スノウ2

☆リサーナ☆

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第5章(3)紫夕side

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思い出してもらう為に一緒に居た筈が、いつの間にか、"サクヤに好きになってもらう為"に頑張っている自分が居たんだ。
笑顔になってくれると嬉しくて、泣いたら慰めてやりたくて、ワガママ言われても構いたくなって……。怒ったり、拗ねたりされて困らせられる時もあるけど、今はそれすらも愛おしい。

「可愛いんだ、今のアイツが。
だから、今は……サクヤが俺の事を、俺と同じ気持ちで好きになってくれたらな、って思うよ」

サクヤからしたら俺はオッサンで、恋人や兄貴を通り越してきっと"お父さん"だろう。
懐いて、慕って、笑ってくれるのは恋愛感情じゃなくて家族愛だ。
サクラさんが居なくなってしまったし、たちばなは幼いサクヤに父親として認識させていなかったようだから……きっと、サクヤは父親の存在が恋しかっただけだ。
抱きついてきたり、甘えてくれるのは俺を父親みたいに見てるから……。俺は、そう思っていた。

「……相思相愛、じゃないですか」

「ん?」

「いえ、何でもありません。
羨ましいですね、そんな風に誰かを真っ直ぐに想えるなんて……」

俺の言葉を聞いた後に、そんな意味深な事を呟く朝日あさひ
コイツはたちばなの一味だ。変に仲良くなったり、深入りするつもりはない。
けど、この時の朝日あさひの憂いを帯びた瞳を見たら、俺はつい、質問を返してた。

「……アンタは?」

「え?」

「アンタは、その……大切な人とか、いねぇのか?」

初めは年齢的に「結婚は?」って聞こうと思ったが、奴の左手に視線を落とすと薬指に指ははまっていない。仕事中だから着けてない、って事もあり得たが、俺はあえて「大切な人」って言葉を使った。
すると朝日あさひは、静かに答える。

「大好きな、初恋の人がいました。
けど、私は当時彼女よりも仕事と地位が大切で……。ただ、傷付けて、終わったんです」

そう言って、朝日あさひは苦笑いのような、引き攣った微笑みをした。
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