4 / 31
この国ができたころのこと
4
しおりを挟む
:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+::+:-・:+:-・:+:
さて、地底の国では、主立った魔族たちが領土を主張しあい、たいへんな争いが起きていました。
お互いを落とし穴に落とすために、たくさんの穴ぼこを掘り(だから今でも冥界は地面が穴ぼこだらけなんです)、窟門と呼ばれる風穴をふさいで往き来を邪魔したり、時には魔獣をけしかけて集落を襲わせたりと、やりたい放題に、戦いにあけくれていました。
そこに突然、得体のしれない神さまが送り込まれてきたのです。
魔族たちは、よく分からないよそ者に対抗するため、ひとまず休戦しました。
突然あらわれたその若者は、大変つややかな長い黒髪に、すばらしい血の色の瞳をもっていました。
魔族たちからすると、そのお姿は、一目で心奪われるほどに美しいものでした。
天上の同族たちには忌み嫌われていたのに、地底ではそのお姿を絶賛されたのです。所変われば、美しさの基準もちがうのです。
また、天から来たらしいその若者は、地底じゅうの闇の精霊と死の精霊を一瞬で配下とするほどの、とてつもないなぞの力をもっていました。
闇の精霊たちと死の精霊たちは大集合し、喜びの歌を歌いました。「冥界の王が降臨された! われらの主神が現れた!」と口々に叫んで、その出現をお祝いしました。
魔族たちは、まだにわかには信じられず、しばらくは遠巻きにその強そうな若者を観察しておりました。かれが『太古の魔獣なみの化けもの』であることは明らかでしたが、魔族の敵なのか味方なのか、よく分からなかったのです。
その強そうな若者…こと闇の神さまは、しばらくひとりぼっちで地底世界をさまよいました。同族たちにあんなふうに追いだされたことが、なかなか忘れられなかったのです。
それは明らかに悲しみという感情でしたが、かれはその気持ちにふたをして、もう会えないきょうだいたちをいつまでも思い浮かべていました。
なにせ同じ身分の神さまはここにはひとりも居ませんし、魔族たちのことは全然よく分からないし、魔獣たちのことなどなおさらよく分かりません。地上界からも死んだ人間たちのたましいが続々とやってきますが、誰にも教わっていないので、それらをどう捌けばよいのかも分かりませんでした。
天上まで続くと言われている大火山の火口から、上昇気流にのって天に帰ろうかなとも思いました。分からないことだらけで、ただ兄弟たちに相談したかったのです。けれど闇の神さまが中腹の洞穴から近づくと火山は突然大噴火を起こし、噴火口は地上界ぐらいまでの高さになってしまいました。これでは、天にまでは届きません。
(その噴火は、地上で大陸が東西二つに割れるほどの大噴火だったそうです)
闇の神さまはあきらめ、天に帰りたい気持ちを押し殺したまま、地底のほら穴に居を構えて過ごすようになりました。そのころになると、天上神たちを思慕する気持ちはだんだんと、呪う気持ちに姿を変えていきました。
……やがて、主だった魔族たちの間で彼のことを「地底をまとめるために遣わされた神だ」と信じる者たちが現れました。気ままに地の底をただようばかりだった精霊たちが、いまは彼に従っているのが何よりの証拠です。精霊族を統率できるのは、神さまだけなのですから。
魔族のうちの9人の氏長が話し合い、ほら穴に近づき、お供え物を置いて、ともにこの地底を統一してほしいことと、自分たちの王になってくれるようにと、お祈りしました。
けれど闇の神さまは、代わる代わるお供え物を置いても、なかなか魔族たちに心を開きません。
天上であれだけのけ者にされていたのですから、自信をなくしているのは無理もないことです。魔族の氏長たちはそんな事情は知りませんでしたが、それでも根気よく、洞窟に通いました。
さて、地底の国では、主立った魔族たちが領土を主張しあい、たいへんな争いが起きていました。
お互いを落とし穴に落とすために、たくさんの穴ぼこを掘り(だから今でも冥界は地面が穴ぼこだらけなんです)、窟門と呼ばれる風穴をふさいで往き来を邪魔したり、時には魔獣をけしかけて集落を襲わせたりと、やりたい放題に、戦いにあけくれていました。
そこに突然、得体のしれない神さまが送り込まれてきたのです。
魔族たちは、よく分からないよそ者に対抗するため、ひとまず休戦しました。
突然あらわれたその若者は、大変つややかな長い黒髪に、すばらしい血の色の瞳をもっていました。
魔族たちからすると、そのお姿は、一目で心奪われるほどに美しいものでした。
天上の同族たちには忌み嫌われていたのに、地底ではそのお姿を絶賛されたのです。所変われば、美しさの基準もちがうのです。
また、天から来たらしいその若者は、地底じゅうの闇の精霊と死の精霊を一瞬で配下とするほどの、とてつもないなぞの力をもっていました。
闇の精霊たちと死の精霊たちは大集合し、喜びの歌を歌いました。「冥界の王が降臨された! われらの主神が現れた!」と口々に叫んで、その出現をお祝いしました。
魔族たちは、まだにわかには信じられず、しばらくは遠巻きにその強そうな若者を観察しておりました。かれが『太古の魔獣なみの化けもの』であることは明らかでしたが、魔族の敵なのか味方なのか、よく分からなかったのです。
その強そうな若者…こと闇の神さまは、しばらくひとりぼっちで地底世界をさまよいました。同族たちにあんなふうに追いだされたことが、なかなか忘れられなかったのです。
それは明らかに悲しみという感情でしたが、かれはその気持ちにふたをして、もう会えないきょうだいたちをいつまでも思い浮かべていました。
なにせ同じ身分の神さまはここにはひとりも居ませんし、魔族たちのことは全然よく分からないし、魔獣たちのことなどなおさらよく分かりません。地上界からも死んだ人間たちのたましいが続々とやってきますが、誰にも教わっていないので、それらをどう捌けばよいのかも分かりませんでした。
天上まで続くと言われている大火山の火口から、上昇気流にのって天に帰ろうかなとも思いました。分からないことだらけで、ただ兄弟たちに相談したかったのです。けれど闇の神さまが中腹の洞穴から近づくと火山は突然大噴火を起こし、噴火口は地上界ぐらいまでの高さになってしまいました。これでは、天にまでは届きません。
(その噴火は、地上で大陸が東西二つに割れるほどの大噴火だったそうです)
闇の神さまはあきらめ、天に帰りたい気持ちを押し殺したまま、地底のほら穴に居を構えて過ごすようになりました。そのころになると、天上神たちを思慕する気持ちはだんだんと、呪う気持ちに姿を変えていきました。
……やがて、主だった魔族たちの間で彼のことを「地底をまとめるために遣わされた神だ」と信じる者たちが現れました。気ままに地の底をただようばかりだった精霊たちが、いまは彼に従っているのが何よりの証拠です。精霊族を統率できるのは、神さまだけなのですから。
魔族のうちの9人の氏長が話し合い、ほら穴に近づき、お供え物を置いて、ともにこの地底を統一してほしいことと、自分たちの王になってくれるようにと、お祈りしました。
けれど闇の神さまは、代わる代わるお供え物を置いても、なかなか魔族たちに心を開きません。
天上であれだけのけ者にされていたのですから、自信をなくしているのは無理もないことです。魔族の氏長たちはそんな事情は知りませんでしたが、それでも根気よく、洞窟に通いました。
0
あなたにおすすめの小説
マジカル・ミッション
碧月あめり
児童書・童話
小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる