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第10話:救出

Bパート(3)

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 弾道飛行を終えたアルテローゼレイフは、オリンポスへ向けて降下していた。大気との摩擦で機体下部に装着された耐熱シールドがうっすらと赤くなるが、アルテローゼには影響はない。そう某○クのように燃え尽きたりはしないのだ。

『後二分でオリンポス上空だ。この高空からの侵入が察知されているとは思わないが、何があるか分からないぞ。アイラはしっかりスティック操縦桿を握っておけ』

「りょーかい」

 敵地への単独降下にレイフは緊張していたが、アイラはそれほど緊張している様子はなかった。

 二分後、無事突入を終えたアルテローゼは、耐熱シールドを排除して翼を広げた。アルテローゼの眼下には、オリンポス火山と市街地が小さく見えていた。

『(あれがオリンポス火山か、データでは知っていたが巨大な火山だな。しかし、見れば見るほど儂の知っているオリンボス・・・・・火山に似ているな)』

 レイフが地下迷宮ダンジョンを築いたのは、オリンボス・・・・・火山であった。名前もオリンスとオリンス、一字違いであった。レイチェルという存在があるのだから、そんな偶然もあるのだろうと、レイフは納得してしまった。

 アルテローゼレイフは降下中にオリンポス市街を探索した。そして、オリンポス港に潜水艦が居ることを発見した。

『やはり、ここに潜水艦がいたか。となれば、レイチェルはこの都市の何処かにいるはずだな』

 レイチェルがオリンポス居ることは確定と思われた。次はその居場所を探すことになる。
 アルテローゼは、オリンポス港から視線を移し、オリンポスの市街地を拡大表示する。オリンポスの市街地には、今のところ目立った動きはなく、アルテローゼレイフの侵入は察知されていないようだった。

『アイラ、どの建物にそのサトシという奴はいるのだ?』

「レイフ、あの丸いのがサッカーボールオリンポス行政ビルだよ。あそこにサトシがいるはずだよ」

 アイラが指し示したのは、オリンポス市街地の中央にでんと鎮座する、巨大なサッカーボールであった。レイフはサッカーというスポーツは全く知らなかったが、データベースにあるサッカーボールの画像と見比べて、『確かにサッカーボールだな』と頷いた。

『よし、最終アプローチに入るぞ!』

 十分に降下速度を落としたアルテローゼレイフは、人型形態に変形する。そして翼をたたみ、重力に引かれオリンポス行政ビルサッカーボールに向かっていった。

 矢のように降下したアルテローゼレイフは、オリンポス行政ビルサッカーボールの上空百メートル程の所で、フォーリングコントロールの魔法を唱えた。アルテローゼは魔法の力で落下の速度をゼロにする。
 しかしこのままフォーリングコントロールの魔法を使い続けると、魔力マナがあっという間に尽きてしまう。魔法をキャンセルして翼を広げ、ランドセルのジェットエンジンを起動する。そうして、アルテローゼはオリンポス行政ビルサッカーボールを巡る滑空体制に入った。

『レイチェルはどこにいる』

 アルテローゼレイフオリンポス行政ビルサッカーボールの上空をグルグルと回りながら、魔力マナ感知でレイチェルを探した。

「サッカーボールの地下に火星解放戦線の基地があるんだ…って、それって言っちゃ駄目だったっけ」

 アイラが慌てて口を押さえるが、時既に遅しである。レイフは、魔力マナ感知の範囲を、地下まで広げた。

『地下、一階、二階…十階。レイチェルはいない。ここにいないとしたら、一体何処に居るというのだ』

 オリンポス行政ビルサッカーボールの周りを周回しながら、魔力マナ感知を続けたが、レイチェルの反応は見つからなかった。

『ここにレイチェルは居ない…こうなったらこの都市全てを調べるまでだ。そのためには、どこかに着陸しなければ。都市の中心となると、ここしかないか』

 都市全てを魔力マナ感知するとなると、飛行しながらそれを行うのはレイフでも難しい。アルテローゼじゃ一旦着地する必要があったが、できれば都市の中心が良い。そしてその最適な場所は…オリンポス行政ビルサッカーボールの屋上しかなかった。
 オリンポス行政ビルサッカーボールの屋上にはヘリポートが設けられていた。アルテローゼレイフはビルを壊さないように慎重に着地した。

「こんな所に着地して良かったのかな~」

『ええい、非常事態だ。静かにしておれ』

 レイフはアイラを黙らせると、魔力マナ感知の網を都市全体に広げた。人間であった頃のレイフであればこんな事は不可能だったが、アルテローゼとなった今なら、都市の人間を個別に識別することが可能である。AIとしての能力をフル回転させて、レイチェルを探す。
 レイフの目の前には、都市に住む人々が光点と表示され、サブシステムのフィルター処理がその中からレイチェルと魔力マナパターンが一致しない物を次々と消していく。

「…見つかったの?」

『……馬鹿な、レイチェルはこの都市にいない?』

 レイフの前で最後の光点が消えた。魔力マナ感知でレイチェルを見つけ出すことはできなかった。アルテローゼレイフはガックリと項垂れた。

「ええっ、金髪ドリルがここオリンポスにいないの?」

 アイラも、オリンポスにレイチェルがいると確信していたのだが、居ないと分かって驚いていた。
 いや、実際にはつい数時間前まで二人はこのオリンポスにいたのだが、今は我が君に会うためにオリンポス火山の廃坑にいた。レイフとアイラはオリンポス都市に来たタイミングが悪かったのだ。

『…作戦は失敗だ。一旦ヘリオス首都に戻るしかないな』

「レイフ…金髪ドリルを見捨てるの?」

『馬鹿者! 儂がレイチェルを見捨てるわけがなかろう。だが見つからないのであれば、また別な作戦を立てなければならん。それにグズグズしていると…』

 レイフがそう叫んだところで、アルテローゼのレーダーは、小型の飛行物体を捉えていた。それは都市警察が制御する飛行型ドローンだった。

「うぁ、やばい、おまわりさんだ」

 アイラはスラムで生活していたため、警察のやっかいになることが多かった。そのため警察にはトラウマを抱えているのか、赤色灯を回すドローンを見て頭を抱えていた。

『そこの所属不明…いや連邦軍の機動兵器(?)、直ちにオリンポス行政ビルから降りなさい。いや道路に降りると危険ですので、えーっと、空港まで来てもらえますか』

 革命軍に支配されていると言っても警察の業務は犯罪者の取り締まりである。さすがにアルテローゼをいきなりは攻撃せず、警告してきた。しかし、アルテローゼのような飛行する機動兵器の扱いが分からず、ドローンを操っている警官は混乱していた。

『ふん、儂は誘拐されたレイチェルを探しているのだ。お前達こそ警察なら誘拐犯を捕らえんか!』

 警告に対してアルテローゼレイフはそう返信すると、ヘリポートから飛び立った。

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