15 / 72
第三章 文化祭
6
しおりを挟む
目の前には、1年1組がやってるお化け屋敷の看板があった。海くんはさっきまでの大人っぽい表情を崩し、悪戯っぽく笑った。
「2組のスタンプラリーはさすがに時間かかりそうだから無理だけど、お化け屋敷ぐらいなら入れるだろ?」
「え、でも……」
お化け屋敷とか、めっちゃ苦手なんですけど……
躊躇してる間もなく、海くんは強引に私を連れて入ってしまった。
まぁ、お化け屋敷って言ってもクラスの出し物だし、そこまで凝ったことは出来ないから大丈夫だよね……
そう思いながら進んだ途端、
「ウギャーッッ!!」
いきなり井戸から出てきたお化けの人形にビックリして、奇声をあげていた。
「ププッ……鈴木さん、顔に似合わず豪快な驚き方だね」
「だ、だって……いきなりでほんとにビックリしたんだもん」
まだ海くんの肩が揺れている。ふれあいセンターの時にも思ったけど、案外、笑い上戸なのかもしれない。そんな海くんだって、顔に似合わず、だよ。
ビビりまくる私と笑いを抑えきれない海くんは、なんとかお化け屋敷を抜け出た。
「ハァ……疲れた」
「プッ……俺も、疲れた……ククッ……」
「もう、海くん笑いすぎだから!!」
海くんの背中を軽くパンと叩き、睨みつけると、後ろから女の子達の視線を感じてハッとした。
「ほ、ほら……宣伝、回らないと」
チラシを配り終えて教室に戻ると、カフェは大賑わいだった。
「あーっ、海くん、美和子、はよ来て!! みんな待っとるよ!!」
郁美が廊下に顔を出し、大きく手を振った。
「お客さん大勢来てくれたね」
「みんな、あんたらが目的だから、ずっと席から離れんのよ。はよ接客して!!」
慌てて手を洗うと、早速シルバートレイにかき氷を載せられた。隣の海くんのトレイにはうどんとチャーハンが載せられている。
「はいっ、美和子は1番テーブル、海くんは3番テーブルお願いねぇ!!」
「う、うんっ」
歩き出そうとすると、海くんがこそっと私に耳打ちした。
「ほら、宣伝の方が全然楽だっただろ?」
「確かに、そうだね……」
そこへ、郁美の叱咤が飛ぶ。
「ほら、はよ運んで!!」
「は、はいぃっっ!!」
郁美って大人しそうに見えるのに、しっかりしてるし、結構スパルタ。いいお母さんになりそう……
みんなは交代制で展示発表やPTAの物販バザーや『ISAnoBA』を見に行ったのに、宣伝中にお化け屋敷に行ったことがバレたのと、私たちが抜けるとお客さんが来なくなるからという理由で、私と海くんは働きづめだった。
「美和子ちゃん、かーわいぃ!」
馴染みのある声に振り返ると、おばあちゃんが顔をしわくちゃにして嬉しそうにテーブルに座っていて、私の手をギュッと握った。
「あ、おばあちゃん! 来てくれたんだ」
「源六さんが、運転してくれたがよ」
テーブルにはおばあちゃんだけでなく、源六さんと呼ばれたおじいちゃんの他に、同じ年頃のおばあちゃんが2人座っていた。
「こい、おいの孫ぜよ。わっぜ、もじょかどが?」
「わっぜ、もじょか子じゃのぉ。おはん若か頃そっくいね!」
「うんにゃー! こげなもぜぇねが」
「そげんこっちゃねーが。おいの若か頃と瓜二つやっど」
『アハハー!!』
みんなびっくりするぐらいエネルギッシュで若々しい。それにしても、おばあちゃんが私に話しかける鹿児島弁が理解出来ないと思ってたけど、お年寄り同士で喋る鹿児島弁は異国語のようだ。初めてカナダに行った時に聞いた英語の方が、まだ理解出来てたと思う。
おばあちゃんたちは、うどんやチャーハンをみんなで取り分け、かき氷までしっかり食べて、大いに盛り上がって帰ってった。
お客さんには地元の小中学生や近隣の住民の人なんかが来ていて、地元との強い繋がりを感じた。それから、伊佐のもう一つの公立高校である農林高校の学生たちも日曜ということでたくさん訪れていた。
「西郷どん、ひっさしぶりだが!」
「おぉ、お前ら来たか!」
「郁美ー、来たよー」
「キャーッ、花っち、友りん!! わっぜ、嬉しい!! 農校はどうよ?」
あっちこっちでそんな会話が交わされ、カフェは一層賑やかになった。蚊帳の外である私は、この輪の中に入ることが出来ないのは分かっているものの、なんとなく疎外感を感じて少し寂しかった。
「鈴木さん、これ6番テーブルに頼める? 俺はこっち運ぶから」
海くんに声を掛けられて、振り返る。
「あ、うん。分かった」
海くんも4月からの転校生だから、農林高校の生徒に知り合いはいないんだよね。そう思うと、仲間がいてくれてホッとする気持ちに包まれた。
「はぁーっ、疲れたぁー……」
疾風怒濤のお昼が過ぎてようやく仕事を終え、大きく息を吐く。メイド&執事カフェがお昼の短い時間だけで助かったと、心から思った。
うどんやチャーハンは完売し、かなりの売上をあげ、 私たちの学年の出し物は大成功だった。
