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第13話:宇宙の果て
Bパート(3)
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『狙いがヘリオス!? レイフ、それは本当なのですか?』
《神の雷》の落下地点がヘリオスと聞き、レイチェルも驚く。
『ああ、このままの軌道なら90%の確率でアレはヘリオスに落下するぞ』
『そんな。アルテローゼで阻止はできないのですか?』
『…今すぐにアレを追えば可能だ』
『では、直ぐに追いかけましょう』
『だが、アレを追いかけた場合、アルテローゼはそのままではこの軌道まで戻ってくることはできない』
『…それは』
『つまりアレを破壊した後、アルテローゼは地上に降りるしかない。そうなれば、障害物の無くなったレッドノーム号は、スペースボートを追いかけてステーションに向かうだろう』
レイフの説明を聞いたレイチェルは黙ってしまった。
レッドノーム号が今からスペースボートを追いかけても追いつくことはできない。しかしステーションに向かえば、トーゴー大佐は何をするか分からない。シャトルを破壊したトーゴー大佐の行動を考えると、最悪ディビット達ごとステーションを破壊するかもしれないのだ。
『…レイフ、「そのまま」という事は何か手があるのですね?』
数秒の沈黙の後、レイチェルは、レイフが「そのまま」と言った意味を尋ねる。
『…レビテートの魔法を使えば、再び軌道上に戻ってくることはできる』
『では…』
『だが、儂は魔力をほぼ使い尽くしてしまうため、レッドノーム号との戦いでは自由に魔法が使えなくなるのだ』
プロテクション・フロム・ミサイルの魔法が使えなくなれば、レッドノーム号のレーザー砲を避けることは難しくなる。つまり、アルテローゼに勝ち目は無くなるという事だ。
『…レイフ、アレを撃墜します…そして、その後は…レッドノーム号を追いかけますわ』
レイチェルは、少しためらった後はっきりとそう言った。
『…勝ち目は薄いのだが』
『それでも…やりますわ』
『…了解した』
レイフはレイチェルの真剣な顔を見て、覚悟を決めた。
アルテローゼは落下する《神の雷》を追いかけるため、減速して落下していった。
◇
「《神の雷》を追いかけていったか」
「みたいですぜ」
レッドノーム号の艦橋でトーゴー大佐と禿頭の大男は、モニターで《神の雷》を追いかけて火星に落ちていくアルテローゼを見ていた。
「これで邪魔する奴はいない。ステーションに向かった奴らの始末を付けるぞ」
「こんな事なら、最初からステーションを破壊しておけば良かったっすね」
「我らは連邦宇宙軍だぞ。どうして何も起きてないステーションを破壊するのだ?」
「ですが、今からステーションに向かってやっちまうんでしょ」
「そりゃ、テロリストに乗っ取られたなら、破壊するしかないな」
「…そういうことですか。そうしないとステーション一つ壊すこともできないとは難儀なことですぜ」
「これは私があれに対してできる、精一杯の抵抗なのだよ」
「艦長は頑固すぎますぜ」
「私の指示に従うお前もそうだろうが」
「はは、そうですぜ」
トーゴー大佐と禿頭の大男はしばし笑い会うと、レッドノーム号をステーションに向けて発進させるのだった。
◇
スクイッドⅣの追撃を振り切り、スキップ軌道をとったスペースボートはステーションに向かって順調に進んでいた。
『何処が…順調なんだよ』
スペースボートは大気圏をスキップするたびに前後左右にGが襲いかかり乗り心地は最悪であった。ディビットは今にも吐きそうな顔で必死にシートにしがみついていた。
『喋るな、舌を噛むぞ』
ケイイチは暴れ馬のようなスペースボートを操縦するのに必死であった。何しろ一歩間違えば追跡してきたスクイッドⅣと同じ運命が待ち構えている。刻一刻と変わる大気圏の状態をセンサーと目で捕らえて軌道に乗せるケイイチの操縦は神業と言っても良かった。
『わーい、ガオガオに乗っていた時みたいだね~』
ディビットと違いアイラはGを物ともせず…いや楽しんでいたのだった。
そして数十回のスキップを終えたスペースボートは、最後のスキップを終えると、ステーションへの接近軌道に乗る。
『これでステーションまで一直線だ』
『ようやく終わったのか…』
ディビットは死にそうな顔をしていたが、後は慣性飛行でステーションに向かうだけと分かりほっとした顔でシートに座り直した。
『 トランスポンダーと敵味方識別装置は正常に動作しているよな』
『もちろん。宇宙軍の正式なコードで発信しているぞ』
ケイイチの問いかけにディビットはIFFが出力されていることをモニターに表示させた。
ステーションがいる軌道上には宇宙塵やロケット部品と言ったスペースデブリが存在する。もの凄い速度のデブリがステーションにぶつかれば大きな被害が出るため、ステーションはデブリを破壊するためのレーザー砲が設置されている。
トランスポンダーやIFFを発信せずにステーションに近づく物は、レーザー砲によって狙い撃たれてしまうのだ。
《神の雷》の落下地点がヘリオスと聞き、レイチェルも驚く。
『ああ、このままの軌道なら90%の確率でアレはヘリオスに落下するぞ』
『そんな。アルテローゼで阻止はできないのですか?』
『…今すぐにアレを追えば可能だ』
『では、直ぐに追いかけましょう』
『だが、アレを追いかけた場合、アルテローゼはそのままではこの軌道まで戻ってくることはできない』
『…それは』
『つまりアレを破壊した後、アルテローゼは地上に降りるしかない。そうなれば、障害物の無くなったレッドノーム号は、スペースボートを追いかけてステーションに向かうだろう』
レイフの説明を聞いたレイチェルは黙ってしまった。
レッドノーム号が今からスペースボートを追いかけても追いつくことはできない。しかしステーションに向かえば、トーゴー大佐は何をするか分からない。シャトルを破壊したトーゴー大佐の行動を考えると、最悪ディビット達ごとステーションを破壊するかもしれないのだ。
『…レイフ、「そのまま」という事は何か手があるのですね?』
数秒の沈黙の後、レイチェルは、レイフが「そのまま」と言った意味を尋ねる。
『…レビテートの魔法を使えば、再び軌道上に戻ってくることはできる』
『では…』
『だが、儂は魔力をほぼ使い尽くしてしまうため、レッドノーム号との戦いでは自由に魔法が使えなくなるのだ』
プロテクション・フロム・ミサイルの魔法が使えなくなれば、レッドノーム号のレーザー砲を避けることは難しくなる。つまり、アルテローゼに勝ち目は無くなるという事だ。
『…レイフ、アレを撃墜します…そして、その後は…レッドノーム号を追いかけますわ』
レイチェルは、少しためらった後はっきりとそう言った。
『…勝ち目は薄いのだが』
『それでも…やりますわ』
『…了解した』
レイフはレイチェルの真剣な顔を見て、覚悟を決めた。
アルテローゼは落下する《神の雷》を追いかけるため、減速して落下していった。
◇
「《神の雷》を追いかけていったか」
「みたいですぜ」
レッドノーム号の艦橋でトーゴー大佐と禿頭の大男は、モニターで《神の雷》を追いかけて火星に落ちていくアルテローゼを見ていた。
「これで邪魔する奴はいない。ステーションに向かった奴らの始末を付けるぞ」
「こんな事なら、最初からステーションを破壊しておけば良かったっすね」
「我らは連邦宇宙軍だぞ。どうして何も起きてないステーションを破壊するのだ?」
「ですが、今からステーションに向かってやっちまうんでしょ」
「そりゃ、テロリストに乗っ取られたなら、破壊するしかないな」
「…そういうことですか。そうしないとステーション一つ壊すこともできないとは難儀なことですぜ」
「これは私があれに対してできる、精一杯の抵抗なのだよ」
「艦長は頑固すぎますぜ」
「私の指示に従うお前もそうだろうが」
「はは、そうですぜ」
トーゴー大佐と禿頭の大男はしばし笑い会うと、レッドノーム号をステーションに向けて発進させるのだった。
◇
スクイッドⅣの追撃を振り切り、スキップ軌道をとったスペースボートはステーションに向かって順調に進んでいた。
『何処が…順調なんだよ』
スペースボートは大気圏をスキップするたびに前後左右にGが襲いかかり乗り心地は最悪であった。ディビットは今にも吐きそうな顔で必死にシートにしがみついていた。
『喋るな、舌を噛むぞ』
ケイイチは暴れ馬のようなスペースボートを操縦するのに必死であった。何しろ一歩間違えば追跡してきたスクイッドⅣと同じ運命が待ち構えている。刻一刻と変わる大気圏の状態をセンサーと目で捕らえて軌道に乗せるケイイチの操縦は神業と言っても良かった。
『わーい、ガオガオに乗っていた時みたいだね~』
ディビットと違いアイラはGを物ともせず…いや楽しんでいたのだった。
そして数十回のスキップを終えたスペースボートは、最後のスキップを終えると、ステーションへの接近軌道に乗る。
『これでステーションまで一直線だ』
『ようやく終わったのか…』
ディビットは死にそうな顔をしていたが、後は慣性飛行でステーションに向かうだけと分かりほっとした顔でシートに座り直した。
『 トランスポンダーと敵味方識別装置は正常に動作しているよな』
『もちろん。宇宙軍の正式なコードで発信しているぞ』
ケイイチの問いかけにディビットはIFFが出力されていることをモニターに表示させた。
ステーションがいる軌道上には宇宙塵やロケット部品と言ったスペースデブリが存在する。もの凄い速度のデブリがステーションにぶつかれば大きな被害が出るため、ステーションはデブリを破壊するためのレーザー砲が設置されている。
トランスポンダーやIFFを発信せずにステーションに近づく物は、レーザー砲によって狙い撃たれてしまうのだ。
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