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第五章 初の実践練習
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今日が初日のボート練習日であり、メンバー全員揃っての貴重な練習日ともなるので、気合いが入る。
準備運動を終えて艇の船尾に乗り込むと、備え付けてある太鼓を脚でしっかりと挟み、上体を支えた。艇をまずはレース開始の位置まで漕がないといけないんだけど、それでもう躓いた。原則、艇は右側通行で旋回しないといけないのに、みんなの動きがバラバラでなかなかスムーズに進まない。艇が大きく揺さぶられ、思わず太鼓を両手で掴んだ。まだ、パドルをどう漕げば艇がどう動くのかという感覚が身についてない。下手したら、転覆する恐れもある。
「本田、中村は前の漕手の動きを見て、真似して! 勇気は一人力が入りすぎ!」
舵を操る海くんが、指示を出す。私もチームを引っ張る担い手である鼓手なのに、そこまで声を掛けることが出来ずにどうしても躊躇ってしまう。
ようやく艇がレース位置に着いた。本来ならスターターが声がけするんだけど、今日は監視役の松元先生が拡声器を使って声を掛けてくれることになった。いさドラゴンカップでは、「パドルを上げー」の掛け声で構えの姿勢を取り、「Ready……Go!」の合図で漕ぎ始める。この時漕手はパドルを水面上に上げて待たなくてはならない。大会によってルールが変わるので、ややこしい。
今まで陸上では何度も練習をしていたけど、水上では初めてなので、みんな緊張していた。
「パドルを上げー」
「みんな、構えてー!」
その合図で漕手がグッとパドルを持ち上げる。これだけでも、結構大変だ。
「レデー」
松元先生の酷い発音に吹きそうになるものの、なんとか堪えた。
「ゴォ!」
「Go!」
松元先生のタイミングと少しずれてしまった。理想は、スターターと同時にGoサインを出すことだ。船尾から海くんの「ゴー!」も聞こえてきた。
太鼓を叩きながら、声をかける。
「いーーーーち、にーーーー、さーーーーん」
艇が止まっている状態から動かすのは大変だ。最初はゆっくり大きく動かすように指示を出す。今までカウントは英語だったので、日本語での指示出しに違和感を感じて慣れない。さすがに勇気くんや郁美は身体を使って前から大きく長く、後ろまでしっかりと漕いでいるけど、他の6人は漕ぎが狭くて浅いので、まだ加速が十分つかない。
「全然加速ついてない! もっと深く大きく漕いで!!」
船尾の海くんと視界が合う。鼓手は後ろ向きに座るので、進行方向が見えない。そのため、ただ一人全体を見渡せる舵取りとのアイコンタクトが重要なのだ。
きっと、もっと加速をつけさせろって意味だよね……
パドラーに加速をつけさせる為、さっきよりもピッチを早める。
「いーーち、にーー、いーーち、にーー……」
リズムが揃っているパドラーの描く水紋は見惚れるほどに美しい。けれど、私たちのチームは余計なところに力が入り、バシャバシャと波音を立て、乱れた水紋が散っていた。
後半に入り、ピッチを変える。
「いちっ! いちっ! いちっ!」
みんな疲れが出てきたのか、顔が俯いてる。
「前見てー!」
カウントの合間に声を掛けると、勇気くんや郁美は顔を上げるものの、私の声が小さいのか、漕ぐのに夢中なのか、他のメンバーは下を向いたままだ。他の人のパドルの動きも見えていないのか、まだリズムが全然揃わない。舵を大きく漕ぐ海くんが視界に映る。
「ゴールまであと少しだ! 力を入れて焦げー!!」
大きな声が響き、それに続いて私も声を出す。太鼓を叩く手に力が入る。
「ラストーせーの! いちっ! にっ! さんっ! 合わせてー!!」
