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第1章 現実? 異世界? 夢?
第2話 夢
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そこは満点の星空と青白い満月が浮かんだ空だった。
地べたに座り込み、俺は長くなった白い髪をかきあげた。何日も水浴びをしていない筈なのに、手櫛をするとサラサラと引っかかる事なく手は抜けていく。
「………いやー、まさか【英雄】になりたい女の子に異世界転生するとはねぇ」
俺は暫くして頭の中をある程度整理させ終わると、木にもたれ掛かりながら体育座りをしてボソッと呟いた。
あの時俺が死んだとしたら、納得出来た。いや、納得は出来ないが、理解は出来てしまった。
この世界は異世界だ。
魔物にスキル?
まさに小説に出て来る様な設定だ。
「それにこの髪……はっ」
俺はつい呆れる様に笑ってしまう。
この白髪の髪、魔族とも見える異様な風貌は人間達には不評で、ツノや翼を持つ魔族に同じ種族とも思われる事もない。これが異世界転生じゃなければ何だと言うのだ。
はぁ、夢って可能性もないかなぁ……って、え?
俺は今更ながら夢かどうか確認する為に頰を抓った。
すると痛みがない。
ただ、自分の肘を思い切り抓っている様な感覚に似ている感じがする。
そこである考えが浮上した。
「もしかして俺はまだ生きてて、夢を見ているだけとか?」
夢みたい、だけど感覚はある。少しジメジメとしたこの空気に、小石が混ざった砂が俺の座った所にはあった。
触覚はあると言うのに痛覚はないというのは、なんとも不思議な感覚だ。
そう思いつつ、俺は近くにあった木刀を手に取った。
「………うん」
こんなの持った事がない筈なのに、握り慣れた様な妙なしっくり感がある。
視界に入るのは長く白い髪に、ボロボロな小さな手。来た事もない様な貫頭衣の様な肌触りの悪い服、下着も履いてないみたいだ。
「……はぁ、中々のハードモードじゃない?」
記憶によればこの子は孤児だ。身よりも何もない、建築の技術も知識もないガキの1ヶ月の給料は300円。
食料は昼に配布される黒パンに、俺を雇ってくれている親方が仕事終わりに譲ってくれる黒パンだけだ。
奴隷にも近いこの環境、俺はこれからどうすれば良いのか。
そう考えた所で、何故か心に引っかかりを覚える。
「あぁ……そう言えばこの子って【英雄】になりたいんだっけ」
あまりの異常な出来事の連続で忘れていた。
この子の目指している英雄は魔物、その中でも魔王クラスの魔物を倒す事や、絶望的な状況をひっくり返す事でなれるらしい。
未だにスライムやゴブリンすら倒せない、増してやさっきウルフに殺された少女が何を言っているのだろうか。
「さて……どうするか」
私は森の中特有の青臭い匂いを大きく吸い込み、大きく吐いた。
見た目は変わっても、森の中の匂いは変わらないみたいだ。
だけど、変わってない事がもう一つある。
「"後悔しない人生を送る"」
奇跡とも言える確率。女の子なら可愛いお花屋さんになりたいとか、美味しいパン屋さんになりたいとか、色々な可能性があった筈だ。
それなのき、少年が夢と語る様な英雄になりたいというこの子の夢。俺にはもう1つの人生を送った記憶と知識がある。
他の同年代よりも優れていると言っても過言では無いだろう。
うん、悪くないんじゃないか?
この世界でも戦場を駆け回る英雄は、男性が圧倒的な数を占めている。その中で女性が英雄と呼ばれたのは数人。
こんな中で英雄と呼ばれる様になれば、最高じゃないか?
それにこの子はもう夢の道を進み始めている。確固たる英雄を目指すその意志、掌に作られた血豆から十分に伝わって来るそれは、俺の胸を自然と高鳴らせる。
俺が小学生の時、将来の夢は何ですかと聞かれた時は「美容師」などとテキトーに言っていたのを覚えている。
でも、この子の意志は本物だ。
「よし、一先ずはアレだ。寝る子は良く育つ」
取り敢えずは英雄になる方向でこの世界の事を調べよう。
あらゆる可能性を考えても、その為に必要な物は十分な食料と睡眠。
"異世界だろうと夢であろうと"、結局成り上がるには何事も身体が資本だし、食料を買うのにも金が必要だ。
親分は私の唯一と呼べる味方。明日の仕事には遅れたくない様にしないといけないから早く寝よう。
私は明日に備え、木を登り、良さげな空間を作って眠りに着くのだった。
地べたに座り込み、俺は長くなった白い髪をかきあげた。何日も水浴びをしていない筈なのに、手櫛をするとサラサラと引っかかる事なく手は抜けていく。
「………いやー、まさか【英雄】になりたい女の子に異世界転生するとはねぇ」
俺は暫くして頭の中をある程度整理させ終わると、木にもたれ掛かりながら体育座りをしてボソッと呟いた。
あの時俺が死んだとしたら、納得出来た。いや、納得は出来ないが、理解は出来てしまった。
この世界は異世界だ。
魔物にスキル?
