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第1章 現実? 異世界? 夢?
第6話 覚醒者
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ったく……そこまで日島が言うなら助けて貰うか。
「無理するなよ?」
「はい……」
俺達はゴブリンを挟む様にして移動すると、ゴブリンに向けて木材を構えた。他の人達は俺が吹っ飛ばされたのと同時に逃げた様で誰も居ない。
俺達も逃げるか……? いや、さっきのゴブリンの動きならば俺達は直ぐにでも捕まってしまうだろう。
「まるで、夢の世界だな」
現実でこんな事が起きるなんてあり得ない。そう考えてたからこその、呟きだった。
その時、頭の中に声が響く。
【ーー現実と夢に於ける、能力の同調が完了しました】
昨日の夜に聞こえて来た様な言葉。
それを聞いた瞬間、俺の身体が何かに作り変えられる。
ぐるぐると五臓六腑がこねくり回されている感覚、気持ち悪い……!
「玲さん!?」
日島の声が聞こえてくるが反応する事も出来ずに膝を着き、嘔吐する。だがそれが功を相したのか、気持ち悪さは無くなり、身体に力が湧いて来る。
名前:泉 玲
レベル:1
年齢:25
種族:人間
ユニークスキル:【明晰夢】
スキル:
称号:[異世界へと自力で渡れる者][表裏一体]
力:G 1.50+0.5
防:G 1.50+0.5
速:G 1.50+0.5
知:G 1.50+0.5
魔:G 0.50+0.5
さっきの言葉を思い出せば、【夢と現実に於ける能力の同調】だと言っていた……俺が異世界に行ってたと思ってた時の、あの少女の能力が俺に+された?
ーー今はそれ以外思い浮かばない。
だけど今はパワーアップしたという事実だけ分かればやる気が出るってもんだ!!
「おらぁっ!!」
「や、やぁっ!」
俺はゴブリンの不意を突くように、突然木材で上段から殴り掛かる。それに加勢して日島も遅ればせながらもゴブリンに殴り掛かった。
「ギッ……!」
「なっ!?」
しかし、ゴブリンは俺からの攻撃を受け止めるものの、日島からの攻撃はフル無視するという戦法を取る。
俺は夢の中で修行をしていた、その感覚があるから何とか振れてはいるが……結局は自己流。
それに加え、俺よりは日島の方が非力だ。
ゴブリンにしては、良い作戦を取ったと言えるだろう。
でも様子を見るに、日島の攻撃は効いてない訳では無い。まぁ、日島の半分ぐらいの身長だ。体格を見れば当たり前と言えるだろう。
なら、俺には劣る。
俺はゴブリンに木材を投げつけ、ゴブリンはそれを薙ぎ払った。
その隙に俺はゴブリンへとタックルをかます。体勢を低くした俺のタックルは、ゴブリンの腹部をカチ上げる様な形で捉えて、2人でもみくちゃになりながら地面に倒れた。
「ギギッ!!?」
ゴブリンの爪が深く肩へと突き刺さって来る感触がある。しかし、それだけだ。
「日島ーっ!! コイツの急所を狙えっ!!」
「き、急所ですか!?」
「早くしろ!! 早くしないと……っ!」
流石に出血多量でフラフラしてきた……。
「っ!!やあっ!!」
日島が振り翳した細い木材は、狙い通りかゴブリンの眼球へと突き付けられた。
「っ!? ……っ!!」
ゴブリンは何回か痙攣を起こすと、俺の肩に突き付けられていた爪から力が抜けたのを感じ、恐る恐るゴブリンから体を離した。
「……何とかなったかぁ」
「れ、玲さん!」
俺は安堵感に貧血も相まり、そこに背中から倒れるのだった。
「最近マジでこういうの多いなぁ……」
俺が起き上がるとそこは真っ白な天井がある、俺の知らない天井だった。窓から差す光の角度的には、午前中。
ここが何処なのか、まぁ大体予想は着くけど……。
俺は視界に入っていた、丸椅子に座っていた知人に話し掛けた。
「日島」
日島はコクリコクリと船を漕いでおり、俺が言ったと同時に体を震わせて頭を上げた。
「れ、玲さん! 起きたんですね!!」
「あぁ、お陰様でな。俺いつまで寝てた?」
「あ、えっと……大体丸三日ぐらい寝てましたね」
「そうか……」
て事は治療費と入院費が掛かるから……結構な出費だ。せっかく節約しようと思ってたのに……まぁ、生きてただけマシと思うべきか。
「あれからどうなったのか聞いてもいいか?」
「あれからって、玲さんが倒れた後ですよね? 大変だったんですよ?」
それから日島は話し出した。
俺が倒れた直後に逃げた作業員が通報した警察が到着した事。その後俺は三途の川を渡るかどうかの所まで行ったらしく救急車に運び込まれ、日島は急いで俺の入院の手続きを進めてくれたとの事。
「つまり、日島には凄くお世話になったって事か。ありがとな」
「い、いえ! 玲さんに比べれば私なんて何も出来なくて……」
「いや、お前が居なかったら俺は死んでたぞ、本当に助かった」
俺は頬赤らめながら照れる日島に少し驚きながら、頭を下げた。
いつも小生意気でありながらも、真面目で可愛い彼女。肩にギリギリ掛かるほどの茶髪ボブで、ふんわりと笑う花の様な彼女に何度助けられたか分からない。本当に彼女には感謝しか出て来ない。
「お取込み中の所すみません」
そんな時、病室の扉の方ノック音が聞こえて来る。
視線を向けると、そこには出来る男オーラを漂わせた眼鏡をかけた者が居た。金髪をたなびかせ、身長は8等身ぐらいある、モデル体型のイケメンだ。
「えっ!? あっ! はいっ!!」
日島は驚き、立ち上がる。そんな日島を手で宥めながら、俺のベッドの横まで来る。
「……普通、こんなスーツを着た男が来れば多少なりに驚くと思ってたんですけどね?」
「……いや、俺は顔に出ないだけですよ。驚いてます」
今頃出て来て何の用だよ……。
俺はそんな感情を表に出さず、男の隣を見た。
名前:西条 レオン
レベル:?
年齢:28
種族:人間
スキル:【指揮】【話術】【剣術】【演奏】
俺にはこれがずっと見えていた。俺が目覚めた時から扉の奥にこのステータスボード、そして右上にあるmapに白いマーカーが表示されていたのだ。
あの戦闘中、あの声を聞き”パワーアップ”した身としては、このmapやmenu、statusとinventoryは信じ無い訳にはいかない。だからこそ、この男が話し掛けて来たからと驚く事なんてなかった。簡単な話だ。
西条は先程まで日島が座っていた椅子に座ると、足を組んだ。
「では改めて……私は西条と言います。こんないきなりで申し訳がないのですが、時間もないので手短に行きましょう。貴方は”覚醒者”ですか?」
「”覚醒者”?」
俺が聞くと、西条は少し動きを止め、掛けていたグラサンを人差し指で上げた。
「……ま、容姿はそれなりに良い様ですが、ゴブリン如きに瀕死になってるんじゃ覚醒者な訳ないですよね」
「貴方! 流石に失礼じゃないですか!? 玲さんは起きたばかりで覚醒者というのも分かってないんですよ!?」
「いえ、彼が運び込まれたのは3日前と聞いています。その時はまだこちら側に誰も帰って来て無い筈ですので、最初からあり得ない話だったんですよ」
何を言っているのか分からないが、どうやら俺は馬鹿にされているって事で良いんだよな?
「何を言ってるか分からないが、用事が終わったなら早く出て行って貰えますか?」
「えぇ、そうさせて貰いますよ」
西条は椅子から立ち上がり、扉へと向かう。
「玲さん……」
「日島、俺の代わりに怒ってくれてありがとな」
「良いんです! またこういう人が来たら私が怒っておきます」
まだ西条が居るのに言うとは……聞こえない様な小声とは言え、流石日島だ。
そんな事を思っていると、西条は扉の前で立ち止まり、振り返った。
「それではこれで失礼します。ですが……これから覚醒者の私達には、態度を改めた方が良い」
西条が告げた瞬間、西条の身体は消える様に無くなり、気付けば日島の胸倉を掴み上げていた。
「ん”っ!!?」
「日島っ!!」
俺は咄嗟に助けようと飛び出すが、身体が言う事を聞かず床に転げ落ちる。
「これが”覚醒者”の力です。今度から覚醒者の前では内緒話も出来なくなりますのでご了承下さい」
西条はそう言い告げると、日島から手を離し、今度こそ病室から出て行った。
このおよそ1週間で、世界は途轍もない変化を遂げてしまったらしい。
「無理するなよ?」
「はい……」
俺達はゴブリンを挟む様にして移動すると、ゴブリンに向けて木材を構えた。他の人達は俺が吹っ飛ばされたのと同時に逃げた様で誰も居ない。
俺達も逃げるか……? いや、さっきのゴブリンの動きならば俺達は直ぐにでも捕まってしまうだろう。
「まるで、夢の世界だな」
現実でこんな事が起きるなんてあり得ない。そう考えてたからこその、呟きだった。
その時、頭の中に声が響く。
【ーー現実と夢に於ける、能力の同調が完了しました】
昨日の夜に聞こえて来た様な言葉。
それを聞いた瞬間、俺の身体が何かに作り変えられる。
ぐるぐると五臓六腑がこねくり回されている感覚、気持ち悪い……!
