じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

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第2章 開店

第26話 料理勝負らしい

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「そだててるのはメマなのに……」


 メマはブー垂れて、ツーンっとそっぽを向く。


「ご、ごめんねメマちゃん。枝豆あげたらダメかな?」
「……つーん」


 比奈が謝るが、一度チラッと見ただけでまたもそっぽを向く。


「メマー、右京さんは源おじーちゃんのお友達なんだぞー。源おじーちゃんにお世話になってるだろー?」
「それはげんおじーちゃんだけだもん。その怖い人じゃないもん」

 ここまでとは予想外だ。メマは人見知り……とは言えないが、ある特定の人達に対しては人見知りだから、もしかしたらこうなのかもしれない。

 それはーー


「あー……ちょっと第一印象悪かったからなぁ」


 怖い人である。
 怖い人にはメマも流石に明るくはいけない。源さんは見た目が普段から怖いからそうだった。

 右京さんに関してもそう。さっきの比奈との睨み合いとも言えるあの数秒は、生唾を飲み込んだ程だ。


「ふむ……メマちゃん、って言ったかな?」


 ツーンとそっぽを向いているメマに、右京さんは笑顔で床に膝を着き、メマの隣へと座る。


「……何?」
「……ごめんね、普通なら育ててくれた人から許可を取るのが先だったね」
「別に……謝らなくていいもん」
「うーん。そっかぁ」


 強情だ。俺と比奈が譲ってくれる様に言ったから、逆に意地を張ってるのかも。


「じゃあさ。お詫びにメマちゃんが欲しい物をあげる。だから許して欲しいな」
「……別に、欲しくない」
「えー、オモチャとか、お人形さんとか、何でも良いんだけど?」


 右京さんが笑顔で話し掛けるが、どこ吹く風だ。


「じゃあ……メマちゃんの育てた枝豆を美味しく料理してあげようか?」
「いらない。おとーちゃんの方が美味しいもん」


 え。

 メマは俺の方見ながら言う。


「へぇ? それは興味があるねぇ?」


 って! 急に話を振らないで!?


「でも、私よりも美味しくはないと思うよ?」
「むぅ! そんな事ないもん!!」
「あ、それじゃあさ、私とおとーちゃんが今から料理勝負して、勝ったら許してよ」
「え、ちょっと待
「おとーちゃんは絶対負けないもん!!」
「……」


 仕方ないな、やってやれっていう風に肩を叩くのはやめてくれますか源さん。




 そして、突如として始まった料理勝負なんだが、ハッキリ言って負ける気しかしない。


「がんばってー! おとーちゃーんっ!!」
「が、頑張れー(ボソッ)」


 ーー少し頑張っても良い気がする、と思った俺だがやれる料理は一つしかないのだ。そんな無駄に応援してくれなくても結構だ。
 右京さんはもうちょっと時間が掛かりそうだが、俺はこれで水を切れば終わり。


「はい、おまちどー。茹でた枝豆になりまーす」


 俺はKIROの看板メニューでありながら、最強の茹でた枝豆をカウンターの上へ出した。因みに、審査員は俺と右京さん以外の3人。どうも俺の方の味方が多い気がするが、ハンデらしい。

 まぁ、メマはこっちに票を入れてくれるとしても、比奈と源さんは公平にジャッジするだろうからちょうど良いハンデである。

 え、何故公平にジャッジするかって?

 それは俺が負けても、取引は成立するからだ。それに、勝負事でイカサマとか俺したくないし。根が真面目だからっていうのも2人は知ってるだろうし。

 そんなこんなで、俺がを小皿へ盛り付けて出した所で右京さんの調理も終わる。


「枝豆と塩昆布のおにぎりよ。美味しく食べてね」


 長方形の皿に3つのおにぎりが並んでいる。
 何故だろうか。ただのおにぎりの筈なのに……輝いて見える!!


「ん? 哲平さんの所はそのまま出したんですか?」
「ま、シンプル イズ ザ ベストってやつです」
「私に茹でた枝豆で勝とうとするなんて……わざと負けようとしてる?」
「いや、そんなまさか。全力投球ですよ」
「なら良いけど……」


 俺達が話をしている内にも3人の食事(メマは右京さんの食べてない)が終わり、結果が発表される。



 ドドドンッ


「3対0で、椎名哲平の勝利っ!!」


 源さんが叫んだ後、遅れて隣で大きな音が鳴る。


「は?? 本当に言ってる??」


 ひぃ。


「本当だ、天峯。お前も食えば分かる」


 源さんが右京さんに俺の茹でた枝豆と『岩塩』を差し出す。右京さんはそれを受け取り、『岩塩』を振り掛けると口に運ぶ。


「これは………これはなんていう魔法かしら?」


 絶賛である。


「いや。普通に茹でただけなんで」
「そんな訳……しかも手足の軋みも……はぁ。これは完全に私の負けね」
「え! て事は……」
「取引はまた後ね」


 ガーン。これからは借金しながらの経営になります。


「ふふん! おとーちゃんの勝ち!!」


 メマは小さな体で見上げるかの様に威張った後、俺の足に抱きついてくる。
 それ程嬉しいのは良い事だが、俺とメマの心は通じ合っていない。残念です。


「はぁ……それじゃあ、メマちゃんから許しを得るまで此処に通わせて貰うわ」
「え、マジですか」
「良いんですか? 『桜花』の方に居なくても……」


 それに比奈が聞くと、右京さんは腕を組んで唸る。

「私はもう老いぼれだし……弟子達に任せる! その為の弟子みたいな所もあるし!」


 え、ちょっと待って。


「あの、失礼かもしれないんですけど、おいくつですか?」
「ん? 一応この人と同い年だよ」


 右京さんの指差す方向には白髪で、おでこに幾つも線が入っている人が立っていた。


 源さんと同い年って…79歳? 若っ。
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