久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

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第2章 別に…

第15話 譲れないもの

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 人にはそれぞれ譲れないものが存在する。

 その人にはどうでも良いと感じるものであっても…相手からしたらそれはどうしても譲れないもので…

 でもそれは言葉にしなければ相手には伝わらず、自分の思ってる事を自分の口で伝える事は思ってるよりも難しい。



 しかし、

 コミュニケーションは図る上で伝える努力は思ってるよりも大切で、お互いを知る上で重要な事だったりもする。


 譲れないものが同じ、

 もしくは大切なものが同じだと分かれば、

 その者達の距離は、

 少しずつだが、ゆっくりと縮まるだろう。





 翌日。夜7時半。

「あの…」
「え?」

 昨日葵に想いのうちを言い放たれた俺はなるべくゆっくりと距離を近づけていく為に、少しずつ話しかける様にしていた。

 今日も朝から特別な事は何もせずに、日常的な会話を交わした。

 しかし、今日に限って何故か葵の方から話しかけてくると言う事態が起こった。

「ちょっと良いですか…」
「良いけど…」

 何故かいつも以上に眉を顰めている葵の姿に俺は、少し憂鬱な気持ちになりながらも答える。

 俺がまた何かしてしまったのか、もし何かしてしまっていたとしたら凄い嫌な言葉が飛んでくる、もしくは手が出るだろう、そう思って身構えていると、それは杞憂に終わる。

「今日…ママ達とビデオ通話するので貴方も参加して貰っても良いですか?」
「ビデオ通話?」
「はい…」

 それは罵倒でもなく、ただのお願いだった。

 ビデオ通話…それだけなら全然問題ない。
 しかし、相手が問題だ。葵がママ達と言った事から、親父も一緒にビデオ通話するのだろう。俺はこの前、葵との関係は普通だと電話で連絡した。
 今のこのギクシャクしている姿を見せればすぐに気づくだろう。俺と葵は上手くやって行けていないのだと。それを察せば、直ぐに心配して旅行から帰ってくるかもしれない。

 俺はそうなるのを、なるべく避けたい。だから今回は断っておこう。

「ごめん。実は俺今日予定が
「本当ですか?」

 俺の会話を遮って、葵の声が挟まれる。葵の眉間には少しだが皺が寄っている。

 怒っているのか…?

 本来なら正直に言うべきだ。

 しかし、

「あぁ。予定があるんだ」
「……そうですか。なら仕方ないですね…」

 俺が断ると、葵は何故か落ち込んだ様子で下を向いている。

 何故そんな顔をしているのかは分からないが、これでなんとかバレずに済む。旅行が終わってからバレるなら兎も角、今バレてしまったら、2人は新婚旅行を楽しめない。

 今、この時だけはバレずに済ましたい。

「…明日はどうですか?」

 だが、葵はしつこく聞いてくる。

 何なんだ? 昨日、あんな事を言われたから話しかけられないと思ってたのに…。

「…実は明日も用事
「はぁ…嘘ですよね?」
「…え?」

 また俺の話を遮る。しかも俺の言っていた事が何で今のが嘘だって分かったんだ? 何も気付く要素はなかったと思ったけど…。

「さっきからなんですけど…目が泳ぎ過ぎなんですけど」

 俺は思わず手で目を覆う。

「…あ!」

 葵が此方をジト目で見つめている。どうやらカマをかけられたらしい。俺の様子を見た葵は大きく溜め息を吐くと、いつもご飯を食べる時に使うテーブルの元へと向かう。

「はぁ…ビデオ通話は一先ずいいです。少し話をしましょう」
「え、話なんか
「何ですか?」
「何でもないです…」

 世理は葵に反論も許されずに、椅子に座らされた。



 俺が座った後、葵も続いて対面にある椅子へと座る。

 そして長い沈黙が続く。

 もう5分は経っただろうか、葵は何故か時計をチラチラ見ながらモゾモゾと身体を動かしている。

(このまま何も問い詰められなければいいが…)

「何で嘘を付いてたんですか…」

 世理がそんな事を思っているのを見透かすかのように、葵は俯きながら小さく呟く。

(此処は観念した方が良さそうだ)

 世理は大きく息を吐き、葵に目を合わせる。

「別に…昨日怒られた事を考慮してだよ」
「…」

 葵は座った目で此方を見ている。それに対しての世理の目は、誰がどう見てもキョドっていた。

(いややっぱ言えねぇ!! あのチャランポランの親父の事を想って、こっちは仲良くやってる、なんて嘘をついて、それがバレたら親父達が帰ってくるのが嫌だったからだなんて…恥ずか死ぬ…)

 俺は葵に顔を見られないようになるべく下を向いていた。

 それが功を奏してか、葵からは何も返事が返ってこない。

 上手く逃れられた様だと、安堵の息を吐いたその時、

「ママ達の為なんですよね…」

 自分の考えていた事が葵の口から発せられた。
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