まさに小説に出て来る様な設定だ。
「それにこの髪……はっ」
俺はつい呆れる様に笑ってしまう。
この白髪の髪、魔族とも見える異様な風貌は人間達には不評で、ツノや翼を持つ魔族に同じ種族とも思われる事もない。これが異世界転生じゃなければ何だと言うのだ。
はぁ、夢って可能性もないかなぁ……って、え?
俺は今更ながら夢かどうか確認する為に頰を抓った。
すると痛みがない。
ただ、自分の肘を思い切り抓っている様な感覚に似ている感じがする。
そこである考えが浮上した。
「もしかして俺はまだ生きてて、夢を見ているだけとか?」
夢みたい、だけど感覚はある。少しジメジメとしたこの空気に、小石が混ざった砂が俺の座った所にはあった。
触覚はあると言うのに痛覚はないというのは、なんとも不思議な感覚だ。
そう思いつつ、俺は近くにあった木刀を手に取った。
「………うん」
こんなの持った事がない筈なのに、握り慣れた様な妙なしっくり感がある。
視界に入るのは長く白い髪に、ボロボロな小さな手。来た事もない様な貫頭衣の様な肌触りの悪い服、下着も履いてないみたいだ。
「……はぁ、中々のハードモードじゃない?」
記憶によればこの子は孤児だ。身よりも何もない、建築の技術も知識もないガキの1ヶ月の給料は300円。
食料は昼に配布される黒パンに、俺を雇ってくれている親方が仕事終わりに譲ってくれる黒パンだけだ。
奴隷にも近いこの環境、俺はこれからどうすれば良いのか。
そう考えた所で、何故か心に引っかかりを覚える。
「あぁ……そう言えばこの子って【英雄】になりたいんだっけ」
あまりの異常な出来事の連続で忘れていた。
この子の目指している英雄は魔物、その中でも魔王クラスの魔物を倒す事や、絶望的な状況をひっくり返す事でなれるらしい。
未だにスライムやゴブリンすら倒せない、増してやさっきウルフに殺された少女が何を言っているのだろうか。
「さて……どうするか」
私は森の中特有の青臭い匂いを大きく吸い込み、大きく吐いた。
見た目は変わっても、森の中の匂いは変わらないみたいだ。
だけど、変わってない事がもう一つある。
「"後悔しない人生を送る"」
奇跡とも言える確率。女の子なら可愛いお花屋さんになりたいとか、美味しいパン屋さんになりたいとか、色々な可能性があった筈だ。
それなのき、少年が夢と語る様な英雄になりたいというこの子の夢。俺にはもう1つの人生を送った記憶と知識がある。
他の同年代よりも優れていると言っても過言では無いだろう。
うん、悪くないんじゃないか?
この世界でも戦場を駆け回る英雄は、男性が圧倒的な数を占めている。その中で女性が英雄と呼ばれたのは数人。
こんな中で英雄と呼ばれる様になれば、最高じゃないか?
それにこの子はもう夢の道を進み始めている。確固たる英雄を目指すその意志、掌に作られた血豆から十分に伝わって来るそれは、俺の胸を自然と高鳴らせる。
俺が小学生の時、将来の夢は何ですかと聞かれた時は「美容師」などとテキトーに言っていたのを覚えている。
でも、この子の意志は本物だ。
「よし、一先ずはアレだ。寝る子は良く育つ」
取り敢えずは英雄になる方向でこの世界の事を調べよう。
あらゆる可能性を考えても、その為に必要な物は十分な食料と睡眠。
"異世界だろうと夢であろうと"、結局成り上がるには何事も身体が資本だし、食料を買うのにも金が必要だ。
親分は私の唯一と呼べる味方。明日の仕事には遅れたくない様にしないといけないから早く寝よう。
私は明日に備え、木を登り、良さげな空間を作って眠りに着くのだった。
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