「玲さん!?」
日島の声が聞こえてくるが反応する事も出来ずに膝を着き、嘔吐する。だがそれが功を相したのか、気持ち悪さは無くなり、身体に力が湧いて来る。
名前:泉 玲
レベル:1
年齢:25
種族:人間
ユニークスキル:【明晰夢】
スキル:
称号:[異世界へと自力で渡れる者][表裏一体]
力:G 1.50+0.5
防:G 1.50+0.5
速:G 1.50+0.5
知:G 1.50+0.5
魔:G 0.50+0.5
さっきの言葉を思い出せば、【夢と現実に於ける能力の同調】だと言っていた……俺が異世界に行ってたと思ってた時の、あの少女の能力が俺に+された?
ーー今はそれ以外思い浮かばない。
だけど今はパワーアップしたという事実だけ分かればやる気が出るってもんだ!!
「おらぁっ!!」
「や、やぁっ!」
俺はゴブリンの不意を突くように、突然木材で上段から殴り掛かる。それに加勢して日島も遅ればせながらもゴブリンに殴り掛かった。
「ギッ……!」
「なっ!?」
しかし、ゴブリンは俺からの攻撃を受け止めるものの、日島からの攻撃はフル無視するという戦法を取る。
俺は夢の中で修行をしていた、その感覚があるから何とか振れてはいるが……結局は自己流。
それに加え、俺よりは日島の方が非力だ。
ゴブリンにしては、良い作戦を取ったと言えるだろう。
でも様子を見るに、日島の攻撃は効いてない訳では無い。まぁ、日島の半分ぐらいの身長だ。体格を見れば当たり前と言えるだろう。
なら、俺には劣る。
俺はゴブリンに木材を投げつけ、ゴブリンはそれを薙ぎ払った。
その隙に俺はゴブリンへとタックルをかます。体勢を低くした俺のタックルは、ゴブリンの腹部をカチ上げる様な形で捉えて、2人でもみくちゃになりながら地面に倒れた。
「ギギッ!!?」
ゴブリンの爪が深く肩へと突き刺さって来る感触がある。しかし、それだけだ。
「日島ーっ!! コイツの急所を狙えっ!!」
「き、急所ですか!?」
「早くしろ!! 早くしないと……っ!」
流石に出血多量でフラフラしてきた……。
「っ!!やあっ!!」
日島が振り翳した細い木材は、狙い通りかゴブリンの眼球へと突き付けられた。
「っ!? ……っ!!」
ゴブリンは何回か痙攣を起こすと、俺の肩に突き付けられていた爪から力が抜けたのを感じ、恐る恐るゴブリンから体を離した。
「……何とかなったかぁ」
「れ、玲さん!」
俺は安堵感に貧血も相まり、そこに背中から倒れるのだった。
「最近マジでこういうの多いなぁ……」
俺が起き上がるとそこは真っ白な天井がある、俺の知らない天井だった。窓から差す光の角度的には、午前中。
ここが何処なのか、まぁ大体予想は着くけど……。
俺は視界に入っていた、丸椅子に座っていた知人に話し掛けた。
「日島」
日島はコクリコクリと船を漕いでおり、俺が言ったと同時に体を震わせて頭を上げた。
「れ、玲さん! 起きたんですね!!」
「あぁ、お陰様でな。俺いつまで寝てた?」
「あ、えっと……大体丸三日ぐらい寝てましたね」
「そうか……」
て事は治療費と入院費が掛かるから……結構な出費だ。せっかく節約しようと思ってたのに……まぁ、生きてただけマシと思うべきか。
「あれからどうなったのか聞いてもいいか?」
「あれからって、玲さんが倒れた後ですよね? 大変だったんですよ?」
それから日島は話し出した。
俺が倒れた直後に逃げた作業員が通報した警察が到着した事。その後俺は三途の川を渡るかどうかの所まで行ったらしく救急車に運び込まれ、日島は急いで俺の入院の手続きを進めてくれたとの事。
「つまり、日島には凄くお世話になったって事か。ありがとな」
