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降臨
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薫子が詩織の手を繋ぎ、挨拶に訪れた。
「おじ様、おば様、本日はお招き頂きありがとうございます。来栖財閥150周年、おめでとうございます」
パーティーの場では着物を着ることが多い薫子だが、今日は淡いベージュのカクテルドレスを着ていた。詩織も母親とお揃いのドレスだ。
「しーちゃん、ご挨拶は?」
詩織は恥ずかしそうに母親の後ろに隠れながらも顔だけ覗かせ、ふたりを見上げた。
「こんにちは」
それから、また母親の後ろに隠れてしまった。
誠一郎と凛子は蕩けるような笑顔になった。何も出来ない赤ん坊は見ているだけで癒されるが、幼児のくるくるした愛らしさというのは、ギュッと心臓を鷲掴みにされるほど可愛い。
「詩織ちゃん、大きくなったわねぇ。おふたりの結婚式の時はまだ赤ちゃんって感じだったのに。すっかりお姉ちゃんらしい雰囲気になって」
誠一郎は詩織の後ろに回り、チョンチョンとつついた。振り向いた詩織はびっくりし、薫子の前に回る。今度は誠一郎が前に回ると、そのうちに詩織は笑顔になり、かくれんぼを楽しむようになっていた。
そんな父親の楽しそうな様子を見ていると、ここまで体調が回復したことを喜びつつ、孫が欲しくて堪らないのだろうなと感じ、心が痛んだ。
大学を卒業してから1年以上が経つ。京香にはまだ子供が出来ていないことを会う度にチクリチクリと嫌味を言われながらも、なんとか耐え忍んでいる。
最近では凛子にまで、遠回しに仕事を減らした方がいいのではと勧められた。義母のように明らさまではないものの、両親もまた孫の誕生を待ち望んでいるのだと思うと、美姫は四面楚歌になった気分だった。
大和が薫子に尋ねる。
「悠は、どうしたんだ?」
「それが......」
そう言った後ろから、悠が赤ん坊を抱いて歩いてきた。薫子が悠の腕にある赤ん坊の服を確認すると、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね。
大丈夫......じゃ、なかったみたいだね」
悠はクスッと笑った。
「おむつに収まり切らずに漏れてて、すごいことになってた」
美姫がパァッと顔を明るくした。
「かぁくん、大きくなったね!」
薫子と悠の結婚パーティーにて、こっそり妊娠報告を聞いたことを思い出しながら、その時の子供が産まれてもう既に大きく成長していることに感慨深い思いになる。
ますます、薫子との距離は離れてしまった。
誠一郎と凛子が、悠の腕に抱かれた赤ん坊を覗き込む。
「二人目おめでとう」
「まぁ、薫子さん似かしら。可愛らしい顔つきねぇ」
悠がふたりによく見えるように腕の角度を変えた。
「悠斗と言います。悠々自適の悠に北斗七星の斗です。
抱いてみますか」
悠の申し出に、凛子が目を細めて腕を伸ばした。
「赤ちゃん抱くなんて久しぶりで、緊張してしまうわ」
皆の注目を浴びていたのに、悠斗の登場により一気に主役の座を奪われてしまった詩織がむくれていると、大和が詩織を抱き上げた。
「ほら詩織、肩車してやる」
力強い腕で詩織を肩にのせると、しっかり足を押さえた。
「パパよりたかぁーい!」
詩織は途端にご機嫌になったが、悠は逆に不機嫌になった。
悠斗は物珍しそうにきょろきょろと周りを見回している。
「女の子も可愛いけど、男の子も可愛いわね」
嬉しそうに悠斗を抱く凛子の横で、誠一郎も大きく頷く。
「あぁ、やっぱり赤ん坊は可愛いなぁ。私にも抱かせてくれ」
凛子から悠斗を渡されると、誠一郎は蕩けるような笑みを見せた。
「仕事はもう大和くんに任せたことだし、美姫たちに子供ができたら孫の世話をするのだけが楽しみになるな」
思わずそんな本音が漏れた誠一郎に、凛子はわざと拗ねたような態度を見せた。
「あら、私との生活を第一に考えてくださるのだと思ってましたのに」
「あ、あぁ......すまん。まいったな」
二人のやりとりに、周囲からは笑いが起こる。美姫も笑顔を見せながら、やりきれない気持ちになった。
そんな二人に対し、大和がはにかみながら報告した。
「でも、俺たちも、そろそろ欲しいなとは思ってるんで」
