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第7話 居場所
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「遥輝、ご飯食べに行こうぜ。」
「お…おう。」
十紋字はいつものようにニコッと笑い、迷いなく遥輝の肩に手を置く。そのまま、まるで当然のことのように彼をリビングへと連れて行った。
俺は、ただそれを見ていることしかできなかった。
——あの頃なら、隣にいるのは俺だったのに。
何気ない日常のはずなのに、何もかもが変わってしまった。
十紋字が現れてから、俺の居場所は少しずつ、だけど確実に奪われていく。
目の前の光景が、まるで別の世界の出来事みたいに思えて、胸が締めつけられた。
俺は拳をぎゅっと握りしめた。
何も言えない自分が情けなくて、悔しくて、だけどどうすることもできなくて。
「……遥輝」
その名前を呼ぶことすら、最近は躊躇うようになってしまった。
昔みたいに気軽に肩を組んだり、笑いながらじゃれ合ったりすることもできなくなった。
十紋字が当たり前みたいに隣にいるせいで、俺の立ち位置はどんどん遠のいていく。
リビングの方から遥輝の楽しそうな笑い声が聞こえた。
その声を聞くだけで胸が苦しくなる。
(俺だって、あいつの隣にいたいのに)
そんなこと、言えるはずがなかった。
——ずっと一緒にいるのが当然だったのに。
どうして、俺じゃダメなんだよ。
その夜、俺は壁越しに聞こえてくる遥輝の声に、そっと耳を塞いだ。
『お前はやっぱり可愛いな。』
『いきなりなんだよっ!?』
『遥輝はすげぇ可愛いって話だよ。』
『……変なの。』
楽しそうな笑い声が壁越しに聞こえてくる。
俺は布団の中でじっと息を殺した。
心臓が嫌な音を立てて鳴っている。
(何なんだよ、それ……)
遥輝の笑い声。
十紋字の低く甘やかな声。
二人だけの空間がそこにあるようで、たまらなく疎外感を覚える。
遥輝の声に混じる微かな恥じらい、くすぐったそうな笑い方——
俺だけが知っていたはずのものが、今は十紋字の言葉に引き出されている。
『十紋字はさ、昔からそういうこと平気で言うの?』
『んー? どうかな。でも、遥輝には言いたくなるんだよな。』
(……ふざけんなよ)
枕を握りしめる手に力が入る。
自分でも驚くほどの嫉妬が胸を焼いた。
何でそんなことを言うんだ。
何で遥輝は笑ってるんだ。
俺の隣にいた頃は、そんな顔、俺にしか見せなかったのに。
ギリ、と歯を食いしばる。
耳を塞いでも、遥輝の声が心の奥にまで響いてくる。
『…もう、そういうのやめろよ。なんか恥ずかしいし。』
『恥ずかしがる遥輝も可愛いけどな。』
『っ……!』
(ふざけんな、遥輝……! そんな声、俺の前では出さなかったくせに……)
どうしようもない嫉妬が胸の奥で渦巻く。
どうしようもない焦燥感が、俺の中で膨れ上がっていく。
——俺の遥輝を、取らないでくれ。
喉の奥でせり上がる言葉を、俺はただ、飲み込むことしかできなかった。
「お…おう。」
十紋字はいつものようにニコッと笑い、迷いなく遥輝の肩に手を置く。そのまま、まるで当然のことのように彼をリビングへと連れて行った。
俺は、ただそれを見ていることしかできなかった。
——あの頃なら、隣にいるのは俺だったのに。
何気ない日常のはずなのに、何もかもが変わってしまった。
十紋字が現れてから、俺の居場所は少しずつ、だけど確実に奪われていく。
目の前の光景が、まるで別の世界の出来事みたいに思えて、胸が締めつけられた。
俺は拳をぎゅっと握りしめた。
何も言えない自分が情けなくて、悔しくて、だけどどうすることもできなくて。
「……遥輝」
その名前を呼ぶことすら、最近は躊躇うようになってしまった。
昔みたいに気軽に肩を組んだり、笑いながらじゃれ合ったりすることもできなくなった。
十紋字が当たり前みたいに隣にいるせいで、俺の立ち位置はどんどん遠のいていく。
リビングの方から遥輝の楽しそうな笑い声が聞こえた。
その声を聞くだけで胸が苦しくなる。
(俺だって、あいつの隣にいたいのに)
そんなこと、言えるはずがなかった。
——ずっと一緒にいるのが当然だったのに。
どうして、俺じゃダメなんだよ。
その夜、俺は壁越しに聞こえてくる遥輝の声に、そっと耳を塞いだ。
『お前はやっぱり可愛いな。』
『いきなりなんだよっ!?』
『遥輝はすげぇ可愛いって話だよ。』
『……変なの。』
楽しそうな笑い声が壁越しに聞こえてくる。
俺は布団の中でじっと息を殺した。
心臓が嫌な音を立てて鳴っている。
(何なんだよ、それ……)
遥輝の笑い声。
十紋字の低く甘やかな声。
二人だけの空間がそこにあるようで、たまらなく疎外感を覚える。
遥輝の声に混じる微かな恥じらい、くすぐったそうな笑い方——
俺だけが知っていたはずのものが、今は十紋字の言葉に引き出されている。
『十紋字はさ、昔からそういうこと平気で言うの?』
『んー? どうかな。でも、遥輝には言いたくなるんだよな。』
(……ふざけんなよ)
枕を握りしめる手に力が入る。
自分でも驚くほどの嫉妬が胸を焼いた。
何でそんなことを言うんだ。
何で遥輝は笑ってるんだ。
俺の隣にいた頃は、そんな顔、俺にしか見せなかったのに。
ギリ、と歯を食いしばる。
耳を塞いでも、遥輝の声が心の奥にまで響いてくる。
『…もう、そういうのやめろよ。なんか恥ずかしいし。』
『恥ずかしがる遥輝も可愛いけどな。』
『っ……!』
(ふざけんな、遥輝……! そんな声、俺の前では出さなかったくせに……)
どうしようもない嫉妬が胸の奥で渦巻く。
どうしようもない焦燥感が、俺の中で膨れ上がっていく。
——俺の遥輝を、取らないでくれ。
喉の奥でせり上がる言葉を、俺はただ、飲み込むことしかできなかった。
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