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【番外編】

10.【社会人三年目/夏】井田とトコロテンの日 ②

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 ◇

「……だとしてもありえなくね?」

 宇山のことしか考えられない、って言ったあたりからちょっとトーンダウンしたものの、宇山の機嫌はまだ悪い。腕も足も組んだままリビングのソファでふんぞり返って、なぜか一人だけ床に正座させられた俺を見下ろしている。厚手のラグで痛くはないけど。
 まあ確かに、俺が逆の立場なら未遂でも怒る。もし最後までやってたら、あれで意外と潔癖な七瀬なんかは、もう口も利いてくれなかったかもしれない。ちょっと投げやりになってたとはいえ、軽率な自分の行動を本気で反省した。
 だけど、宇山には宇山の事情もあった。実は、お気に入りAV女優のエロ動画でも、女の子相手にちんこが勃たない身体になってしまってたらしい。気付いたのは就活を始めた頃だったっていうから、そりゃあ荒ぶりもする。
 ……って、マジか。俺ら相手にはずっと普通に勃ってるのに。勃たない宇山なんか見たことがなくて信じられない。
 ゲイビで試してみても駄目だったっていうし、女より男の方が好きになった、ってわけじゃないんだろうけど。

「あれ、七瀬とは別の生き物だと思うんだよね。あんな尻にれるとか無理だって」
「ええー、自己投影すんのって挿れるそっち側なんだ」
「はあ? 当たり前じゃん。そもそも俺ゲイじゃねえし」
「いや、まあ、それは俺もそうだけど」
「つか俺ら全員そうだろ」
「……有川が言っても説得力ねえな」

 大学を卒業するちょっと前から同棲を始めた有川と七瀬の部屋は、ワンフロアに二戸だけの七階建てマンションだ。
 インテリアはシンプルでモダン。黒いアイアンにダークブラウンの木製家具なんかは有川の好みが前面に出てるけど、前の部屋の時よりは角が取れた感じで居心地がいい。三人が座っているL字型の布張りソファも大変座り心地がいいのを知っているので、そろそろ俺もそっちに座らせていただきたい。

 まあとにかく、本当に俺らじゃないと駄目になってしまった宇山は、これはり込みに違いない、とかなんとか言いだした。『初めてやった相手にしか勃たない刷り込み』とか、そんなわけあるか。だったら世の中に浮気だの不倫だのが横行するはずがない。俺だって生身の女の子が駄目だっただけで、多分エロ動画なら今でも勃つ。……最近は全然見てないけど。

「あーもう、マジでお前らめんどくせーな。それ結局のとこ、宇山は井田とやれるんだったら問題ねえんだろ? とりあえずちゃちゃっと仲直りHでもしろよ。見といてやるから」

 話の途中からうんざりした顔をして、有川と座面が広いソファの上でいちゃいちゃし始めていた七瀬が、話のキリのいいところで急に口を開いた。一応聞いてはいたらしい。

「いや、ちゃちゃっとって……。別にいいけど、それ七瀬が見たいだけだろ」
「え、無理。俺、七瀬とやりたい。穴があったら誰でもいい奴となんかマジで無理」
「ひでえ」

 やばい。やっぱラブホ行ったことにも怒ってたか。
 まあ、始まりがだったから、宇山を穴として見てると思われてもそれは仕方がない。だけど、やりたいかどうかは関係なく恋人にしたいのは宇山だけだ、ってどうやったら信じてもらえんだろな。

「つか、それ言いすぎ。誰でもいいわけねえじゃん」
「はあ? 七瀬ともやってる人が言っても説得力ないんですけど」

 マジか。どう考えたって七瀬は別枠だろ。今さらそこを責められるとか、理不尽すぎて泣きたい。

「あー……、じゃあこれからは宇山とだけにする。七瀬とはもうやらない。そしたら信じる?」
「はっ?」
「えっ!」

 無意識なんだろうけど、半分腰を浮かせた宇山と七瀬の反応がかぶった。有川は、苦笑いしながら七瀬を抱き寄せて静観の構えだ。

「や、待って待って。別にそこまでしなくていいって」
「ほーん。それって、お前も七瀬とやりたいから? とか、お前も人のこと言えなくね?」

 宇山は俺が七瀬とやってるのを見るのが好きだ。自分と同じ七瀬の穴で、俺が気持ちよくなってることに興奮するらしい。というか、多少の違いはあってもそれは俺だって同じだし、本当はそんなの問題にする気なんてない。
 だけど、ちょっとだけ意地悪な気分になるくらいは許されてもいいと思う。俺に反撃されて、自分の言ってることが理不尽だって気付いたのか、一瞬口をつぐんだ宇山はごまかすようにそっぽを向いた。

「あー、じゃあもういいよ。仲直りH、だっけ? するんだったら早くしよ」



 先にシャワーを使わせてもらった俺と宇山は、後になった二人を待たずにベッドルームに入った。お隣さんと接しているのは有川が仕事部屋にしている一部屋だけで、ありがたいことに、ベッドルームもリビングも風呂場も音を気にする必要がない。
 天井近くに明かり取りの小窓があるだけの六畳の洋室は、ラブホ並みにでかいベッドだけでいっぱいだ。連結できるシングルベッドを二台並べた上に防水パットを敷いてあるそれは、ぱっと見はキングサイズのベッドと変わらない。エロい備品を詰め込んだサイドワゴンはリビングで健在で、この部屋で使う備品はベッド下の引き出しに収納されている。有川の本気がすごすぎて、こんなとこで七瀬が毎日ちゃんと休めてるのかどうかちょっと心配だ。

