地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

文字の大きさ
18 / 32

面倒だし

しおりを挟む
「クリス君だったっけ?」
にこやかな顔で教官のマッシモさんが近付いて来た。

「はい」

「君は……何者だ!!」

ガバッと教官、マッシモさんが両肩を掴んで来て、
─ちょっと顔近っ!
と私は必死に上半身を反らした。
ぐぬぬぅ
鍛え抜かれた鋼の肉体のせいで抜け出すことが出来なくて抜け出すことは諦めて渋々マッシモさんを見た。

「な、何者って言われても…先月、冒険者になったばかりのクリス、十二歳です!」
「そんな初心者マークつけた坊主がなんで魔法剣を…いや魔法刀?を、出したりできるんだ!それになんだあの身のこなしと見たことも無い魔法攻撃は!?あんな技術どこで身につけたんだ!」

「……な、内緒です」

まさか孤児院です。なんて言ったって信じてもらえないだろうし。

あと、坊主じゃ無いよ?私、クリス、十二歳!女の子!って言った方が良かったのかな?

まぁ、いっか。面倒だし…


でも、あれくらいでこんなに騒ぎになるんなら…

ちょっと調整して訓練を受けた方が良いのかな?なんだか悪目立ちしそうだし。

いや、でも手抜きして養成所の修了を受けられなくなって、Cランクになれなかったら嫌だし。

私は不安になってチラリと斜め前にいる養成所のメンバー達を見るとガイ君とカルヴァン君以外のメンバーからはちょっぴりビクッとして目をそっとそらされてしまった。
因みに、ガイ君はちょっと不貞腐れた顔をしている。どうやら自分の活躍が私のせいで霞んでしまい腹を立てて居る模様。
いや、そんな事、知らんし!
そしてカルヴァン君は何やら物思いにふけっているもよう。

ちなみに対戦相手の『黒雲』の少年達は目が合った瞬間にひと塊になって蹲った。「うぎゃ」とか、聞こえた気がするけど…きのせい?

結局、余りに差があり過ぎると言う事で残りのメンバーがちょっとした基礎訓練を受け終わるまでは、と。私はなぜか剣の訓練では教官の助手みたいな扱いを受けている。

「クリス君、ミミちゃんの指導、頼む!」
「………えぇ、私がやるとアイツらがウザイんですが」

アイツらとはガイ君とユージン君だ。

「まぁまぁ、女の子に怪我させらんねぇからな。」

剛腕の力自慢じゃ負けねぇ!と言うくらいあって、マッシモさんは剣を握るとスキルまで発動するもんだから女の子と、ユージンが相手の時はちょっと力加減を間違えると派手に吹き飛ばしてしまうのだ。その為、こうしてちょくちょく私に相手をする様にと言い付けてくる。

今まではマッシモさんが苦手なギルド職員が助手みたいな感じでお手伝いに来ていたらしい。
なら、是非ともその方に!と言ったのに。マッシモさん、スルー。結局こうなってしまった!

「よし!じゃあミミちゃん、やろっか」
「はい!なのです!」

ミミちゃん、本当に癒しだ。可愛い。
確かに天使はここに居た。

赤い目をキラキラさせて私を見つめていて、でっかい乳が手を組んでるからちょっともにゅっと、押し上げられている。ついでに若干、頬が赤い。

ちょーエロ可愛いんですけど!

はぅ……はぁ、危ない、危うくミミちゃん信者になるとこだった。

ミミちゃん信者約二名が、そんな私達を恨めしそうに見ているが私はニンマリと笑ってミミちゃんと打ち合うのだった。

おかげで、帰りにガイ君に絡まれてしまった。

「クリス!お前、ちょっと顔が綺麗だからって!あ、あと、ちょっと強いからって良い気になるなよ!!」

帰り道、宿の手前でガイ君がどうやら待ち伏せしていたみたいだ。だけど、ガイ君や?ちょっと君はタイミングが悪い。いや、悪すぎると思うのだよ。

前門の虎後門の狼、状態である。

「ちょっとじゃないです!クリス君は物凄ぉぉーく!強いんです!」

私の背後に、私の跡をつけてきていたうさぎ耳(ミミちゃん)がヒョコリと耳を建物の柱から出して叫んだ。

「…ミミちゃん!?うわっ、ちっ、違うんだ!」
ガイ君がアワアワしている。ガイ君の耳は困ったと言わんばかりに折れ曲がっていて、そんなガイ君に更なる驚異が迫った。

「うわぁぁ!なっ、ぎゃっ!」

私はガイ君の後ろから彼の頭をグワシッ!と鷲掴みにした存在に顔がひきつる。

「クリスがちょっと綺麗だと?ア゙ア゙?クリスは、可愛いんだ。小僧、訂正しろ」

完全に目が座ってるエタンを私は慌てて止めた。
「ストーップ!エタン、何小っ恥ずかしい言いがかりつけてんのさ!」
「…ひぃ、ずいマセ、ん。クリス、君は、世界一ぃ!可愛いデスー」
「なんだと?お前、まさか俺のクリスに惚れたんジャナイダロウナ?アア?」

いや、エタン?なんでそんなゴロツキみたくなってんの?言いがかりがバージョンアップしてやがる。


ポカーン、とエタンを見ているとエタンとやっと目が合った。
半泣きのガイ君を彼はポイッと放り投げると何事も無かったと言わんばかりに取り繕ったポーカーフェイスで私の目の前に立った。

「…お帰り。たまには宿の食堂いがいのとこに飯食いに行くか。」

なんて言って私の腕を引いて宿の方とは逆方向へと歩き出す。

「えっ、私がガイ君のお世話しなきゃなんですか!?」

なんか、後ろが騒がしい気がするけれど私は未だにゴロツキと化したエタンに衝撃を受けた状態でズルズルと引き摺られ、引き摺っている事に気付いたエタンによって抱っこでその場を後にした。


翌朝、私の鳥頭はミミちゃんに「昨日のイケメンは誰ですか!?」と突撃を受けるまですっかりガイ君とミミちゃんに帰りに出会った事も忘れていた。

「……あれは、ゴロツキバージョンのエタンですね。チョー怖かった!でも、なぜかご飯食べたらすっかりご機嫌バージョンのエタンに早変わりしてたから。たぶん、お腹が減ってたんだと思うけど」

「………なるほどです。ようするに、食いしん坊さんなんですね!イケメンで食いしん坊…私、かなり好みです」

はぅぅー、とミミちゃんが両手を頬にあてた。
頬を染めて、耳もじんわり赤いミミちゃんの様子を見ていたガイ君が膨れっ面で「イケメン兄弟とか、嫌味な奴だぜ!」と言って養成所のゴミ箱を蹴りつけたけど、ユージン君がすぐ様注意をしてゴミ箱のへこみをなおすガイ君であった。

うん、良く考えたら。私の性別、未だに男だと思われてるっぽい?

まぁ、いっか。面倒だし…


ん?なんか前も同じ事を思ったような?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...