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帰路
帰国 リュシアン視点
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夜会の後、父上に連れられて直ぐにルノアール国へ戻った。
セリエール国王都からルノアール国の王都まで早くても5日は掛かる。その間も馬車の中でずっと話し合いをしていた。
どうやら、先日の婚約破棄騒動の件らしい。
話を聞いていてわかったことだが、現在セリエールの王族は国民からの支持率もない状態で、財政難に陥っているそうだ。
そしてそれを補っていたのが、オデール公爵家だった。
「私も聞いた話だが…先日の夜会や平和協定会議も全てオデール公爵家が出したらしい。」
平和協定会議は開催国がそれぞれ予算を決めて行う手筈となっている。平和協定会議のやり方も国それぞれで決めるため、毎回同じという訳では無い。
本当に会議しか行わないところもあれば、何日間か平和祭りというのを開いて国全体で行うところもあるし、今回みたいに夜会を行ってもてなすというところもある。
平和協定会議のやり方を国それぞれにしているのは、国の大きさや財力全てが等しいというわけではないからだ。それぞれにあったやり方で個々を尊重する。それこそが平和に繋がる1つだろうと先代たちが決めたものだ。
「結構な夜会の規模でしたが…それを国ではなく1貴族が全てですか?」
「そうだ。それにそれだけではない…今回の夜会の内容を考えたのは全て、リディアーヌ嬢なのだそうだ…」
「「え…!?」」
俺とサミュの声が重なった瞬間だった…。
父曰くリディアーヌ嬢が立案したことを知っているのはごく一部の物で、寧ろ他国の重鎮たちの方が知っているらしい。
それを聞いて、セリエール国の情報管理はガバガバだということがわかった訳だが…。
「どうやら、ここ数年行われている催しは全てオデール公爵家が出資していて、その殆どがリディアーヌ嬢が一人で考え準備してきたらしい。」
「待ってください。今日見た限り、リディアーヌ嬢の年齢は俺達より少し下位なのでは…」
見たところ15.6くらいだろうか。
そんな年代の子が今まで1人で準備してきたって…何を考えているんだ。
しかも今日だって他の令嬢達からもずっと白い目で見られていた。
もしかして、他の貴族たちは何も知らないのだろうか…。
「確か16歳…だったか?お前たちの2つ下くらいか…」
そう言ってロドリエル国王陛下は顎髭を触りながら考える素振りをする。
16歳であれだけの夜会を開くのは相当大変だったのでは無いだろうか。あれだけの楽団を揃えるのにも一苦労だっただろうに…
あの時の演奏は本当に素晴らしかった。
自分が小さい頃からヴァイオリンを習ってきたということもあるだろうが、音がすごく響いていた。
あの中でダンスが踊れたら最高だったろうと今では思う。
まぁ、踊ってくれる相手がいないんだがな。
「それであれだけの事をするって凄いですね。それに…一介の公爵家にそんな大金…どうやって」
「あぁ、それは簡単だよ。オデール公爵家が所有す領地は、元々今は亡きアランデール国があったところなんだ。要するに…アランデール国の生き残りという事。」
得意げに話すところを見るきサミュは今回の夜会で色々な情報を仕入れていたらしい。
アランデール国。聞いたことがある。
セリエール国よりもさらに小さい国で、数十年前に民を守るため、セリエール国に吸収された国。
しかしアランデール国の財力は凄まじく、たくさんの採掘場を持つだけでなく、動植物にも愛されていて、豊穣の女神でもいるのではないかと噂されるほど綺麗な国だそうだ。
あくまで見たものは殆どいないので聞いた話だが…
きっと名前がオデール公爵領と変わった今でも変わらないのだろう。
実際にオデール公爵領に入れる人は限られていて秘密が多い領地だとも聞く。
「それなら納得ですね。それにしても…何故そんなに慌てているのです?」
たかが、リディアーヌ嬢と王太子の婚約破棄にどうして各国の重鎮たちが慌てふためいていたのか…という方が気になるのだが…
「はぁ…お前は頭が回る時と回らない時があるな。よくよく今までのことを思い出してみろ。あの王太子殿下は最後になんと言っていた?」
「…もう帰ってくるな…と…あぁ…そういう事ですか…」
もう帰ってくるなということは、実質この国から出ていけと言っているのも同義だ。
今まではリディアーヌ嬢が準備していたから、お金などを出してくれていたのだとしたら、オデール公爵家は一切お金は出さなくなるだろう。
それどころか国から独立するなんてこともありえるかもしれない。
元々国としては小さいながらも全てが揃っているような国だったとなれば…話は別だ。
「1度あの領地に雲隠れされたら…探すのは困難だろうな。常に雲に覆われていて、周りからはほとんど何も見えないと聞く。もし中に入れるとしたら…オデール公爵家に愛されたものだけだろう。」
父上やロドリエル国王陛下の話を聞く限り、もし独立するのであればオデール公爵家をこちらの国に取り入れたいのだろう。
ちょうどオデール公爵領は我が国セリエール国と面している国でもあるし、平和協定に参加していない国への牽制にもなる。
きっと同じように思っている国は他にもあるだろうな…
さてどうしたものか…と父上たちが頭を捻らせていると、人差し指を顔の横に立てながら、「いい事思いついた!」と言うような顔でサミュが話し始めた。
「あぁ、それなら簡単ですよ。リシャールと婚約してもらえばいいんです!!」
サミュの言葉を聞いて俺は一瞬固まった。
