739 / 1,014
裏切り
2
しおりを挟む
小さく呟いた美姫に、レナードが振り向いた。
『早く乗れ!』
『ごめん......レナード。
私、行けないよ......』
大和を裏切ることなんて、出来ない。
もうあの人を、悲しませたくない。
『はぁ!? 何言ってんだ!
シューイチを救えるのはあんたしかいないって言っただろ?
あんたが来なきゃ、シューイチはどうなるんだ!!』
レナードが美姫に食ってかかるように迫った。
美姫は顔を歪め、苦しそうに言葉を紡いだ。
『ごめん。本当に...... ごめんなさい。
でも、私は秀一さんに会えない。
レナード、どうか秀一さんを救って。無理やりにでもあの島から連れ出して。
彼を......お願い、しますッグ』
『ふざけんなっ!』
レナードが掴みかかろうとすると、がたいのいい男性のキャビンアテンダントがレナードの腕を取った。
『お客様、離陸時間が迫っております』
美姫は、キャビンアテンダントに頭を下げた。
『私は乗りませんので、離陸の準備を始めて下さい。
ご迷惑をお掛けし、大変申し訳ありませんでした』
レナードが美姫に怒声を上げる。
『ミキ! あんた、シューイチのことが好きじゃなかったのかよ!
あんなボロボロのシューイチを見捨てるつもりなのか!?
シューイチは......シューイチは、あんたが必要なんだぞ!!!』
美姫は肩を大きく震わせた。
『ごめん、レナード。
しゅ......ッグ秀一さんを、どうか......お願い、しますっ』
その場にいるのが耐えられなくなり、美姫はボーディングブリッジを搭乗口に向かって駆け出した。
『ミキーーー!
ミキーーーーー!!!』
背中から追いかけてくるレナードの声から逃れるように、美姫は後ろを振り向かず走り続けた。
空港からタクシーに乗り、自宅に向かう車中で美姫は声を上げて泣いた。その背中には、秀一と大和、二人への大きな後悔と罪悪感がのしかかっていた。
秀一に会いに行かなかったことを、彼を救えなかったことを、美姫は一生後悔し続けるだろうと思った。自分が行かなかったことで、今後秀一はどうなってしまうのかと考えると胸が鋭く刺されたように痛み、ジンジンする。
けれど、秀一の元に行き、彼を島から連れ出したところで、また二人は世間から身を隠し、禁断の関係を続けることになるだけだ。
ようやく逃れられた負のスパイラルに、自らその身を投げ込むことになってしまう。
もう、過ちは繰り返さない。
たとえ、秀一さんのことが忘れられなくても。
彼のことが心配で堪らなくても......
私はもう、彼に関わってはいけないんだ。
私はバカだ。
ただ、感情だけで先走ってしまおうとしてた。
今のこの生活は、私が望んで得たものだったのに。
捨てられるわけない。
大和をもう裏切らないと誓ったのは誰だったの?
ふたりで幸せな未来を歩むんだって、固く誓ったのに。
財閥を救いたいと、もうお父様やお母様に辛い思いをさせないと、これからは少しでも親孝行するんだって、そう決意したのに。
私は、何もかも投げ捨てようとしていた。
大和、ごめん。
ごめんなさい......
『早く乗れ!』
『ごめん......レナード。
私、行けないよ......』
大和を裏切ることなんて、出来ない。
もうあの人を、悲しませたくない。
『はぁ!? 何言ってんだ!
シューイチを救えるのはあんたしかいないって言っただろ?
あんたが来なきゃ、シューイチはどうなるんだ!!』
レナードが美姫に食ってかかるように迫った。
美姫は顔を歪め、苦しそうに言葉を紡いだ。
『ごめん。本当に...... ごめんなさい。
でも、私は秀一さんに会えない。
レナード、どうか秀一さんを救って。無理やりにでもあの島から連れ出して。
彼を......お願い、しますッグ』
『ふざけんなっ!』
レナードが掴みかかろうとすると、がたいのいい男性のキャビンアテンダントがレナードの腕を取った。
『お客様、離陸時間が迫っております』
美姫は、キャビンアテンダントに頭を下げた。
『私は乗りませんので、離陸の準備を始めて下さい。
ご迷惑をお掛けし、大変申し訳ありませんでした』
レナードが美姫に怒声を上げる。
『ミキ! あんた、シューイチのことが好きじゃなかったのかよ!
あんなボロボロのシューイチを見捨てるつもりなのか!?
シューイチは......シューイチは、あんたが必要なんだぞ!!!』
美姫は肩を大きく震わせた。
『ごめん、レナード。
しゅ......ッグ秀一さんを、どうか......お願い、しますっ』
その場にいるのが耐えられなくなり、美姫はボーディングブリッジを搭乗口に向かって駆け出した。
『ミキーーー!
ミキーーーーー!!!』
背中から追いかけてくるレナードの声から逃れるように、美姫は後ろを振り向かず走り続けた。
空港からタクシーに乗り、自宅に向かう車中で美姫は声を上げて泣いた。その背中には、秀一と大和、二人への大きな後悔と罪悪感がのしかかっていた。
秀一に会いに行かなかったことを、彼を救えなかったことを、美姫は一生後悔し続けるだろうと思った。自分が行かなかったことで、今後秀一はどうなってしまうのかと考えると胸が鋭く刺されたように痛み、ジンジンする。
けれど、秀一の元に行き、彼を島から連れ出したところで、また二人は世間から身を隠し、禁断の関係を続けることになるだけだ。
ようやく逃れられた負のスパイラルに、自らその身を投げ込むことになってしまう。
もう、過ちは繰り返さない。
たとえ、秀一さんのことが忘れられなくても。
彼のことが心配で堪らなくても......
私はもう、彼に関わってはいけないんだ。
私はバカだ。
ただ、感情だけで先走ってしまおうとしてた。
今のこの生活は、私が望んで得たものだったのに。
捨てられるわけない。
大和をもう裏切らないと誓ったのは誰だったの?
ふたりで幸せな未来を歩むんだって、固く誓ったのに。
財閥を救いたいと、もうお父様やお母様に辛い思いをさせないと、これからは少しでも親孝行するんだって、そう決意したのに。
私は、何もかも投げ捨てようとしていた。
大和、ごめん。
ごめんなさい......
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
義妹のミルク
笹椰かな
恋愛
※男性向けの内容です。女性が読むと不快になる可能性がありますのでご注意ください。
母乳フェチの男が義妹のミルクを飲むだけの話。
普段から母乳が出て、さらには性的に興奮すると母乳を噴き出す女の子がヒロインです。
本番はありません。両片想い設定です。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる