チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

文字の大きさ
33 / 72
第六章 幼馴染の関係

しおりを挟む
 翌日は1人を除いたメンバーにて、二回目の実践練習が行われた。抜けたメンバーの穴埋めとして由美子が練習に加わる。初めての練習の時よりは、いくらかマシになったものの、圧倒的に練習量が足りないことを痛感する。実践練習以外でも課外授業が終わった後で来られるメンバーで集まり、理論を勉強したり、ビデオを見て参考にしたり、ボート部の器具を借りてトレーニングしたりした。

 そして三回目の実践練習となる今日。この日は全員揃って練習できる最後の日でもある。昨日で前半の課外授業が終了し、今日は中学生の一日体験入学だったため、それに関わっていない私は家でのんびりした。その後、郁美のお母さんに車で迎えに来てもらい、郁美と一緒に菱刈カヌー競技場へと向かう。

「勇気くんは?」

 近所に住んでるのに、勇気くんが乗っていないので不思議に思って郁美に尋ねた。

「あぁ、勇気はぁ中学生の体験入学の手伝い行っとるがよ」

 早めに着いたせいか、まだ誰も来ていなかった。今日は家から来て着替えをする必要もなかったので、ぶらぶらと更衣室の前を歩きながら郁美ととりとめのない会話をして時間を潰していた。

 突然、郁美が悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ねっ、ねっ、美和子。男子更衣室に隠れて、男衆《おとこんし》ビックリさせよっか」
「え。えぇっ!! 男子更衣室って……」
「大丈夫、大丈夫。入ったらすぐに『わっ!!』って出てこればええがよ」

 郁美に強引に腕を組まれ、男子更衣室に引きずり込まれた。

 「ここ、ここ!!」

 郁美はシャワーカーテンを開けると、私を中に引き入れる。

「ちょっ、絶対バレるって!!」

 そう言った途端、外から話し声が聞こえてきて、私たちは慌ててカーテンを閉めた。

 ど、どうしよう……

 郁美はカーテンの僅かな隙間から更衣室の様子を窺っている。シャワールームはみんなが着替えるであろう場所からは死角になっているため、飛び出さない限りは中に人がいるなんて分からないけど、もしお手洗いを使う人がいたらこっちに来ることになるので、下から覗く2人分の足と水音がしないことに不審に思われるかもしれない。

「ドアが開いたら、あたしが『せーの』って言うから、二人で『わっ!』って飛び出すね」

 郁美の計画を聞き、不安でドキドキしながらも悪戯を楽しむ気持ちも湧いてきた。ガチャッとドアノブの音がして、飛び出す準備をする。

「せー……」
「勇気はぁ、郁美のことどう思っとるがよ?」

 郁美の「の」は、前田くんの言葉によって遮られた。

「幼馴染ぃ言うて、ほんとは付きおうとるんじゃろ? 白状するが!」

 吉元くんの声も聞こえて来る。すると、海くんはガハハ……と豪快に笑った。

「郁美ぃなんか、女と思っとらんが! 鼻水垂らしたり、おねしょしたのも知っとるで、好きとか付きおういう気持ちになんてならんが!」

 勇気くんの言葉を聞き、郁美は「あたしだってそんな気持ちにならんね!」とか「あんたたち、何あたしのこと勝手に話しとるが!」とか、そんな反応が返ってくるかと予想してた。

 けど、郁美の横顔を見てハッとする。



 ーー彼女の目尻からは、涙が流れていたから。 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...