いや、俺だけじゃない…
ここにいる全員がまさかの発言に固まった…
「「「は…?」」」
セリエール国王都からルノアール国の王都まで早くても5日は掛かる。その間も馬車の中でずっと話し合いをしていた。
どうやら、先日の婚約破棄騒動の件らしい。
話を聞いていてわかったことだが、現在セリエールの王族は国民からの支持率もない状態で、財政難に陥っているそうだ。
そしてそれを補っていたのが、オデール公爵家だった。
「私も聞いた話だが…先日の夜会や平和協定会議も全てオデール公爵家が出したらしい。」
平和協定会議は開催国がそれぞれ予算を決めて行う手筈となっている。平和協定会議のやり方も国それぞれで決めるため、毎回同じという訳では無い。
本当に会議しか行わないところもあれば、何日間か平和祭りというのを開いて国全体で行うところもあるし、今回みたいに夜会を行ってもてなすというところもある。
平和協定会議のやり方を国それぞれにしているのは、国の大きさや財力全てが等しいというわけではないからだ。それぞれにあったやり方で個々を尊重する。それこそが平和に繋がる1つだろうと先代たちが決めたものだ。
「結構な夜会の規模でしたが…それを国ではなく1貴族が全てですか?」
「そうだ。それにそれだけではない…今回の夜会の内容を考えたのは全て、リディアーヌ嬢なのだそうだ…」
「「え…!?」」
俺とサミュの声が重なった瞬間だった…。
父曰くリディアーヌ嬢が立案したことを知っているのはごく一部の物で、寧ろ他国の重鎮たちの方が知っているらしい。
それを聞いて、セリエール国の情報管理はガバガバだということがわかった訳だが…。
「どうやら、ここ数年行われている催しは全てオデール公爵家が出資していて、その殆どがリディアーヌ嬢が一人で考え準備してきたらしい。」
「待ってください。今日見た限り、リディアーヌ嬢の年齢は俺達より少し下位なのでは…」
見たところ15.6くらいだろうか。
そんな年代の子が今まで1人で準備してきたって…何を考えているんだ。
しかも今日だって他の令嬢達からもずっと白い目で見られていた。
もしかして、他の貴族たちは何も知らないのだろうか…。
「確か16歳…だったか?お前たちの2つ下くらいか…」
そう言ってロドリエル国王陛下は顎髭を触りながら考える素振りをする。
16歳であれだけの夜会を開くのは相当大変だったのでは無いだろうか。あれだけの楽団を揃えるのにも一苦労だっただろうに…
あの時の演奏は本当に素晴らしかった。
自分が小さい頃からヴァイオリンを習ってきたということもあるだろうが、音がすごく響いていた。
あの中でダンスが踊れたら最高だったろうと今では思う。
まぁ、踊ってくれる相手がいないんだがな。
「それであれだけの事をするって凄いですね。それに…一介の公爵家にそんな大金…どうやって」
「あぁ、それは簡単だよ。オデール公爵家が所有す領地は、元々今は亡きアランデール国があったところなんだ。要するに…アランデール国の生き残りという事。」
得意げに話すところを見るきサミュは今回の夜会で色々な情報を仕入れていたらしい。
アランデール国。聞いたことがある。
セリエール国よりもさらに小さい国で、数十年前に民を守るため、セリエール国に吸収された国。
しかしアランデール国の財力は凄まじく、たくさんの採掘場を持つだけでなく、動植物にも愛されていて、豊穣の女神でもいるのではないかと噂されるほど綺麗な国だそうだ。
あくまで見たものは殆どいないので聞いた話だが…
きっと名前がオデール公爵領と変わった今でも変わらないのだろう。
実際にオデール公爵領に入れる人は限られていて秘密が多い領地だとも聞く。
「それなら納得ですね。それにしても…何故そんなに慌てているのです?」
たかが、リディアーヌ嬢と王太子の婚約破棄にどうして各国の重鎮たちが慌てふためいていたのか…という方が気になるのだが…
「はぁ…お前は頭が回る時と回らない時があるな。よくよく今までのことを思い出してみろ。あの王太子殿下は最後になんと言っていた?」
「…もう帰ってくるな…と…あぁ…そういう事ですか…」
もう帰ってくるなということは、実質この国から出ていけと言っているのも同義だ。
今まではリディアーヌ嬢が準備していたから、お金などを出してくれていたのだとしたら、オデール公爵家は一切お金は出さなくなるだろう。
それどころか国から独立するなんてこともありえるかもしれない。
元々国としては小さいながらも全てが揃っているような国だったとなれば…話は別だ。
「1度あの領地に雲隠れされたら…探すのは困難だろうな。常に雲に覆われていて、周りからはほとんど何も見えないと聞く。もし中に入れるとしたら…オデール公爵家に愛されたものだけだろう。」
父上やロドリエル国王陛下の話を聞く限り、もし独立するのであればオデール公爵家をこちらの国に取り入れたいのだろう。
ちょうどオデール公爵領は我が国セリエール国と面している国でもあるし、平和協定に参加していない国への牽制にもなる。
きっと同じように思っている国は他にもあるだろうな…
さてどうしたものか…と父上たちが頭を捻らせていると、人差し指を顔の横に立てながら、「いい事思いついた!」と言うような顔でサミュが話し始めた。
「あぁ、それなら簡単ですよ。リシャールと婚約してもらえばいいんです!!」
サミュの言葉を聞いて俺は一瞬固まった。
いや、俺だけじゃない…
ここにいる全員がまさかの発言に固まった…
「「「は…?」」」
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