僕は思った。

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悪魔の修理屋

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- 悪魔の修理屋 -
私はある日、ある道具を見つけた。その道具は、何でも直すことが出来た画期的な道具であった。勿論何でも。この道具に直せない物…いや、この私に直せないものはないと言っても過言ではないだろう。おや、今日も修理をお願いに来た人がいる様だ。どれ、軽く修理するとするか。

「いらっしゃい。今日は何を修理なさるおつもりで?」

「た、助けて下さい!うちの子の手足が動かなくなってしまって…これは直せるのでしょうか!?」

「落ち着いて下さい。僕に修理出来ないものはありません。足と手の修理ですね。すぐに終わらせますね。」

「そ…それは心強い!どうか息子を治してください!」

なるほど。私の推測からすると…こいつらはなかなかの金持ちの様だ、家の外にも付き添いが大勢いるな。と、さては噂を聞き付けてはるばる遠くから来た感じか…。これは中々の大物を釣り上げたな。毎度思うが…本当に簡単な仕事だ。スイッチを押してセンサーで当てるだけでみんなのヒーローになれるなんてな。前まで普通のサラリーマンをしていたし…昔は僕も何でも助けるヒーローになりたいとは思っていたが、まさかこんな形で叶うとは…。この現状が吉か凶だとしても、結果的に大吉だ。僕は満足している。

「はい。これでOKです。バッチリ治りましたよ。」

「ほ…本当にありがとうございます!良かった…本当に良かった!」

「僕も全力を尽くす事が出来て、本当に良かったです。所で金額の方ですが…私自身、奥様方の息子様の手足が治っただけで…満足でございます。お代は結構ですので、気を付けて、お帰りくださいませ。」

「…とんでもない!こちらの金額、全て頂いて下さい。元々、全て差し上げる予定の金額ですので。今回は…本当に息子の手足を直していただきありがとうございました!遠くから来た甲斐がありました。」

「こちらこそとんでもありません。よろしいんですか…?こんな大金。」

私は興奮さえしなかったが…目の前の積まれた札束の山を見て、ゴクリと唾を飲んだ。これも計算の内。元々…この大量の金額が貰える程で私は話していた。口調は変えているが、私自身は冷静であった。これから私はこの札束を何度目にするのか。考えるだけで胸が踊った。

「では、私達はこれで…」


ーーー私はこのように、依頼者が来る度、ヒーローを装って金を巻き上げていった。やがて、倉庫に敷き詰まった札束を眺める自分に飽き飽きしていた。どうにか、修理を任せるロボットのようなものが欲しい。私が修理屋を辞めるとなると、立場が危ういし…仮に他の人を雇っても、トラブルが生まれるだけだ。僕の言った通りに、忠実に事をこなすロボットはいないのだろうか…。

「すいませーん…ここでは百万円分の修理費を用意さえすれば、何でも治して頂けると聞いたのですが。」

ちっ、客か。そろそろ修理費を上げようか。貧乏人からの依頼は無くなったとはいえ、まだまだ依頼は途絶えない。そろそろ私自信も限界だ…。次からは、一千万だな。

「はい、そうですよ。どうぞ、お入り下さい。今日は何を修理なさいますか?」

「この、僕が開発している人口知能を搭載しているロボットなのですが…少しばかり故障してしまって。どうにか修理できないかとここを訪ねて来ました。」

これだ。きた!このロボットさえあれば…。奪おう…殺そう。ここには客が暴動を起こした時用に、椅子に罠を仕掛けておいてあるのだ。まさかこんな時に役に立つとは。

___そして僕は椅子に仕掛けておいた電気ショックで依頼者を動けなくさせ、首をはねた。死体の処理と掃除は大金を払って他の人を雇い、済ませたのち隠蔽する事にした。仕方ない。こんな奴の命より、何人もの命を救う事になるヒーローの方が大切だろう。私はそう考えると、人を殺した事による罪悪感などは丸一切なかった。そんな事より本題に入ろうか…このロボットを使って運用していく事によって……フフフ。今までにない興奮であった。ロボットをセンサーに掛け、一息ついた後、僕はロボットにこう伝えた。

「良いかい、今日から君はこの機械を使って色々な物を修理するのだ。ここのボタンを押してスキャンするだけだ。壊れているものは、君が見て判断してくれ。君は人工知能ロボットだ。それぐらい簡単だよな?依頼者はこの部屋に入って来るから、取り敢えずお代はいくらでも良いから貰えるだけ貰っとけ。ああ!面倒くさい。取り敢えず、私は一眠りする。詳しくは私が起きてから説明するから!頼んだぞ。」

そう行って私は無造作に道具を持たせ、倉庫へ行き札束の壁を眺めた後、ベッドへ潜り込んだ。明日からの事でウキウキしていたが、取り敢えず。沈めるために。


一眠り___


目が覚めた。朝。今日もいつもと変わらず、出勤か。僕は布団から出たのち、背伸びしながら何食わぬ顔で階段を降りた。

「シュウリシテオキマシタ」

「う、うわあ!な、何だこれは…ロ…ロボット?き…気味が悪い!」

私は突然現れた身に覚えのないロボットに、無意識に手足が出た。気が付けばロボットは動かなくなっていた。な…なんなんだこれは。両手には何も持っていない。私を殺そうとしていたわけではなさそうだ…。…ん?

なんだか、家の外が騒がしい。け、喧嘩でもあったのか?私はロボットを引きずりながら、窓から外を眺めた。



私は、何が何だか分からない光景に腰を抜かした___
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