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第13話:宇宙の果て

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 巨大なロケットを背負ったアルテローゼ・スペースフォームは、順調に高度を上げていた。

「このまま行けば後三時間ほどで宇宙ステーションに到達しますね」

 アルテローゼの打ち上げ軌道が表示されているモニターを見て、レイチェルがそう呟く。

「へぇ~そんなに早く着くんだ。もしかして宇宙ステーションってオリンポスより近いの?」

「そうですね、直線距離ならヘリオス首都とオリンポスより宇宙ステーションの方が近いですわ」

「へえ~」

 打ち上げ途中と言うのにレイチェルはアイラの無邪気な質問に答えているが、その一方で

「Gがメチャクチャキツいぞ」

「喋るな、舌を噛むぞ」

 アルテローゼにつり下げられたスペースボートに搭乗しているディビットとケイイチは打ち上げの激しいGに耐えていた。

 レイチェル達とディビット達の状況がこれほど異なるのは、魔法によるGの軽減が行われているいるかどうかの差であった。アルテローゼのコクピットにはフォーリングコントロールの魔法にてGがキャンセルされているが、スペースボートの方にはかかっていない。それによってレイチェル達は1Gという地上と変わらない快適な状況であるのに、ディビット達は6Gという高G環境という差が出てしまったのだ。

 通常シャトルで打ち上げる場合は最高でも3Gしかかからないようにロケットエンジンは噴射する。しかし今回の打ち上げではレッドノーム号との接触を避けるため、短時間で宇宙ステーションにたどり付くようにロケット・エンジンは限界ギリギリの出力で噴射してた。その為機体と搭乗員にはもの凄いGがかかってしまったのだった。

 ヴィクターはレイフの魔法によるGの軽減を見込んでロケットエンジンの設計をしていた。しかし、突貫工事で作られた機体は設計値より強度が足りない部分が出てきており、そこをレイフがゴーレムマスターの魔法で強度を高める必要が出てきた。
 その為魔力マナの消費が増えてしまい、スペースボートのコクピットへの魔法使用が見送られたのだった。

「俺もあっちに乗りたかったぜ」

 平然としているレイチェル達の姿を見てディビットは愚痴るが、

『男なら耐えろ』

 レイフはそう冷たく言い放つのだった。

 そして打ち上げから十分後、アルテローゼはステーションの軌道に到達した。ロケットエンジンは停止し、ディビット達は高Gから解放されるのだった。

「あれが宇宙ステーションですわ」

「白いドーナツみたいだよね~」

 レイチェルが指さす先には、宇宙ステーションが浮いていた。

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