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走馬灯

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「お前、なんか痩せた?」
右足を庇いながら歩く俺に、ポケットに手を突っ込んだままのマキがドンと肩をぶつける。
「話ってそれかい!」
「あぶねぇ!転げ落ちるだろぅ!」
蹴上も踏面も不揃いな危なっかしい石段は、麓から境内まで百八段ある。駄菓子屋のトヨさんなんかはとうとう登るのを諦めて、麓の鳥居の隅にいらっしゃる地蔵様に賽銭を供えるようになった。
テンポ良く石段を跳ねていくマキは、振り返ってこちらにアカンベーをしている。
バランス感覚が良いのか、慣れなのか。そういえば昔から運動神経が良く、俺より足が早かった。
「危なっかしくて見てられんわ…」
健康的なマキの脚は、今日はスパッツに隠れている。
木漏れ日にかたどられた中心に逆光を浴びた鳥居が堂々とシルエットを成していた。その中央では悪戯な表情を見せる幼馴染が、こちらに振り返る。青春ドラマのワンシーンの様な光景に、思わず息を呑んだ。

頂の鳥居をくぐると、いつもの社がいつものように構えていた。風に動じない御神木、揺れる注連縄。手水舎に流れる水が、風情ある音を奏でる。
拝殿の整った石段に、二人並んで腰掛けた。
火垂ほたる神社で遊んだ記憶が、走馬灯のように蘇った。手水舎の水を飲んで、二人揃って腹を壊した。火垂ほたる神社にお宝が封印されてると聞いて、二人で探し回った。拝殿の戸を開けようとして、トヨさんに叱られた。呪いの藁人形を探して御神木によじ登った。お祭りでアッキーと相撲もした。御神楽を舞うマキとサッちゃんに飛び交うおひねり。大晦日には甘酒を配っていて、初めて飲んで吐いたっけ。いつもマキは隣にいて、どれもこれも、マキを好きになる通過点だったんだ。

「マキがすきだ、結婚しよう」
色々考えたシミュレーションは全て吹っ飛んでいた。喉元まで出かかっていた想いは、小細工なしに、放たれた。
「ただし、大学を卒業してから…」
風は凪ぎ、草、木、全てが静まり返った。
静寂の中、隣からはすすり泣きが聞こえた。
「ありがとう…ありがとう、リク…」
彼女が泣くとこを久々に見た。小学校2年生のとき、風邪で運動会に出れなかった悔し泣き以来だろうか。今の涙は、それとは異質だ。
短く息を吸い込んで、すっと顔をあげたマキの目は、涙で一杯だった。
「でもね、…。やっぱダメかも、」
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