「い、いえ! 玲さんに比べれば私なんて何も出来なくて……」
「いや、お前が居なかったら俺は死んでたぞ、本当に助かった」
俺は頬赤らめながら照れる日島に少し驚きながら、頭を下げた。
いつも小生意気でありながらも、真面目で可愛い彼女。肩にギリギリ掛かるほどの茶髪ボブで、ふんわりと笑う花の様な彼女に何度助けられたか分からない。本当に彼女には感謝しか出て来ない。
「お取込み中の所すみません」
そんな時、病室の扉の方ノック音が聞こえて来る。
視線を向けると、そこには出来る男オーラを漂わせた眼鏡をかけた者が居た。金髪をたなびかせ、身長は8等身ぐらいある、モデル体型のイケメンだ。
「えっ!? あっ! はいっ!!」
日島は驚き、立ち上がる。そんな日島を手で宥めながら、俺のベッドの横まで来る。
「……普通、こんなスーツを着た男が来れば多少なりに驚くと思ってたんですけどね?」
「……いや、俺は顔に出ないだけですよ。驚いてます」
今頃出て来て何の用だよ……。
俺はそんな感情を表に出さず、男の隣を見た。
名前:西条 レオン
レベル:?
年齢:28
種族:人間
スキル:【指揮】【話術】【剣術】【演奏】
俺にはこれがずっと見えていた。俺が目覚めた時から扉の奥にこのステータスボード、そして右上にあるmapに白いマーカーが表示されていたのだ。
あの戦闘中、あの声を聞き”パワーアップ”した身としては、このmapやmenu、statusとinventoryは信じ無い訳にはいかない。だからこそ、この男が話し掛けて来たからと驚く事なんてなかった。簡単な話だ。
西条は先程まで日島が座っていた椅子に座ると、足を組んだ。
「では改めて……私は西条と言います。こんないきなりで申し訳がないのですが、時間もないので手短に行きましょう。貴方は”覚醒者”ですか?」
「”覚醒者”?」
俺が聞くと、西条は少し動きを止め、掛けていたグラサンを人差し指で上げた。
「……ま、容姿はそれなりに良い様ですが、ゴブリン如きに瀕死になってるんじゃ覚醒者な訳ないですよね」
「貴方! 流石に失礼じゃないですか!? 玲さんは起きたばかりで覚醒者というのも分かってないんですよ!?」
「いえ、彼が運び込まれたのは3日前と聞いています。その時はまだこちら側に誰も帰って来て無い筈ですので、最初からあり得ない話だったんですよ」
何を言っているのか分からないが、どうやら俺は馬鹿にされているって事で良いんだよな?
「何を言ってるか分からないが、用事が終わったなら早く出て行って貰えますか?」
「えぇ、そうさせて貰いますよ」
西条は椅子から立ち上がり、扉へと向かう。
「玲さん……」
「日島、俺の代わりに怒ってくれてありがとな」
「良いんです! またこういう人が来たら私が怒っておきます」
まだ西条が居るのに言うとは……聞こえない様な小声とは言え、流石日島だ。
そんな事を思っていると、西条は扉の前で立ち止まり、振り返った。
「それではこれで失礼します。ですが……これから覚醒者の私達には、態度を改めた方が良い」
西条が告げた瞬間、西条の身体は消える様に無くなり、気付けば日島の胸倉を掴み上げていた。
「ん”っ!!?」
「日島っ!!」
俺は咄嗟に助けようと飛び出すが、身体が言う事を聞かず床に転げ落ちる。
「これが”覚醒者”の力です。今度から覚醒者の前では内緒話も出来なくなりますのでご了承下さい」
西条はそう言い告げると、日島から手を離し、今度こそ病室から出て行った。
このおよそ1週間で、世界は途轍もない変化を遂げてしまったらしい。
応援ありがとうございます!
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