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第一部 第五章
8 遠くで起こっていた戦争。
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昼食を終え、セロの研究室へと来た佐知子。
コンコンとノックをすると、どうぞーという、いつものセロの明るい声が聞こえた。その当たり前にほっとする。
中に入ると、少しいつもより物が多い気がした。書類もある。
「ごめんねー、ちょっとちらかってるけど気にしないでー」
セロはにこやかに手をふっていた。
「……はい」
きっと戦の準備だろう。佐知子はそう思って少し心が沈んだ。
「さってと、やろうか。あ、そだそだ。勉強会、当分、なしになりそうなんだ」
イスに座った途端いわれたその言葉に、佐知子はドキッとする。
「多分、もう噂で知ってると思うだろうけど、戦が近くてねー。俺も兵器やら道具やらの準備と、戦略会議に出なくちゃいけないから忙しくなるんだよー。まったく迷惑な話だよねー」
あーあ。と、いいながら大きくため息をつくセロ。
「……やっぱり……戦……あるんですか?」
佐知子はうつむきながら、つぶやくようにいう。
「うん……まぁ、いつもの小競り合いだよ。大丈夫、大丈夫」
セロもライラと同じことをいった。
「……戦って……そんなに頻繁にあるんですか?」
「…………」
うつむいたまま、暗い面持ちでいう佐知子に、セロは佐知子の心情を察する。
「……そうだね……この村が安定してからずっと、早いと半年、遅いと二年に一度はあるって聞いてるよ。前の戦は一年くらい前かな」
「そんな頻繁に……」
佐知子は悲痛な面持ちで顔を上げた。
「……サッちゃんの国では……世界では、戦はなかった?」
テーブルに両肘をのせ、両手を組み、そこに顎をのせながら穏やかにほほえみ、セロは佐知子に問いかける。
「……私のいた世界にも……遠い国では……いや、近くの国……かな……でも、戦争はありました……でも、遠いところで……知らなくて、見えなくて……たまにテレ……話で聞くくらいで……私の国は……もう何十年も……戦争がなくて……平和で……戦争なんて……教科書の中で習うことで……人が死ぬのは……病気か、寿命か、事故か……たまに事件とか犯罪で……」
泣きそうだった。
話していると、なぜか感情がたかぶって、涙があふれてきてこぼれ落ちそうだった。
漠然と思うのは『死なないで欲しい』それだけだった。
それがヨウだけなのか、アフマドや黄や、その他の人も含まれるのかはわからない。ただただ漠然と『死なないで欲しい』。
佐知子はそう思った。
それ以上話していたら、涙がこぼれ落ちると思った佐知子が、うつむいて黙ってこらえていると、セロが語り出す。
「そっか……サッちゃんの世界……いや、いた国は平和だったんだね……じゃあ、今回がはじめての経験かな……」
セロは穏やかにほほえむ。
「ボクもね、同じようなものだったんだ。この村にきて、はじめての戦があるまで」
その言葉に佐知子は、え……と、顔上げ、少し瞳を見開く。
「俺も子供の頃から、この村に来るまで、戦はあったけど、平和な村や場所で育って暮らしてたらから……同じように戦はあっても、どこか遠くでやってることだった。俺には関係ないことだった……」
セロは瞳をふせて話す。
「でもね、この村に来て、はじめて戦があった時……確かに、今のサッちゃんのように動揺したなぁ……まぁ、俺が動揺したのは……戦がおわったあとだったんだけどね……」
セロは何かを思い出して、少し悲しそうにほほえんだ。その言葉に、佐知子は疑問を抱く。戦の後に何があるのか。前だって、こんなに動揺しているのに、と。
「……まぁ……でもね……人間って恐ろしい生き物で、なれちゃうもんなんだよね」
セロは少し悲しそうに、へらっと笑った。
「何回かこなしてると、麻痺して……しかたないって思って……なれちゃうもんなんだよ……」
セロは顎を手の上にのせたまま、悲しそうに瞳をふせてつぶやく。
「ま! サッちゃんははじめてだから、動揺するのも、怖がるのも、心配するのもしかたないよ! とりあえず、大丈夫だから! 慣れるまで頑張って!!」
セロはそういうと、さ! しばらくできないから、今日はまとめとこ! と、勉強に取り掛かった。
「…………」
佐知子は、セロの曖昧な言葉が腑に落ちず、気になりもしたが、踏み入ることはできない感じだったので、それはそのままに、もやもやとした気分のまま、気の乗らない勉強にとりかかった。
コンコンとノックをすると、どうぞーという、いつものセロの明るい声が聞こえた。その当たり前にほっとする。
中に入ると、少しいつもより物が多い気がした。書類もある。
「ごめんねー、ちょっとちらかってるけど気にしないでー」
セロはにこやかに手をふっていた。
「……はい」
きっと戦の準備だろう。佐知子はそう思って少し心が沈んだ。
「さってと、やろうか。あ、そだそだ。勉強会、当分、なしになりそうなんだ」
イスに座った途端いわれたその言葉に、佐知子はドキッとする。
「多分、もう噂で知ってると思うだろうけど、戦が近くてねー。俺も兵器やら道具やらの準備と、戦略会議に出なくちゃいけないから忙しくなるんだよー。まったく迷惑な話だよねー」
あーあ。と、いいながら大きくため息をつくセロ。
「……やっぱり……戦……あるんですか?」
佐知子はうつむきながら、つぶやくようにいう。
「うん……まぁ、いつもの小競り合いだよ。大丈夫、大丈夫」
セロもライラと同じことをいった。
「……戦って……そんなに頻繁にあるんですか?」
「…………」
うつむいたまま、暗い面持ちでいう佐知子に、セロは佐知子の心情を察する。
「……そうだね……この村が安定してからずっと、早いと半年、遅いと二年に一度はあるって聞いてるよ。前の戦は一年くらい前かな」
「そんな頻繁に……」
佐知子は悲痛な面持ちで顔を上げた。
「……サッちゃんの国では……世界では、戦はなかった?」
テーブルに両肘をのせ、両手を組み、そこに顎をのせながら穏やかにほほえみ、セロは佐知子に問いかける。
「……私のいた世界にも……遠い国では……いや、近くの国……かな……でも、戦争はありました……でも、遠いところで……知らなくて、見えなくて……たまにテレ……話で聞くくらいで……私の国は……もう何十年も……戦争がなくて……平和で……戦争なんて……教科書の中で習うことで……人が死ぬのは……病気か、寿命か、事故か……たまに事件とか犯罪で……」
泣きそうだった。
話していると、なぜか感情がたかぶって、涙があふれてきてこぼれ落ちそうだった。
漠然と思うのは『死なないで欲しい』それだけだった。
それがヨウだけなのか、アフマドや黄や、その他の人も含まれるのかはわからない。ただただ漠然と『死なないで欲しい』。
佐知子はそう思った。
それ以上話していたら、涙がこぼれ落ちると思った佐知子が、うつむいて黙ってこらえていると、セロが語り出す。
「そっか……サッちゃんの世界……いや、いた国は平和だったんだね……じゃあ、今回がはじめての経験かな……」
セロは穏やかにほほえむ。
「ボクもね、同じようなものだったんだ。この村にきて、はじめての戦があるまで」
その言葉に佐知子は、え……と、顔上げ、少し瞳を見開く。
「俺も子供の頃から、この村に来るまで、戦はあったけど、平和な村や場所で育って暮らしてたらから……同じように戦はあっても、どこか遠くでやってることだった。俺には関係ないことだった……」
セロは瞳をふせて話す。
「でもね、この村に来て、はじめて戦があった時……確かに、今のサッちゃんのように動揺したなぁ……まぁ、俺が動揺したのは……戦がおわったあとだったんだけどね……」
セロは何かを思い出して、少し悲しそうにほほえんだ。その言葉に、佐知子は疑問を抱く。戦の後に何があるのか。前だって、こんなに動揺しているのに、と。
「……まぁ……でもね……人間って恐ろしい生き物で、なれちゃうもんなんだよね」
セロは少し悲しそうに、へらっと笑った。
「何回かこなしてると、麻痺して……しかたないって思って……なれちゃうもんなんだよ……」
セロは顎を手の上にのせたまま、悲しそうに瞳をふせてつぶやく。
「ま! サッちゃんははじめてだから、動揺するのも、怖がるのも、心配するのもしかたないよ! とりあえず、大丈夫だから! 慣れるまで頑張って!!」
セロはそういうと、さ! しばらくできないから、今日はまとめとこ! と、勉強に取り掛かった。
「…………」
佐知子は、セロの曖昧な言葉が腑に落ちず、気になりもしたが、踏み入ることはできない感じだったので、それはそのままに、もやもやとした気分のまま、気の乗らない勉強にとりかかった。
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