泉界のアリア

佐宗

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第三部 天 獄

22虜囚⑤※

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(※!!閲覧注意!!:モブ輪シーンです苦手な方はこの頁は飛ばしてくださいませ)




 ナシェルにも見えるように、挿し入れた指をわざと大胆に蠢かせながら男が嗤う。
「どんな具合だ?」
「凄く柔らかいが……吸い付くみたいに締まってくる……これは、凄いぜ」
「やっぱ女の孔みたいか?」
 至近で交わされる卑しい会話が、徐々に霞んでいく気がした。

 根元まで咥え込まされ、また引き抜かれていく指。間節の感触が蕾の入り口に引っかかっては抜けていく。
 ふたたび深々と指で穿ったあと、中の様子を触診するように掻き回され、敏感な一点にさえためらいなく触れられる。
 戦慄とともに躯の奥に訪れた燃えたつような快美を、しかしナシェルは脳裏で必死で否定し、ひたすら声を我慢した。

「うん、間違いないな……こいつは、初めてじゃないどころか、相当男慣れしてる……」

 蕾の奥を揺さぶりながら男が呟きを漏らした。責め立てるというよりは調べてみて心底驚いているといった口調だ。まさかこれほどに敏感な反応を示されるとは思ってもみなかったというところか。

「やっぱりそうか、思ったとおりだぜ」
「もう開発済ってことか、そりゃ話が早くていい」
「初モノじゃないってのは、ちょいと残念だがな」

 後孔を冒す指の卑猥な感触に、ナシェルの細い腰が徐々に波打ち、躯の中心の雄茎が反応してとうとう勃ちあがり始めた。

「おっ……勃ってきたぜ」
「感じているのか? この状況で? こいつ正真正銘、紛れもない淫乱らしいな」

 羽交い絞めにしていた腕が解かれ、どちらからともなく伸ばされた男達の指が、ナシェルの腹の上に存在を示し始めた弓形に幾重にも絡みつき、全く無秩序な律動を開始する。

 「……く…ッ……」

 中心に感ずる疼きに耐えかね、食いしばった歯の間からとうとう小さく声が漏れた。その間にも、後ろの孔を解きほぐす指は増やされ、三本の太い束になっていた。

「……ッん……ふ………」
「お、声が出始めたぜ」
「もっと啼かせてやろう」

 二人の男の手の狂惑的な蠢きによって、ナシェルの其れはたちまち怒張ともいえるほどそそり立ち、尖端には雫が滲みはじめる。

 とろとろと涙を流し始めた性器は、非情な手たちによってなおも烈しく高められ、秘蕾は色づきを増しながら油塗れの三本の指を咥え込む。蕩かされていく。

「…は………、」
 ナシェルは陶酔に耐えかねて息を弾ませる。白い胸が大きく上下した。

(絶対に、絶対に魂を売り渡す気はない。幾ら恥辱に塗れようとも、私は……)

 もっと啼いてみせろと口々に嘲笑いながら、男達は手姦を続ける。下肢を震わせ、全身に汗をかきはじめながらも必死に淫虐に耐えるナシェルの様を見て、彼等もまた昂りを抑えきれなくなってきていた。

「もういいだろう。おいお前ら、それやめて、しっかり体押さえてろ。ブチ込んでやる」

 後孔を寛げていた男が切羽詰まった声で云った。
 ペニスを玩弄していた指たちが離れたかと思うや、再びがっちりと両側から羽交い絞めにされた。
 尻孔から指が引き抜かれていく。たまらない疼きに、思わず顎を仰け反らせる。

「…ん……うッ…」
「こりゃいい! 早く欲しくてたまらないみたいだぜ。早く挿れてやれよ」
「ちょっと待て、急かすな」

 下服をくつろげ己の茎を引っ張り出した男は、そのまま広げさせたナシェルの下肢の中心、露わに油を弾いて光る秘部にそれを宛がうと、一息に押し入った。

 「…ぅ………ッ…!!」

 屈辱に耐えるナシェルの歯の隙間から、か細い声が迸った。ざわざわと、汗に湿った黒髪が乱れ流れる。

「ああ、すげ、締まってくる……何て上モノだ……!」

 驚嘆の声を漏らしながら男が抽送を開始した。

 「……う……ぁ…、」

 悪意に満ちたものが、欲望の赴くまま、飛沫を弾かせるようにしてナシェルの内部を捏ねくり廻す。
 過激な凌辱にすらくずおれまいとする心は、男が動きを早めるにつれどうしようもなく掻き乱されはじめてしまう。
  だが、持ちうる限りの最大限の自制心をもって、ナシェルは己を保ち続けた。

 (…乱れてなど…乱れてなどやるものか!)

 下卑た視線に晒され猥褻な言葉を浴びせかけられながら、ナシェルは一切の感情を捨て去り、ひたすら下半身を責める物をただただ己の身の内に受け入れながら、時が過ぎ行くのを待った。

 宝玉のような白肌が徐々に、恥辱の朱に染まってゆく。
 淫らな突き上げを受けるたび、秀麗な頤が震え、反り上がる。
 かぎりなく虚ろに近づいた群青色の双眸が、真上を向く。
 玻璃窓から差し込む光が、眼の奥をも、躯の奥をも穿つようだ。
 眩しい。

(何処にもない…何処を探しても、)

 悲しみなど感じぬと自らに言い聞かせるが、どんな時でも自分を視姦していたはずの紅玉の双眸が、ここにはないということが、どうしようもなくナシェルの心を抉っていた。

(貴方がいない。貴方が……、)

 穢れにまみれながら、痛いのはその事実だけだと、無理矢理心を塞ぎ続けた。
 ぽっかりと開いたまま、何をも視ることを拒んだその群青の眸で、ナシェルはただ白日夢に半身の姿だけを求めた。

 いつも、手を伸ばせばすぐに届くところに居てくれたのに。
 目を閉じれば常にその眼差しを感じることができたのに。
 ―――それを拒み続けたのは、己のほうだったのに。

 あの眼差しを失ってはじめて心の奥底から求めるなんて、己はなんと都合の良い生き物かと思う。
 厭わしかったあの烈しい紅が、遠く離れた今は途方もなく慕わしい。

 だがどれだけ恋おうと半身が現れるはずもない。
 手遅れだ。
 己の招いたこの結果から逃れるすべは、もうない。

 王を裏切り続けた己には、…こんな虜囚の辱めを受けても、救いを求め声を嗄らす権利など、ないではないか。



 ただ延々と繰り返される暴虐。
 尻を叩かれ、乳首を抓られ、峠に達した男によって体奥に、熱いしぶきが打ちかけられる。
 乱れた息を鎮める暇もなく攻者が交代したかと思えば、糸をひいて男のあたたかい白涎を垂らすナシェルの秘蕾に、再び他の剛柱が挿入される。

 「………ぃぁ、あ…ッ!!」

 ふたたび打ち寄せる荒波のごとき波濤。掴まる場所さえ見つからず沈んでゆく意識。

 全身から生汗を滴らせ、三本の熱く狂おしい焼きごてに代わる代わる奥を穿たれながら、ナシェルはそれでもひたすらに、憎み、愛する姿を……王の眼差しを、探し続けていた。

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