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第13話:宇宙の果て
Aパート(1)
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トーゴー大佐からの通達を受けた火星の各都市はかなり混乱したが、革命軍寄りの都市は徹底抗戦を、連邦寄りの都市は革命軍がいないと言う声明をレッドノーム号に向けて送っていた。しかし、トーゴー大佐からは何ら返答は無かった。各都市の行政トップは、返答がない事に一抹の不安を感じたが、理不尽とも言える通達内容を単なる脅しであると市民に広報するだけだった。
各都市の行政トップが動き出したのは、ヘリオスからステーションとの通信回復に協力してほしいと極秘の通信があってからであった。地球との通信ができない等異常事態にさすがに危機感を覚えた各都市は、シャトルやHLVを多数保有しているオリンポスに対して何とかしてほしいと要望を送るのだった。
そのような状況で、革命軍の中心とも言えるオリンポスでは、企業連合と革命軍の間で対策会議が行われていた。
「それで、企業連合はステーションに向けてシャトルかHLVを打ち上げてくれるのかね?」
サトシが眼鏡を光らせて、企業連合の出席者達に尋ねたのだが、
「わ、我が社のシャトルは調子が悪くて…」
「弊社のHLVも同じです」
「同じく…」
と皆首を横に振っていた。
「GC社もそうなのかね?」
サトシがGC社の支社長に顔を向けると、
「GC社のシャトル及びHLVは問題は無い。しかし、今弊社のシャトルやHLVを打ち上げることはできない」
と彼はきっぱりとサトシの要求を断った。
「しかし、|ヘリオスのレイコ主席からも協力要求が来ているのだが?」
「この状況でシャトルやHLVを打ち上げると言うことは、我が社が革命軍に協力したと連邦宇宙軍は判断するだろう。我が社連邦軍に兵器を納める企業でもあるのだ。つまり、連邦軍に半期を翻すようなことはできないのだ」
GC社の支社長はそう言って強く首を横に振った。
「あれだけの兵器を革命軍に売っておいて、今更という気もするが?」
サトシはため息をつくと、組んだ手の上に顎をのせた。
「それについては、開発部門が勝手にやったことだ。書類上も当社は警備会社にロボット兵器を売っただけであり、連邦軍に反旗を翻したという事実は無いのだ」
かなり苦しい言い訳であると支社長も分かっているが、GC社の影響力を持ってすれば革命軍にロボット兵器を売った事は政治的に何とかなる範囲であった。それにロボット兵器も運用していた社員も全てレッドノーム号の攻撃で文字通り消え去ってしまった。死人に口なしとして処理できる。
「では、同じようにシャトルかHLVを革命軍に売るとことは可能なのではないか?」
「ちょっと待て。革命軍にはそんな金は無いぞ」
ジョージが慌ててサトシを止めた。
「前にお売りしたロボット兵器の代金も支払われていないのですよね」
支社長は革命軍の会計担当であるジョージに冷たい視線を送る。
「くっ、それは何とか今期中に支払いますので…」
先のGC社社員を含め戦死者が多数出たため、革命軍の本拠地であるオリンポスでも革命軍にたいする風当たりが強くなってきていた。その為、ジョージも革命軍の資金集めに苦労していた。
「それにお売りするといっても、当社が保有するシャトルやHLVには余裕が無いのです。つまりお売りすることはできませんな」
支社長はサトシに視線を戻しHLVの供出はできないと話を打ち切る。
「だが、このままでは連邦宇宙軍によって、オリンポスが爆撃されるのだよ。そうなればGC社も多大な被害を受ける事になるが?」
「オリンポスに爆撃? そんな馬鹿な事を連邦宇宙軍がするわけないではありませんか。あの通達も革命軍を牽制するためのブラフでしょう。レイコ主席もおかしな事を言ったものです」
支社長はサトシの言葉を切って捨てた。大企業であり連邦軍に兵器を売っているGC社の支社があるオリンポスを連邦軍が爆撃することはないと支社長は思っていた。
「ですよね~」
「私もそう思いますよ」
他の企業の出席者もGC社の支社長に同意する者が多数占めていた。
「普通ならそう考えるだろうが…、レイコ主席が言うようにトーゴー大佐の通達はおかしい。我が君は『あの者は何かおかしい。火星に対して悪意を感じる』と仰っていた」
企業連合の出席者が騒ぐ中、サトシはぶつぶつと呟いていた。しかしそれを聞いている者は誰もいなかった。
「迂闊に都市から避難するために離れてしまうと革命軍と思われてしまう。取りあえず時間になれば市民は外出を禁止して屋内に待機を命じるべきだな」
「それぐらいで良いのではないか?」
「いや、それすら不要では?」
サトシが黙っている間に企業連合の出席者の間では楽観論が広がっていた。
「お黙りなさい!」
そんな中、サトシはテーブルを叩きつけて突然立ち上がった。
「一体どうしたのだね?」
出席者が突然の事に黙る中、GC社の支社長がサトシに問いかけた。
「…革命軍はレイコ主席の進言に従い、ステーションに向かうことにする」
「お、おい。サトシよ、何言ってんだ」
ジョージがサトシの突然の宣言に慌てるが、
「これは革命軍のリーダーとしての決定事項だ!」
とサトシはジョージを怒鳴りつけた。
「な、何を言っているのだね。今までの話を聞いていなかったのかね」
「革命軍は何を考えている」
「乱心したのかね?」
そんなサトシに対して、支社長を含め企業連合の出席者は呆れた顔をする。
「これを見ろ…」
その出席者に対して、サトシは眼鏡を光らせた。その光をみた出席者達は目がトロンとしてしまった。眼鏡の光によって催眠状態に出席者は落ちたのだった。
