<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

文字の大きさ
上 下
745 / 1,014
喪失

しおりを挟む
 家に帰ってきてからも、とても眠る気にはなれなかった。

 大樹の言葉が耳に残っていたせいもある。

 美姫は大地が住んでいる間にここを訪れたことはなかったが、大和にとっては兄との思い出が溢れる場所だ。それを思うと、美姫は居た堪れない気持ちになった。

 それでも少しでも躰を休ませるため、ふたりはベッドに横たわった。

 美姫はベッドの中で、大和を抱き締めていた。ずっと震えが止まらない。

 大和がボソッと呟いた。

「美姫......俺、おまえがいなかったら発狂してたかもしれない。
 おまえがいてくれて、本当によかった......ありがとな」

 大和の言葉が、重い岩のように美姫にのしかかる。この先何があろうとも、この人の傍を離れることは出来ないと思った。

 たとえ、秀一さんのことが心配で堪らなくても……

 美姫は黙ったまま、大和を抱く腕に力を込めた。秀一への断ち切れない想いを掻き消すように……    
 
 美姫は、秀一に会いに行こうとしていたことは一生言うまいと心に決めた。もうこれ以上、大和を傷つけるようなことはしたくなかった。

 大和を抱き締め、頭を撫でているうちに、美姫は長い緊張状態が続いた疲労が限界に達し、眠気が襲ってきた。うつらうつらしながら現実と浅い眠りを行きつ戻りつしていると、それまでずっと黙っていた大和が小さく呟いた。

「......やっぱり、だい兄が自殺なんて、ありえねぇ」

 その声には、疑問は含まれておらず、確信をもって発されていた。

 大和の言葉で、美姫の夢現つだった頭が痺れたように冷えた。

 美姫も心の中では大地の自殺に疑問をもっていたが、

 自殺でなければ、誰が大地を殺したのか......

 考えるのが恐ろしく、その先へと進めなかった。

 大瀧詠十郎は現参議院議員であるだけでなく、過去に衆議院議員から内閣官房副長官や国務大臣、外務大臣を務め、内閣総理大臣にまで上り詰めた、政界のドンとも呼ばれる存在だ。しかも、大和と美姫は披露宴にて媒酌人にもなってもらっている。

 美姫だけでなく、大和もそれは十分承知していた。

 そんな人物を疑っていいのかという思いと、大地の不審な自殺の真相を知りたいという思いが大和の中でひしめき合っていた。

「なぁ、美姫。やっぱり俺......だい兄が死んだ理由を知りたい。
 このままじゃ、納得できねぇ......」

 大地は兄ではあったが、年が離れているせいもあり、大和にとって父親的存在でもあった。

 幼い頃から父母に放って置かれていた大和は、大地の深い愛情によって育てられたといっても過言ではない。学校行事に参加してくれたのも、殆ど大地だった。

 大地、大樹と3人、兄弟でいる時間が、大和にとっては家族の時間だった。

 いつも優しく、穏やかで、面倒見が良く、自分のことよりも他人の幸せを考えてくれていた大地。美姫との婚約の時も大樹と一緒になって親を説得できるようにプランを練ってくれ、二人の住む家を与え、婚姻届の証人にもなってくれた。美姫の心理カウンセラーを紹介してくれたのも、大地だった。
 
 大地がいたからこそ、今の自分があるのだ。
 そんな大地がもし誰かの陰謀で殺されたのだとしたら......絶対に、許せない。

 自分がこの手で犯人を暴いてやりたい。

 そんな思いが、大和の胸奥からふつふつと沸いていた。

 美姫は、大和がそう言うだろうことは分かっていた。昔から正義感が強く、曲がった事が嫌いな大和が、大切な兄である大地の不審な死に目を瞑ることなどないだろうと。

 美姫は大和の後押しをしてあげたいという気持ちもありつつ、大地の死の背後に隠れている大きな陰謀の渦に立ち向かえるのかという不安も抱いていた。

 大地お兄さんのことはショックだったし、自殺だってことも納得できないけど、真相を追求して大和が危険な目にあったらと思うと恐くて仕方ない。

 それに......大樹お兄さんのあの時の言葉も気になるし。

 大樹は、大和と美姫に大地が大瀧詠十郎を地検に告訴するつもりだったことを打ち明けた後、それを暴露してしまったことに動揺し、『だい兄は、自殺だった』と、自分が言ったことを否定するかのように言葉を重ねた。それが、事の大きさを物語っていた。

 美姫は、大和が動く前に、どうか事の真相を警察が暴いてくれるよう祈った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

義妹のミルク

笹椰かな
恋愛
※男性向けの内容です。女性が読むと不快になる可能性がありますのでご注意ください。 母乳フェチの男が義妹のミルクを飲むだけの話。 普段から母乳が出て、さらには性的に興奮すると母乳を噴き出す女の子がヒロインです。 本番はありません。両片想い設定です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...