勘違い(仮タイトル)

mare

文字の大きさ
上 下
5 / 11

5

しおりを挟む
 
 スマホのアラームが頭の上でなり続けている。五月蝿いけど腕も動かしたくない。

 ねむい……。まだ寝てたい。


 それに、今日の布団がいつもより居心地が良くて起きたくない。

 布団に擦り寄り身じろぐ。


「んっ……擽ったい」


 擽ったい?布団でも擽ったいとかあるのね。
 へぇ。と感心しながら頭を布団にグリグリと擦る。


「いや、ちょっと?」


 なんか、慌てるけどお構い無しに擦り付ける。
 布団の癖に口答えするなんて生意気なのよ。

 両腕でギュッと締め付け攻撃を続ける。


「えっ?! ワザと?もしかして起きてます?」


 布団って結構おしゃべりなのね。
 あれ?……布団って口あったっけ?

 頭が徐々にクリアになっていく。
 ゆっくり閉じていた目を開ければ……


「おはようございます。寺澤さん」


 満面の笑みで挨拶をする笹山の顔が真横にあった。
 思わず悲鳴を上げそうになる口を慌てて笹山は手で塞ぐ。


「ちょっ!こんな朝から叫んだら近所迷惑ですよ!」

 朝からパニックです。


……
…………
………………
……………………気まずい

 コレはどうしたらいいんだろう?

 あれから、何とか叫び声は押し戻して2人で朝食を食べている。

 笹山が話を振り答えて黙々と食べるの繰り返し。


「寺澤さんって朝弱いんですね。会社とプライベート違いすぎて……。こーゆーのギャップ萌えって言うんでしたっけ?」


「ゲホッ!」


 飲んでいたコーヒーで思いっきりむせた。


「何わけわかんないこと言ってんのよ。それ食べたら帰ってね」


 ゲホゲホせき込みながらそう告げると、笹山は不満な顔をした。


「休みなんですからゆっくり休日を満喫しましょうよ」

「1人の方が満喫出来るし、それに今日は予定あるから」

「本当に予定あったんですね」

「何それ、私に予定があるのっておかしいの?」


 ウインナーにフォークんぶっ刺し凄む。


「そういうわけじゃ。早く帰らせたい言い訳かと…」

「帰って欲しいならハッキリ言うわよ。わざわざ嘘つかないから」

「デート、ですか?」

 デートならまだ楽だったのかも……。そんな相手いないけどね。


人の予定をそんな気にしてないでさっさと食事を済まして帰ってほしい。


「もう、嫌味ね。そんなんじゃなくて、実家に用があるの」

「嘘じゃなくて?」

「なんでワザワザ、嘘つかなきゃいけないのよ。それに私の休日の予定なんてあなたに関係ないでしょ」

 そんな面倒な事する訳ないじゃない。


 思わずため息が漏れた。


「気になるじゃないですか。1晩一緒に過ごしたんだし?」

「止めて。その紛らわしい言い方……」

 なんか、頭痛くなってきた。
 こめかみを指で押さえる。
 ちゃんと服も着ていたし、致した形跡もない。一線は超えていないはず。
 昨日は、酔っ払った所が可愛いとか。意外と話が合って楽しかったとか思ったけど。

 なんなのよ?今はかなりめんどくさいんだけど。


「とりあえず、食べたらさっさと帰ってね」

「えー。切り替え早くないですか?ベッドだと積極的なのに…」

 拗ねた口調でつぶやく。

「ーーーっ!! あれは!!!」

「可愛かったなぁ……自分から擦り寄ってきて甘える寺澤さん……」

「…………。」

「さっさと帰れなんて言うから、俺、寂しい」


上目遣いで捨てられた子犬の様に瞳を濡らし見つめる。


「あなたってそんなキャラだった?」


 睨みつけても澄ました顔でコーヒーを飲む笹山に殺意が芽生えそうだ。


「まぁ、冗談はこの辺にして。寺澤さん?」


 いきなり、真剣な顔になる笹山に不覚にもドキッとしてしまう。


「俺と付き合いません?」

「はっ?!」

 余りにも唐突な言葉で唖然としてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

ご褒美

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
彼にいじわるして。 いつも口から出る言葉を待つ。 「お仕置きだね」 毎回、されるお仕置きにわくわくして。 悪戯をするのだけれど、今日は……。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...