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第10話:救出
Bパート(4)
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『さて、困った状況になったな』
「レイフ、ここで戦っちゃ駄目だよ」
『それぐらい分かっている』
オリンポス行政ビルから飛び立ったアルテローゼだが、周囲を警察の飛行型ドローンによって取り囲まれていた。
そのまま飛び立って振り切ろうと思ったのだが、頭上まで抑えられているため迂闊に動けなかった。無理に突破しようとすれば飛行型ドローンと接触してしまい、地上に落ちれば市民に被害が出てしまう。
『(まあ、儂はこの都市に被害が出ても気にしないのだが、レイチェルは怒るだろうな。それにアイラも怒るだろう。もしここでアイラが操縦を拒否してしまったら、レイチェルを助け出すことはできなくなる)』
アイラがいなければ、アルテローゼは行動不能となってしまう。レイチェルが戻るまで、彼女の機嫌を取っておく必要がある。
『アイラ、被害を出さないようにするには、海とオリンポス火山のどっちに向かえば良い?』
「うーん、海の方が良いかな? でもこの状況じゃ無理だよね」
周囲を見渡すと、ドローンは海の方向に多く展開しており、手薄だったのはオリンポス火山の方向であった。警察はアルテローゼをオリンポス火山の方向に誘導したい、そんな意図が見え見えであった。
『海に出てしまえばこっちは逃げやすくなるからな。オリンポス火山方面に誘い出せば、こちらの動きは制限できると思っているのだろう。ふふ、馬鹿な奴らだ』
オリンポス警察がアルテローゼの飛行能力を見誤っていることに、この状況を打開する糸口をレイフは見つけた。
『よし、ドローンの誘導に従って、オリンポス火山の方面に移動するぞ。そこで包囲網を抜けだす。これで行くぞ』
「う、うん。大丈夫なの?」
『任せておけ』
アイラが心配そうな顔をするが、アルテローゼは任せておけと胸を叩いた。
◇
オリンポス火山は標高二万五千メートルと太陽系最大の火山である。調査によって噴火の危険性が少ないと判断され、その麓にはレアメタル鉱石採掘場が多数存在していた。採掘場が多数あると言っても、広大な裾野のほとんどは無人の荒野である。
アルテローゼは、その荒野の一角に誘導されていった。
『さて、都市部から随分外れたな。そろそろ仕掛けるか』
「どうするの?」
『アルテローゼがただの飛行メカではない事を、奴らに教育してやるのさ』
そう言うと、レイフはアルテローゼ一気に降下させた。空中戦において高度を下げるのは、自機の速度を上げる為の行動である。ドローンは速度を上げる為に高度を下げたと判断して、アルテローゼを押さえ込もうと加速して前に飛び出した。
『想定通りの行動だな!』
地表すれすれまで高度を下げたアルテローゼは、速度を上げるどころか逆にジェットエンジンを切ってしまった。そのまま地上に着地したアルテローゼは、脚で地面を削りながら減速する。
空戦のセオリーを全く無視した急制動に、ドローン達はアルテローゼをオーバーシュートしてしまう。全てのドローンがアルテローゼの前方に固まって慌ててUターンしようとするが、それはレイフの思う壺だった。
『アイラ、今だトリガーを頼む』
「分かったよ」
アルテローゼがドローン達をロックオンすると同時に、アイラがトリガーを引く。ランドセル上部に装備されたレーザー機銃が火を噴き、ドローンを次々と破壊していった。ドローンは慌てて散開し、アルテローゼに攻撃を仕掛けてきた。
『ふふ、そんな豆鉄砲が当たるものか』
アルテローゼの左手に描かれたプロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣が光ると、ドローンのレーザーは全て逸れてしまう。それを見てドローン達は、どうすれば良いのか分からなくなったのか、右往左往し始めた。
