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豊穣の町(仮)に行く編

2.廃れた村。現地人は諦めムード

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 俺は、どこか廃れた村に来た。

 
「すごい、どんよりしているなぁここは」

「グゥ」

「廃村みたいって…人の気配も感じるぞ。探してみよう」

 普通、村の入り口には見張りらしきものがいるはずなのだが、この村にはいなかった。

 まだ、明るいのに、なんかこの村だけくらいな。

 入口の看板を見ると村の名前が書いてあった。

『ブリード』

 気配を探ると、どうやら気配は村の真ん中の方に集まっているらしい。

 俺は気配が集まる方へ向かった。

「もうこの村はダメだ…畑も育たない、井戸の水は汚水となり、家畜は病気で死に絶えた。俺たちは時期に死ぬんだ」

「せめて子供だけでも逃してやりたいが…方法がない」

 なにやらこの村についての会話をしているらしい。

「あのぉ、すみません。何かあったんですか?」
 隠れていても何なので、俺は思い切って声をかけてみた。

 村人達が一斉に俺をみた。

 いや正確には俺の下の方を見ていた。

「やべ…」

 シシオウを戻し忘れてた。見張りの人もいないから、そのままノンストップで村に入ってきてしまった。

 周りのことを気にして、自分のことを気にしてない奴になってしまった。

 だが、村人達に、驚いた様子はなかった。

「ついに我々は幻覚を見るようになってしまった。この村はもう崩壊するだろう」

「ああ、俺たちは死ぬのか」

「おどろく…元気も…ない…」

 村人達の目には光が失われていた。


「あのぉ、幻覚じゃないんですけどぉ。
 というかこの状況を説明して欲しいなぁなんて、思ってます」

「幻覚ではないのか、みんな聞いてくれ、我々は天罰を下されてしまうらしいのだ。だが神に裁かれるのならそれも運命なのかもしれない。みんなすまない」

 おいこれ、話通じない系だぞ。どうすりゃいいんだこれは

「神じゃないので、事情を聞かせてもらえませんか?」

「神ではないのか、みんな聞いてくれ、我々は神の使徒に裁かれ……」

「神の使徒じゃないです!取り敢えず!事情!!」

「そうですか、我々は死ぬ運命なのです」

「はい」

「我々は死ぬ運命なのです」

「そうですか」

「我々は…」

「あの、それだけですか?」

「はい。死ぬ運命なのです」

 これはどうすれば説明してもらえるのだろう。いや、こういう人は、考えるだけ無駄かもしれない。根気よく、根気よく行こう!

「あの、死ぬ運命になる前はどうしていたんですか?」

「…私たちは、魔女の怒りをかってしまったんです」





 この村人達との会話に多くの時間がかかった。三時間くらい話したのかもしれない。

 簡単に話をまとめると、

 ここは豊かな村だった。
 レノス王国の領内にはあるが、自給自足をしていて、国と関わることがない村であったらしい。
 今から二ヶ月前、この村に女の旅人が現れた。

 女の旅人は「自分は『魔女』だ」といった。

 魔女とは、いにしえの魔法を使い、自分の命を生き永らえさせている人間の事だ。

 魔女は村人に言った「この村はアムリス帝国のものになれ」と。

 もちろん村人達は断った。
 そもそもここはレノス王国の領内であるし、この村がアムリス帝国のものになれば、自分たちは、死んでしまう。
 そう思って断ったのだ。

 魔女は村から出て行った。

「この村には天罰が下る」
 という言葉を残して。

 村人達は最初は意味がわからず、普通に生活をしていた。

 だが今から一ヶ月前に異変は起きた。
 
 作物が全く育たなくなり、飼っていた牧畜や馬は、病気にかかり死んでいき、井戸の水は汚れた水となった。

 食べ物と飲み物がダメになり、移動用の馬も病気で死んだ。

 最初は村からでる事を考え、外に出た。

 周りは林に囲まれていたり、足場が悪かったり、魔物がいたりした。

 結果、人間の足でこの村から出ることが出来ず、みんなで食べ物を分け合い、必死に食いつないでいた。

 が、ついに食料が尽きてしまったらしい。
 そして、村で話し合いをしていたところ、運がいいのか、悪いのか、シシオウに乗った俺が来たということだ。


 村人からしてみれば

 あっ、天罰きたわ。

 ってなるのもわかる気がする。
 納得はするが、三時間も説明をさせるのに時間がかかるのはわからないぞ。



「とりあえず、今みなさんは食料に困っているわけですよね?」
 と俺に説明してくれた、若い男に聞いた。

「そうだ、じきに我々は全員が死に、この村は無くなる」

「えっと…俺、ちょうどよく食べ物を持っているんですけど食べますか?」

「君はアイテムボックスを持っているのだろうか?嬉しい提案だな。だが食べ物は必要ない。」

「な、何故ですか?」

「君のアイテムボックスが、どれほど入るか知らないが、この村には百二十人の村人がいる。全員に行き渡らせるには、微かな量になってしまうよ、それに…すぐに死ぬ私たちよりも、これからも長く生きていく君の大切な食料だ。そんなものは受け取れない」

 と言われてしまった。確かにそうだ。
 普通のアイテムボックスならば、百二十人がお腹いっぱいになるくらい食べ物は入れられない。

 まあ、普通ならなんだけど。

「あ、あの百二十人全員がお腹いっぱい食べ物を、食べられるなら受け取ってくれますか?」

「そうだな、受け取りたいな。最後は全員が、お腹いっぱいに食べて、死ぬ方が、餓死して死ぬよりも幸せなのかもしれないな」

「いやいや!すぐに『死』に持ってかないでくださいよ!俺とシシオウがいる間は絶対、死なせませんから!」

「君は今から、死んでいく村に住むのか?」

「そうなりますね、せめて、あなた達が死なないようになるまではいたいですね」

「どうしてそのような事をするんだ?今のこの村の何がいいんだ?」

「そうですねー、良いところが一つもないから助けたい。って感じですかね。
 前のこの村はきっと良いところがたくさんあったと思うんですよ。今はかなり厳しい状況ですが。
 だから俺は、前の村を見てみたいって思うんですよね。結局のところ自己満足です。
 あと、俺は、困ってる人がいたら助けるって決めたんですよ」

「そうか…意味はよくわからないが、助けてもらうことにするよ、本当に食料を百二十人分出せるのならだけど」

「ありがとうございます!」

「?何故君がお礼を言うんだ?」

「なんか?助けさせてくれて?」

「ふふ、そうか、では村の広場まで行って食料を分けて欲しい。
 そういえば今まで自己紹介していなかったな。俺はグロウだ」

 その人は初めて笑顔を見せてくれた。

「了解!俺はゆうたです。こっちはシシオウ」

「グゥ」

 そんな会話をしながら、俺とシシオウは村の広場に向かった。
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