 ともあれ。その、硬めで変な跳ね返りも少ないベッドの真ん中。俺はあおむけに寝そべった宇山の股の間に陣取って、その腰から下を逆さまに抱きかかえた。尻の穴もタマの裏も丸見えだ。こんなことでこいつの機嫌が直るなら安い。リクエストに応えて初めて宇山のちんこに舌をわせると、宇山は興奮した表情かおで自分のちんこを見上げて口を開いた。

「なあ、生で男のちんこくわえて平気? 興奮する?」
「すっげー興奮する。お前の以外無理だけど」
「はー、マジで井田が俺の生ちんこくわえてる。もっとちゃんと見せて。あーエロい。何これ、エロい。すげ、見てるだけで気持ちい」
「ちょ、待て待て。笑わせんなよ。みそうになるじゃん」

 だんだん楽しくなってきて、タマをいじったり尻の穴を指でほぐしたりしながら舐め上げた。イきそうになるとこで寸止めすると、舌の上でぴくぴく跳ねるのがおもしろい。

「宇山ー、声出してー。今思ってること聞きたい」
「やだよ。お前さっき笑いそうになってたじゃん」
「わりわり。もう笑わねえって」

 俺がもう一度ちんこを深めにくわえ直すと、宇山は口元を覆っていた両手をそろそろと離して長いため息をついた。
 快楽にあらがえないだけで、本当は俺とこんな関係になって後悔してるのかもしれない。それでも、こんなに簡単に硬くなるちんこがよそじゃ役立たずとか、宇山には悪いけど嬉しくないわけがない。

「……井田」
「んー?」
「さっきさー……、いろいろ勝手言ってごめん。あと、七瀬は別腹だから」
「んー、ほへ?」

 口げんかもしたことがない俺たちは、仲直りの仕方も手探りだ。俺はちょっと怒ったふりをしただけだけど、面と向かって仲直りするのもなんだか気恥ずかしくて、ごまかすようにちんこをくわえたまま返事した。
 仲直りH便利だな。

「っはは、何それ馬鹿じゃん? 何言ってんだか分っかんねー」
「ん、宇山ぁ」

 笑って揺れる腰を逆さまに抱きしめたまま、ちんこから口を離す。宇山が後悔してるとしても、言ってもまた軽く聞き流されるとしても、俺と付き合ってくれなくても、宇山が不安にならないようにこれだけはちゃんと伝えておきたい。

「俺エロいこと大好きだけど、こんなふうに好きなのはお前だけだから」
「……もう分かったって。あー……もう、ほんと、馬鹿だよね」



 そんなことをしてるうちに七瀬と有川も風呂から出てきて、一旦フェラを中断した俺たちはベッドの奥に移動した。風呂で何やってたんだか、七瀬は既にエロい空気を垂れ流している。その七瀬が、空けた場所に座ってこっちを見たのを確認してから、俺はディルドにローションをたっぷりと塗り付けた。
 ゆっくり前後させると慣れたように宇山の中に収まっていくのは、他のお下がりとは違う、俺の初任給でプレゼントした俺型のディルドだ。型を取る時うっかり緊張したせいで実物より少し小さいけど、これは宇山のお気に入りらしい。普段は宇山が自分で大事に保管している。

「は、あ、気持ちい」
「これ押さえといて。我慢できなかったら動かしてもいいけど」
「んん、今はいい。すぐイきそう」

 俺がもう一度宇山のちんこをくわえると、それを見た七瀬が有川の腕を引いた。

「有川」
「ちょっとだけな」

 有川がヘッドボードに枕を二個積んだ所に、両膝を立てた七瀬が斜めにもたれかかる。

「ちゃんと開いて。足、自分で持てる?」
「ん」

 七瀬は言われるままに左手で膝裏を持って足を開くと、すぐ横で膝立ちになった有川のちんこを、待ち切れないように右手でつかんでくわえた。有川は風呂でボトルごとあっためてきたローションを垂らし、右手を伸ばして七瀬の尻の穴をほぐし始める。
 ゆっくり円をえがくように指を二本挿れて、中で開いてまたゆっくりと引き抜く。その動きは中をほぐすというよりは、俺たちに見せつけるためのものだ。繰り返しじらされるたび、ひくひくと動く七瀬の赤い内側がちらちらと見えた。左手では子供をあやすように七瀬の頭を撫でておきながら、有川は相変わらずやることがえぐい。

「んー、んん」

 あえぎ声とも抗議とも取れるくぐもった声と、何度もされるローションが立てる水音がエロい。ローションを中に押し込まれるタイミングで、有川の指先を迎え入れるように七瀬が自分で腰を揺する。
 いくらベッドがでかくても、四人もいたら目と鼻の先だ。こんなエロいもんを見せつけられて宇山が我慢できるわけがない。
 その宇山に場所を空け渡すため、有川は最後にゆっくりと中を撫でて、七瀬から指を引き抜いた。有川のちんこは、名残を惜しむ七瀬に離れるギリギリまで握られたまま、先端を舐められて続けてガッチガチのバッキバキだ。そういう性癖だって分かってはいても、そんな状態で俺らに先を譲る有川には毎度頭が下がる。
 ヘッドボードにもたれた有川の股ぐらに収まった七瀬が、その胸に背を預けて足を開く。有川が後ろから七瀬の両膝を抱え上げると、前に突き出された七瀬の穴がひくひくとうごめいて、そのたびに中からがローションがこぼれ出た。
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