【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

４

「姉さん。今日は、食パン焼くんだ」

自習の製パンで、武尊が珍しく口を挟んでくる。

「イギリス人のお友達に、ホームパーティーに呼ばれているの。
お土産に、全粒粉の山型パンを持って行きたいんだ」

発酵の時間に、クリスマスの話をする。
武尊と妃奈は、表参道のイルミネーションに行く。

稜也と天音は、二人で話し合ったようだ。
天音の表情が、明るくなってる。

亜紀と大地は、どうするんだろう。
敢えて聞かないが、大地の家は千葉の柏だ。
亜紀が住んでいる蒲田とは、逆方向になる。
イルミネーションは夜になる、どうするのやら。

柊木麻未が、話しかけてきた。
冬休みに、自宅に招きたいと言っている。
アルバイトを辞めたし、都合を合わせる約束をした。

出来上がったパンを持って、高代佑樹の部屋に行った。
ラッピングした、クリスマスプレゼントを渡す。

「開けていい？」

「どうぞ」
私の返事を聞いて、彼がラッピングを開けた。

「 嬉しいよ、ありがとう。
これでお酒を飲んだら、どんなに素敵だろう」

「試してみる？
スーパーでお刺身でも、買おうよ」

一緒にスーパーに行って、マグロの赤身を買った。
じゃがいも、玉ねぎ、人参、牛こま切れも買って、肉じゃがも作った。

徳利で温めた燗酒を、お猪口で頂く。
冷酒とはまた違う、味わいだ。

「君と知り会わなかったら、知らなかった味わいだ」

「ここには夏用の冷酒グラスしか無かったので、私が欲しかったの」

肉じゃがも、彼は初めて食べたとか言ってる。
食事が終わって、一緒に洗い物をする。
私が帰ると言うと、寂しそうな顔をした。

「明日まで学校があるの。
これだけは譲れない、ゴメンね」

「いや、それでこそ君だ」

彼は、快く私を送り出してくれた。