ようやくゴールを切り、漕手たちが肩を揺らす中、「ありがとう」と声を掛けた。ようやくみんなが顔を上げ、安心した笑顔を見せた。
準備運動を終えて艇の船尾に乗り込むと、備え付けてある太鼓を脚でしっかりと挟み、上体を支えた。艇をまずはレース開始の位置まで漕がないといけないんだけど、それでもう躓いた。原則、艇は右側通行で旋回しないといけないのに、みんなの動きがバラバラでなかなかスムーズに進まない。艇が大きく揺さぶられ、思わず太鼓を両手で掴んだ。まだ、パドルをどう漕げば艇がどう動くのかという感覚が身についてない。下手したら、転覆する恐れもある。
「本田、中村は前の漕手の動きを見て、真似して! 勇気は一人力が入りすぎ!」
舵を操る海くんが、指示を出す。私もチームを引っ張る担い手である鼓手なのに、そこまで声を掛けることが出来ずにどうしても躊躇ってしまう。
ようやく艇がレース位置に着いた。本来ならスターターが声がけするんだけど、今日は監視役の松元先生が拡声器を使って声を掛けてくれることになった。いさドラゴンカップでは、「パドルを上げー」の掛け声で構えの姿勢を取り、「Ready……Go!」の合図で漕ぎ始める。この時漕手はパドルを水面上に上げて待たなくてはならない。大会によってルールが変わるので、ややこしい。
今まで陸上では何度も練習をしていたけど、水上では初めてなので、みんな緊張していた。
「パドルを上げー」
「みんな、構えてー!」
その合図で漕手がグッとパドルを持ち上げる。これだけでも、結構大変だ。
「レデー」
松元先生の酷い発音に吹きそうになるものの、なんとか堪えた。
「ゴォ!」
「Go!」
松元先生のタイミングと少しずれてしまった。理想は、スターターと同時にGoサインを出すことだ。船尾から海くんの「ゴー!」も聞こえてきた。
太鼓を叩きながら、声をかける。
「いーーーーち、にーーーー、さーーーーん」
艇が止まっている状態から動かすのは大変だ。最初はゆっくり大きく動かすように指示を出す。今までカウントは英語だったので、日本語での指示出しに違和感を感じて慣れない。さすがに勇気くんや郁美は身体を使って前から大きく長く、後ろまでしっかりと漕いでいるけど、他の6人は漕ぎが狭くて浅いので、まだ加速が十分つかない。
「全然加速ついてない! もっと深く大きく漕いで!!」
船尾の海くんと視界が合う。鼓手は後ろ向きに座るので、進行方向が見えない。そのため、ただ一人全体を見渡せる舵取りとのアイコンタクトが重要なのだ。
きっと、もっと加速をつけさせろって意味だよね……
パドラーに加速をつけさせる為、さっきよりもピッチを早める。
「いーーち、にーー、いーーち、にーー……」
リズムが揃っているパドラーの描く水紋は見惚れるほどに美しい。けれど、私たちのチームは余計なところに力が入り、バシャバシャと波音を立て、乱れた水紋が散っていた。
後半に入り、ピッチを変える。
「いちっ! いちっ! いちっ!」
みんな疲れが出てきたのか、顔が俯いてる。
「前見てー!」
カウントの合間に声を掛けると、勇気くんや郁美は顔を上げるものの、私の声が小さいのか、漕ぐのに夢中なのか、他のメンバーは下を向いたままだ。他の人のパドルの動きも見えていないのか、まだリズムが全然揃わない。舵を大きく漕ぐ海くんが視界に映る。
「ゴールまであと少しだ! 力を入れて焦げー!!」
大きな声が響き、それに続いて私も声を出す。太鼓を叩く手に力が入る。
「ラストーせーの! いちっ! にっ! さんっ! 合わせてー!!」
ようやくゴールを切り、漕手たちが肩を揺らす中、「ありがとう」と声を掛けた。ようやくみんなが顔を上げ、安心した笑顔を見せた。
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