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第十一章 激震

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7月の終わり、Japan Ladys Fashion Weekに向けて最終の会議が行われた。
ゲストモデルの選定で、加山副社長が沙織と加藤みさきを希望している。

「沙織は、ウォーキングのレッスンなんかしてません。
リスクが大きすぎます」
俺は主張した。

「あの透明感を出さずにおくのは惜しい」

「沙織のやる気を出させる手がある」
田中氏が珍しく口を出した。

「どんな手だ」
加山副社長が期待した顔で聞いている。

「オーデションをすればいい。
沙織のライバルになりそうなメンバーを集める。
それを加山副社長が見てから、選んだらどうか」

「面白い。みんなのやる気も、確認出来るな」

すぐに田中氏がメンバーのリストを作って、各プロダクションに連絡した。
続々とエントリーが返ってくる。
結果として20名のアイドルが、オーディションに臨むことになった。

全員がsolemnityの本店に集められた。
事前に提出した資料に書かれているサイズのドレスが、用意されている。
サイズを誤魔化したり、体型が変わっていると着こなせない。
自分に用意されたドレスを着て、面接が行われた。

1次面接で、半数が落とされた。
続けて白のブラウスと黒のショートパンツという、スポーティな衣装で審査が行われた。

「審査結果は、明日事務所に連絡します」
オーディションは終了して、solemnityの幹部は最終選考の会議を始めた。
俺と田中氏は別室で待っていた。

「真凛、いい子はいたか?」

「名古屋から来ていた子は映えていた。
博多の子も一人、いい子がいた。
それに古田美那が、あんなにモデルに向いてるとは思わなかった」

「古田美那は、グループを卒業する気はないのかな?」

「卒業したら、スカウトするの?」

「スカウトしてから卒業がいい、うちが契約したいからな。
美那には、今日は落ちて欲しい」

「何で?」

「合格してJLWに出たら、取り合いになるかもしれない」
田中氏は、考え事を巡らせているようだった。
彼の事だ、本気なんだろう。

翌日、合格者が発表された。
出雲沙織、月城美雪、加藤みさき、名古屋の野原美穂、博多の宮本陽菜の5人だった。
ほぼ、俺の予想通りだった。

他の子が悪かったわけじゃない、solemnityのドレスが似合うかどうかだった。

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