小さな王子さまのお話

佐宗

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王子さま、ともだちを助ける

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 穴ウサギ用のワナから矮人族の住処を出ると、そこには昨日と同じように、うっそうとした茂みが広がっていました。
 王子さまが鞘から短剣を引き抜くと、ぼうと周囲が蒼白く光ります。しげみの草木は明らかにその光を嫌がっているようすです。
 草木がじりじりと後退したのを確認し、王子さまは声を張り上げました。
「きのう捕まえた魔族の子どもはどこにいる? 出さないと、お前たちの根っこを切り刻んで根菜スープに入れちゃうぞ」

 王子さまのおどしが効いたというよりは、短剣の薄青い光に恐れおののいたのでしょう。
 草花は動揺をかくせない様子でゆらゆらと揺れ、おどおどと、左右に道を空けました。
 すると周囲から頭一つ抜きん出た大きな木の幹に、蔦にくるまれて垂れ下がる少年の姿が見えました。

「ヴァニオン!」
 王子さまは大きな木に駆け寄りました。ぶらさがったヴァニオンは気を失っていましたが、王子さまの呼びかけにうっすらと反応して指先を動かしました。もう食べられて死んでしまったかもしれないと思っていたので、王子さまは安堵してまた泣き出しそうになりました。

 周囲を調べていたアルヴィスのお父さんが足下の蔦を指さして言いました。
「あんた、その短剣でこの蔦を切れるかね!」
 王子さまは木の根元にかがみ込み、短剣で蔦に切り込みを入れました。
「ギャッ!」
 大木もまわりの花も、哀れな声を上げてザワザワと葉を揺らします。
「この木は本体の食人樹だ。このあたりの花と、おそらく地下茎でつながっているんだろう」

 蔦が切れると、スルスルと、捕まっていたヴァニオンが下に落ちてきました。アルヴィスのお父さんの手を借りて受け止め、そっと地面に下ろします。王子さまのナイフで残りの蔦を切って、がんじがらめになっていた彼をやっと助け出しました。食人樹の粘液を浴びたせいなのか、ヴァニオンの服は半分以上溶けて、体もベタベタしています。
「こいつら、獲物をゆっくりと三日ぐらいかけて溶かして食うんだ。あと二日もしたら、この粘液で骨までどろどろになっていたかもしれない」
「ヴァニオン! ヴァニオン!」
 呼びかけても、返事はありません。
「どうしよう、助かるかな?」
「大丈夫だ、息はある。ただしやけどみたいになった所にはなるべく触るな。しっかり洗って、薬を塗れば良くなる」

 さて、獲物を奪い返されてしまった食人樹の本体は怒っていました。花たちも同様です。さああと風が吹いて、背丈ほどの草花が揺れます。甘ったるい匂いがしてきます。

「花粉を吸わないように!」
 アルヴィスのお父さんが鋭く言いました。
「これを吸うと眠くなる。こいつら、花粉を出して旅人を眠らせて食料にしてきたんだ」
 王子さまもアルヴィスも袖で鼻を押さえます。ヴァニオンはまだ眼が覚めません。

「残念だが、その短剣でもこの馬鹿でかい食人樹を完全に倒すことはできんだろう。不思議な力がこもっているようだが、この蔦を斬るのがせいぜいだ。木こりの神さまから大斧ヽヽでも借りてこなけりゃな。今はとにかく、地下道に戻ろう。この子もすぐに手当が必要だ」
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