「おじ様、おば様、本日はお招き頂きありがとうございます。来栖財閥150周年、おめでとうございます」
パーティーの場では着物を着ることが多い薫子だが、今日は淡いベージュのカクテルドレスを着ていた。詩織も母親とお揃いのドレスだ。
「しーちゃん、ご挨拶は?」
詩織は恥ずかしそうに母親の後ろに隠れながらも顔だけ覗かせ、ふたりを見上げた。
「こんにちは」
それから、また母親の後ろに隠れてしまった。
誠一郎と凛子は蕩けるような笑顔になった。何も出来ない赤ん坊は見ているだけで癒されるが、幼児のくるくるした愛らしさというのは、ギュッと心臓を鷲掴みにされるほど可愛い。
「詩織ちゃん、大きくなったわねぇ。おふたりの結婚式の時はまだ赤ちゃんって感じだったのに。すっかりお姉ちゃんらしい雰囲気になって」
誠一郎は詩織の後ろに回り、チョンチョンとつついた。振り向いた詩織はびっくりし、薫子の前に回る。今度は誠一郎が前に回ると、そのうちに詩織は笑顔になり、かくれんぼを楽しむようになっていた。
そんな父親の楽しそうな様子を見ていると、ここまで体調が回復したことを喜びつつ、孫が欲しくて堪らないのだろうなと感じ、心が痛んだ。
大学を卒業してから1年以上が経つ。京香にはまだ子供が出来ていないことを会う度にチクリチクリと嫌味を言われながらも、なんとか耐え忍んでいる。
最近では凛子にまで、遠回しに仕事を減らした方がいいのではと勧められた。義母のように明らさまではないものの、両親もまた孫の誕生を待ち望んでいるのだと思うと、美姫は四面楚歌になった気分だった。
大和が薫子に尋ねる。
「悠は、どうしたんだ?」
「それが......」
そう言った後ろから、悠が赤ん坊を抱いて歩いてきた。薫子が悠の腕にある赤ん坊の服を確認すると、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね。
大丈夫......じゃ、なかったみたいだね」
悠はクスッと笑った。
「おむつに収まり切らずに漏れてて、すごいことになってた」
美姫がパァッと顔を明るくした。
「かぁくん、大きくなったね!」
薫子と悠の結婚パーティーにて、こっそり妊娠報告を聞いたことを思い出しながら、その時の子供が産まれてもう既に大きく成長していることに感慨深い思いになる。
ますます、薫子との距離は離れてしまった。
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「二人目おめでとう」
「まぁ、薫子さん似かしら。可愛らしい顔つきねぇ」
悠がふたりによく見えるように腕の角度を変えた。
「悠斗と言います。悠々自適の悠に北斗七星の斗です。
抱いてみますか」
悠の申し出に、凛子が目を細めて腕を伸ばした。
「赤ちゃん抱くなんて久しぶりで、緊張してしまうわ」
皆の注目を浴びていたのに、悠斗の登場により一気に主役の座を奪われてしまった詩織がむくれていると、大和が詩織を抱き上げた。
「ほら詩織、肩車してやる」
力強い腕で詩織を肩にのせると、しっかり足を押さえた。
「パパよりたかぁーい!」
詩織は途端にご機嫌になったが、悠は逆に不機嫌になった。
悠斗は物珍しそうにきょろきょろと周りを見回している。
「女の子も可愛いけど、男の子も可愛いわね」
嬉しそうに悠斗を抱く凛子の横で、誠一郎も大きく頷く。
「あぁ、やっぱり赤ん坊は可愛いなぁ。私にも抱かせてくれ」
凛子から悠斗を渡されると、誠一郎は蕩けるような笑みを見せた。
「仕事はもう大和くんに任せたことだし、美姫たちに子供ができたら孫の世話をするのだけが楽しみになるな」
思わずそんな本音が漏れた誠一郎に、凛子はわざと拗ねたような態度を見せた。
「あら、私との生活を第一に考えてくださるのだと思ってましたのに」
「あ、あぁ......すまん。まいったな」
二人のやりとりに、周囲からは笑いが起こる。美姫も笑顔を見せながら、やりきれない気持ちになった。
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「でも、俺たちも、そろそろ欲しいなとは思ってるんで」
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