「シャトルを二機、HLVを一機ステーションに向けて打ち上げる。これが決定事項だ。詳細は追って伝えるが、各社は協力して直ぐに準備に取りかかるのだ」
「…分かりました」
「…了解しました」
サトシの言葉に出席者達は次々と賛同していった。
各都市の行政トップが動き出したのは、ヘリオスからステーションとの通信回復に協力してほしいと極秘の通信があってからであった。地球との通信ができない等異常事態にさすがに危機感を覚えた各都市は、シャトルやHLVを多数保有しているオリンポスに対して何とかしてほしいと要望を送るのだった。
そのような状況で、革命軍の中心とも言えるオリンポスでは、企業連合と革命軍の間で対策会議が行われていた。
「それで、企業連合はステーションに向けてシャトルかHLVを打ち上げてくれるのかね?」
サトシが眼鏡を光らせて、企業連合の出席者達に尋ねたのだが、
「わ、我が社のシャトルは調子が悪くて…」
「弊社のHLVも同じです」
「同じく…」
と皆首を横に振っていた。
「GC社もそうなのかね?」
サトシがGC社の支社長に顔を向けると、
「GC社のシャトル及びHLVは問題は無い。しかし、今弊社のシャトルやHLVを打ち上げることはできない」
と彼はきっぱりとサトシの要求を断った。
「しかし、|ヘリオスのレイコ主席からも協力要求が来ているのだが?」
「この状況でシャトルやHLVを打ち上げると言うことは、我が社が革命軍に協力したと連邦宇宙軍は判断するだろう。我が社連邦軍に兵器を納める企業でもあるのだ。つまり、連邦軍に半期を翻すようなことはできないのだ」
GC社の支社長はそう言って強く首を横に振った。
「あれだけの兵器を革命軍に売っておいて、今更という気もするが?」
サトシはため息をつくと、組んだ手の上に顎をのせた。
「それについては、開発部門が勝手にやったことだ。書類上も当社は警備会社にロボット兵器を売っただけであり、連邦軍に反旗を翻したという事実は無いのだ」
かなり苦しい言い訳であると支社長も分かっているが、GC社の影響力を持ってすれば革命軍にロボット兵器を売った事は政治的に何とかなる範囲であった。それにロボット兵器も運用していた社員も全てレッドノーム号の攻撃で文字通り消え去ってしまった。死人に口なしとして処理できる。
「では、同じようにシャトルかHLVを革命軍に売るとことは可能なのではないか?」
「ちょっと待て。革命軍にはそんな金は無いぞ」
ジョージが慌ててサトシを止めた。
「前にお売りしたロボット兵器の代金も支払われていないのですよね」
支社長は革命軍の会計担当であるジョージに冷たい視線を送る。
「くっ、それは何とか今期中に支払いますので…」
先のGC社社員を含め戦死者が多数出たため、革命軍の本拠地であるオリンポスでも革命軍にたいする風当たりが強くなってきていた。その為、ジョージも革命軍の資金集めに苦労していた。
「それにお売りするといっても、当社が保有するシャトルやHLVには余裕が無いのです。つまりお売りすることはできませんな」
支社長はサトシに視線を戻しHLVの供出はできないと話を打ち切る。
「だが、このままでは連邦宇宙軍によって、オリンポスが爆撃されるのだよ。そうなればGC社も多大な被害を受ける事になるが?」
「オリンポスに爆撃? そんな馬鹿な事を連邦宇宙軍がするわけないではありませんか。あの通達も革命軍を牽制するためのブラフでしょう。レイコ主席もおかしな事を言ったものです」
支社長はサトシの言葉を切って捨てた。大企業であり連邦軍に兵器を売っているGC社の支社があるオリンポスを連邦軍が爆撃することはないと支社長は思っていた。
「ですよね~」
「私もそう思いますよ」
他の企業の出席者もGC社の支社長に同意する者が多数占めていた。
「普通ならそう考えるだろうが…、レイコ主席が言うようにトーゴー大佐の通達はおかしい。我が君は『あの者は何かおかしい。火星に対して悪意を感じる』と仰っていた」
企業連合の出席者が騒ぐ中、サトシはぶつぶつと呟いていた。しかしそれを聞いている者は誰もいなかった。
「迂闊に都市から避難するために離れてしまうと革命軍と思われてしまう。取りあえず時間になれば市民は外出を禁止して屋内に待機を命じるべきだな」
「それぐらいで良いのではないか?」
「いや、それすら不要では?」
サトシが黙っている間に企業連合の出席者の間では楽観論が広がっていた。
「お黙りなさい!」
そんな中、サトシはテーブルを叩きつけて突然立ち上がった。
「一体どうしたのだね?」
出席者が突然の事に黙る中、GC社の支社長がサトシに問いかけた。
「…革命軍はレイコ主席の進言に従い、ステーションに向かうことにする」
「お、おい。サトシよ、何言ってんだ」
ジョージがサトシの突然の宣言に慌てるが、
「これは革命軍のリーダーとしての決定事項だ!」
とサトシはジョージを怒鳴りつけた。
「な、何を言っているのだね。今までの話を聞いていなかったのかね」
「革命軍は何を考えている」
「乱心したのかね?」
そんなサトシに対して、支社長を含め企業連合の出席者は呆れた顔をする。
「これを見ろ…」
その出席者に対して、サトシは眼鏡を光らせた。その光をみた出席者達は目がトロンとしてしまった。眼鏡の光によって催眠状態に出席者は落ちたのだった。
「シャトルを二機、HLVを一機ステーションに向けて打ち上げる。これが決定事項だ。詳細は追って伝えるが、各社は協力して直ぐに準備に取りかかるのだ」
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