「ゆき」は、やさしい?」
「ん?」
「「ゆき」は、ボクのこと……どうおもうかな?」
ずっとずっと、それが心配だった。
「どうして、そんな事聞くの?」
「だって「ゆき」は、しゆーの"だいじなひと"なんでしょ?
……だから、かえってきて、もしボクがしゆーのそばにいたら……いやがらない、かな?」
雪があの家に……。紫夕の元に帰って来て、自分が居るのを見たらどう思うのかが、ずっと気になっていた。
紫夕は優しい。ボクと一緒に居てくれるけど、大事な人の雪がボクを嫌がれば、きっと……、……。
ボクじゃなくて、"ゆき"をえらぶーー……。
そんな事は、分かり切っている事。仕方のない事。
でも、もし雪が優しい人なら仲良く出来るかも知れない。
紫夕と紫雪と雪と自分が、一緒に暮らせるかも知れない。
そう思った。……だから、…………。
「っ、このかんむりはね!「ゆき」にあげるの!
しゆーと「ゆき」が、やくそくをちかって、しあわせになるんだよ!」
想いを紡いだ花冠を作ろうと思った。
大好きな紫夕が、大好きな雪と幸せになってくれたら、それで良かった。
いつも心の中が暖かくなる紫夕の笑顔が見られたら、ボクもきっと幸せになれる。
今は胸がチクチクして痛む重い塊も、きっと紫夕の笑顔を見たら消えてくれる。
……そう、思って。涙を堪えて微笑った。
でも、そしたら風磨さんがニヤリと口角を上げて、おかしそうに「アハハハハッ」って声を上げて笑った。
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