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暴かれる過去
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誠一郎を追い詰めているはずの秀一にも、彼の言葉はショックだったようだ。
「兄、様……」
「幸せ、だった。
凛子と結婚して。美姫が、生まれて。愛する妻と娘に囲まれて……
ようやく、望んでいた温かな家庭を得ることが出来たんだ。よう、やく……ック」
そう呟いた誠一郎の声が掠れ、嗚咽に飲み込まれた。
暫くの沈黙の後、誠一郎が再び口を開いた。
「お前とも……美姫が生まれてから蟠わだかまりがなくなり、実の兄弟のようになれたと感じていたというのに。
ずっと私は、お前に対して負い目を感じていた。私に救いを、癒しを求めていたお前に……それを、与えられなかったことを。私のエゴで、お前から父親を奪ってしまったことを。
私は、お前が美姫の存在によって少しずつ癒され、心を通わせ合う様子を見て、嬉しかった。美姫が私たちの架け橋となって、以前のような兄弟の関係に戻ることが出来たと感じていたのだ。
若くして来栖財閥を受け継いだ私は、親族や重役たちから無言の重圧をかけられていた。そんな彼らに文句を言わせぬ程に来栖財閥を大きくする為、私は身を粉にして働き、海外を飛び回る生活を余儀なくされていた。そんな中、私がお前に美姫の世話を頼んだのは、お前が美姫を姪として可愛がり、そして自らも癒されていることを感じて、信用していたからだ。
……ック……決して、お前たちを、恋仲にするためなどでは、ない……」
誠一郎がギリッと歯噛みする。
「美姫。あれは、素直で純粋な娘だ。小さい頃からお前に懐いていた。お前を慕う、その気持ちを……ただ、愛情と掛け違えているだけなんだ。
ッグお前から言ってやってくれ。頼む……ウゥッ美姫には、美姫にだけは……普通の、ヒグッ……幸せを、与えてやりたいんだ。頼……ヴッ。ッフゥ他には、どんなことでもする。金でも地位でも、名誉でも……ッハァ……お前が望むことなら、なんでもするから……ウゥゥッ。
秀、一ぃぃ……頼む、頼むぅ。たの……ッグ」
必死の誠一郎の懇願に、美姫の胸が締め付けられ、きつく絞られる。溢れる涙は止とどまることなど知らぬかのように、次から次へと流れてくる。
お父様の愛情が……痛い。胸を引き裂かれる。
私は、なんて親不孝な娘なんだろう。お父様は、こんなにも私のことを愛し、大切にしてくれているのに。
両親の愛情に応えるには、秀一さんとは別れなければならない。
秀一さんとの愛情を貫くなら、両親とは……縁を切ることになるだろう。
秀一さんと恋人になる時に、両親を裏切ることは分かっていたはずなのに、ここに来てもまだ、どちらも失いたくないと思ってしまう。とりわけ、お父様の辛い過去を聞き、秀一さんへの愛憎を知ってしまった今となっては、尚更。お母様とお祖父様との関係を知り、どうやってお父様と恋愛関係に至り、結婚したのかを思い至ってしまったら……
お父様とお母様の愛情の証として生まれてきたはずの私が、ふたりを裏切って叔父である秀一さんとの禁忌の愛に溺れるなんて、どれだけ辛いことだろうと、考えずにはいられない。
どうしたら……どうしたら、いいの。
「兄、様……」
「幸せ、だった。
凛子と結婚して。美姫が、生まれて。愛する妻と娘に囲まれて……
ようやく、望んでいた温かな家庭を得ることが出来たんだ。よう、やく……ック」
そう呟いた誠一郎の声が掠れ、嗚咽に飲み込まれた。
暫くの沈黙の後、誠一郎が再び口を開いた。
「お前とも……美姫が生まれてから蟠わだかまりがなくなり、実の兄弟のようになれたと感じていたというのに。
ずっと私は、お前に対して負い目を感じていた。私に救いを、癒しを求めていたお前に……それを、与えられなかったことを。私のエゴで、お前から父親を奪ってしまったことを。
私は、お前が美姫の存在によって少しずつ癒され、心を通わせ合う様子を見て、嬉しかった。美姫が私たちの架け橋となって、以前のような兄弟の関係に戻ることが出来たと感じていたのだ。
若くして来栖財閥を受け継いだ私は、親族や重役たちから無言の重圧をかけられていた。そんな彼らに文句を言わせぬ程に来栖財閥を大きくする為、私は身を粉にして働き、海外を飛び回る生活を余儀なくされていた。そんな中、私がお前に美姫の世話を頼んだのは、お前が美姫を姪として可愛がり、そして自らも癒されていることを感じて、信用していたからだ。
……ック……決して、お前たちを、恋仲にするためなどでは、ない……」
誠一郎がギリッと歯噛みする。
「美姫。あれは、素直で純粋な娘だ。小さい頃からお前に懐いていた。お前を慕う、その気持ちを……ただ、愛情と掛け違えているだけなんだ。
ッグお前から言ってやってくれ。頼む……ウゥッ美姫には、美姫にだけは……普通の、ヒグッ……幸せを、与えてやりたいんだ。頼……ヴッ。ッフゥ他には、どんなことでもする。金でも地位でも、名誉でも……ッハァ……お前が望むことなら、なんでもするから……ウゥゥッ。
秀、一ぃぃ……頼む、頼むぅ。たの……ッグ」
必死の誠一郎の懇願に、美姫の胸が締め付けられ、きつく絞られる。溢れる涙は止とどまることなど知らぬかのように、次から次へと流れてくる。
お父様の愛情が……痛い。胸を引き裂かれる。
私は、なんて親不孝な娘なんだろう。お父様は、こんなにも私のことを愛し、大切にしてくれているのに。
両親の愛情に応えるには、秀一さんとは別れなければならない。
秀一さんとの愛情を貫くなら、両親とは……縁を切ることになるだろう。
秀一さんと恋人になる時に、両親を裏切ることは分かっていたはずなのに、ここに来てもまだ、どちらも失いたくないと思ってしまう。とりわけ、お父様の辛い過去を聞き、秀一さんへの愛憎を知ってしまった今となっては、尚更。お母様とお祖父様との関係を知り、どうやってお父様と恋愛関係に至り、結婚したのかを思い至ってしまったら……
お父様とお母様の愛情の証として生まれてきたはずの私が、ふたりを裏切って叔父である秀一さんとの禁忌の愛に溺れるなんて、どれだけ辛いことだろうと、考えずにはいられない。
どうしたら……どうしたら、いいの。
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