『よし、この混乱に乗じて離脱するぞ』
「りょーかいだよ」
アルテローゼは飛び立つために走り出した。レビテートの魔法を使えば走る必要もないのだが、助走すれば少しでも魔力を節約できる。地面を蹴って飛び上がったアルテローゼは、変形するとジェットエンジンを全開にした。
こうなってしまってはローターで飛行するドローンでは、アルテローゼに追いつけない。そのままアルテローゼは、オリンポス火山を周回して飛び去ろうとした。
『ん、この反応は…まさか、レイチェルがここに居るのか!』
「えっ? 金髪ドリルが居るって、どういうことなの?」
アルテローゼはオリンポス火山の地表すれすれを飛行し、レイチェルを探す。しかしごつごつとした山肌を探しても、レイチェルは見つからなかった。
『見間違いだったのか…いや、確かに反応はあった』
「レイフ、あそこ!」
アイラが指さす先には、オリンポス火山の地下水脈が吹き出す巨大な滝があった。落差二千メートルを超えるその滝から、今まさにレイチェルが落下していた。
『レイチェル! くそ、間に合え~』
アルテローゼはジェットエンジンのアフターバーナーを噴かしてレイチェルを追いかけた。それでも速度が足りず、レイフはフライの魔法陣を展開した。
フライの魔法は、文字通り空を飛ぶ魔法だが、それは人を飛ばす為の魔法である。そんな魔法をアルテローゼに使えば魔力を一気に消耗してしまう。しかし、今のレイフにはレイチェルを助けることしか頭にはなかった。突然の急加速に、コクピットのフォーリングコントロールの魔法もアイラをGから守り切れなかった。
「金髪ドリル…今助けるよ」
アイラも必死にGに耐える。
そしてレイチェルが滝壺に叩きつけられる寸前に、アルテローゼは彼女をその手に掴み取った。
『間に合った…のか』
「危なかった~」
Gから解放され、レイチェルを助けられた事に安堵したアイラは、シートでぐでっとしてしまった。
手の中に横たわるレイチェルの重みを何度も確かめ、アルテローゼは安堵のため息をついた。
「レイフ、ここで戦っちゃ駄目だよ」
『それぐらい分かっている』
オリンポス行政ビルから飛び立ったアルテローゼだが、周囲を警察の飛行型ドローンによって取り囲まれていた。
そのまま飛び立って振り切ろうと思ったのだが、頭上まで抑えられているため迂闊に動けなかった。無理に突破しようとすれば飛行型ドローンと接触してしまい、地上に落ちれば市民に被害が出てしまう。
『(まあ、儂はこの都市に被害が出ても気にしないのだが、レイチェルは怒るだろうな。それにアイラも怒るだろう。もしここでアイラが操縦を拒否してしまったら、レイチェルを助け出すことはできなくなる)』
アイラがいなければ、アルテローゼは行動不能となってしまう。レイチェルが戻るまで、彼女の機嫌を取っておく必要がある。
『アイラ、被害を出さないようにするには、海とオリンポス火山のどっちに向かえば良い?』
「うーん、海の方が良いかな? でもこの状況じゃ無理だよね」
周囲を見渡すと、ドローンは海の方向に多く展開しており、手薄だったのはオリンポス火山の方向であった。警察はアルテローゼをオリンポス火山の方向に誘導したい、そんな意図が見え見えであった。
『海に出てしまえばこっちは逃げやすくなるからな。オリンポス火山方面に誘い出せば、こちらの動きは制限できると思っているのだろう。ふふ、馬鹿な奴らだ』
オリンポス警察がアルテローゼの飛行能力を見誤っていることに、この状況を打開する糸口をレイフは見つけた。
『よし、ドローンの誘導に従って、オリンポス火山の方面に移動するぞ。そこで包囲網を抜けだす。これで行くぞ』
「う、うん。大丈夫なの?」
『任せておけ』
アイラが心配そうな顔をするが、アルテローゼは任せておけと胸を叩いた。
◇
オリンポス火山は標高二万五千メートルと太陽系最大の火山である。調査によって噴火の危険性が少ないと判断され、その麓にはレアメタル鉱石採掘場が多数存在していた。採掘場が多数あると言っても、広大な裾野のほとんどは無人の荒野である。
アルテローゼは、その荒野の一角に誘導されていった。
『さて、都市部から随分外れたな。そろそろ仕掛けるか』
「どうするの?」
『アルテローゼがただの飛行メカではない事を、奴らに教育してやるのさ』
そう言うと、レイフはアルテローゼ一気に降下させた。空中戦において高度を下げるのは、自機の速度を上げる為の行動である。ドローンは速度を上げる為に高度を下げたと判断して、アルテローゼを押さえ込もうと加速して前に飛び出した。
『想定通りの行動だな!』
地表すれすれまで高度を下げたアルテローゼは、速度を上げるどころか逆にジェットエンジンを切ってしまった。そのまま地上に着地したアルテローゼは、脚で地面を削りながら減速する。
空戦のセオリーを全く無視した急制動に、ドローン達はアルテローゼをオーバーシュートしてしまう。全てのドローンがアルテローゼの前方に固まって慌ててUターンしようとするが、それはレイフの思う壺だった。
『アイラ、今だトリガーを頼む』
「分かったよ」
アルテローゼがドローン達をロックオンすると同時に、アイラがトリガーを引く。ランドセル上部に装備されたレーザー機銃が火を噴き、ドローンを次々と破壊していった。ドローンは慌てて散開し、アルテローゼに攻撃を仕掛けてきた。
『ふふ、そんな豆鉄砲が当たるものか』
アルテローゼの左手に描かれたプロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣が光ると、ドローンのレーザーは全て逸れてしまう。それを見てドローン達は、どうすれば良いのか分からなくなったのか、右往左往し始めた。
『よし、この混乱に乗じて離脱するぞ』
「りょーかいだよ」
アルテローゼは飛び立つために走り出した。レビテートの魔法を使えば走る必要もないのだが、助走すれば少しでも魔力を節約できる。地面を蹴って飛び上がったアルテローゼは、変形するとジェットエンジンを全開にした。
こうなってしまってはローターで飛行するドローンでは、アルテローゼに追いつけない。そのままアルテローゼは、オリンポス火山を周回して飛び去ろうとした。
『ん、この反応は…まさか、レイチェルがここに居るのか!』
「えっ? 金髪ドリルが居るって、どういうことなの?」
アルテローゼはオリンポス火山の地表すれすれを飛行し、レイチェルを探す。しかしごつごつとした山肌を探しても、レイチェルは見つからなかった。
『見間違いだったのか…いや、確かに反応はあった』
「レイフ、あそこ!」
アイラが指さす先には、オリンポス火山の地下水脈が吹き出す巨大な滝があった。落差二千メートルを超えるその滝から、今まさにレイチェルが落下していた。
『レイチェル! くそ、間に合え~』
アルテローゼはジェットエンジンのアフターバーナーを噴かしてレイチェルを追いかけた。それでも速度が足りず、レイフはフライの魔法陣を展開した。
フライの魔法は、文字通り空を飛ぶ魔法だが、それは人を飛ばす為の魔法である。そんな魔法をアルテローゼに使えば魔力を一気に消耗してしまう。しかし、今のレイフにはレイチェルを助けることしか頭にはなかった。突然の急加速に、コクピットのフォーリングコントロールの魔法もアイラをGから守り切れなかった。
「金髪ドリル…今助けるよ」
アイラも必死にGに耐える。
そしてレイチェルが滝壺に叩きつけられる寸前に、アルテローゼは彼女をその手に掴み取った。
『間に合った…のか』
「危なかった~」
Gから解放され、レイチェルを助けられた事に安堵したアイラは、シートでぐでっとしてしまった。
手の中に横たわるレイチェルの重みを何度も確かめ、アルテローゼは安堵のため息をついた。
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