「2組のスタンプラリーはさすがに時間かかりそうだから無理だけど、お化け屋敷ぐらいなら入れるだろ?」
「え、でも……」
お化け屋敷とか、めっちゃ苦手なんですけど……
躊躇してる間もなく、海くんは強引に私を連れて入ってしまった。
まぁ、お化け屋敷って言ってもクラスの出し物だし、そこまで凝ったことは出来ないから大丈夫だよね……
そう思いながら進んだ途端、
「ウギャーッッ!!」
いきなり井戸から出てきたお化けの人形にビックリして、奇声をあげていた。
「ププッ……鈴木さん、顔に似合わず豪快な驚き方だね」
「だ、だって……いきなりでほんとにビックリしたんだもん」
まだ海くんの肩が揺れている。ふれあいセンターの時にも思ったけど、案外、笑い上戸なのかもしれない。そんな海くんだって、顔に似合わず、だよ。
ビビりまくる私と笑いを抑えきれない海くんは、なんとかお化け屋敷を抜け出た。
「ハァ……疲れた」
「プッ……俺も、疲れた……ククッ……」
「もう、海くん笑いすぎだから!!」
海くんの背中を軽くパンと叩き、睨みつけると、後ろから女の子達の視線を感じてハッとした。
「ほ、ほら……宣伝、回らないと」
チラシを配り終えて教室に戻ると、カフェは大賑わいだった。
「あーっ、海くん、美和子、はよ来て!! みんな待っとるよ!!」
郁美が廊下に顔を出し、大きく手を振った。
「お客さん大勢来てくれたね」
「みんな、あんたらが目的だから、ずっと席から離れんのよ。はよ接客して!!」
慌てて手を洗うと、早速シルバートレイにかき氷を載せられた。隣の海くんのトレイにはうどんとチャーハンが載せられている。
「はいっ、美和子は1番テーブル、海くんは3番テーブルお願いねぇ!!」
「う、うんっ」
歩き出そうとすると、海くんがこそっと私に耳打ちした。
「ほら、宣伝の方が全然楽だっただろ?」
「確かに、そうだね……」
そこへ、郁美の叱咤が飛ぶ。
「ほら、はよ運んで!!」
「は、はいぃっっ!!」
郁美って大人しそうに見えるのに、しっかりしてるし、結構スパルタ。いいお母さんになりそう……
みんなは交代制で展示発表やPTAの物販バザーや『ISAnoBA』を見に行ったのに、宣伝中にお化け屋敷に行ったことがバレたのと、私たちが抜けるとお客さんが来なくなるからという理由で、私と海くんは働きづめだった。
「美和子ちゃん、かーわいぃ!」
馴染みのある声に振り返ると、おばあちゃんが顔をしわくちゃにして嬉しそうにテーブルに座っていて、私の手をギュッと握った。
「あ、おばあちゃん! 来てくれたんだ」
「源六さんが、運転してくれたがよ」
テーブルにはおばあちゃんだけでなく、源六さんと呼ばれたおじいちゃんの他に、同じ年頃のおばあちゃんが2人座っていた。
「こい、おいの孫ぜよ。わっぜ、もじょかどが?」
「わっぜ、もじょか子じゃのぉ。おはん若か頃そっくいね!」
「うんにゃー! こげなもぜぇねが」
「そげんこっちゃねーが。おいの若か頃と瓜二つやっど」
『アハハー!!』
みんなびっくりするぐらいエネルギッシュで若々しい。それにしても、おばあちゃんが私に話しかける鹿児島弁が理解出来ないと思ってたけど、お年寄り同士で喋る鹿児島弁は異国語のようだ。初めてカナダに行った時に聞いた英語の方が、まだ理解出来てたと思う。
おばあちゃんたちは、うどんやチャーハンをみんなで取り分け、かき氷までしっかり食べて、大いに盛り上がって帰ってった。
お客さんには地元の小中学生や近隣の住民の人なんかが来ていて、地元との強い繋がりを感じた。それから、伊佐のもう一つの公立高校である農林高校の学生たちも日曜ということでたくさん訪れていた。
「西郷どん、ひっさしぶりだが!」
「おぉ、お前ら来たか!」
「郁美ー、来たよー」
「キャーッ、花っち、友りん!! わっぜ、嬉しい!! 農校はどうよ?」
あっちこっちでそんな会話が交わされ、カフェは一層賑やかになった。蚊帳の外である私は、この輪の中に入ることが出来ないのは分かっているものの、なんとなく疎外感を感じて少し寂しかった。
「鈴木さん、これ6番テーブルに頼める? 俺はこっち運ぶから」
海くんに声を掛けられて、振り返る。
「あ、うん。分かった」
海くんも4月からの転校生だから、農林高校の生徒に知り合いはいないんだよね。そう思うと、仲間がいてくれてホッとする気持ちに包まれた。
「はぁーっ、疲れたぁー……」
疾風怒濤のお昼が過ぎてようやく仕事を終え、大きく息を吐く。メイド&執事カフェがお昼の短い時間だけで助かったと、心から思った。
うどんやチャーハンは完売し、かなりの売上をあげ、 私たちの学年の出し物は大成功だった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる