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第43話(十夢目線)
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「はい?」
「あ、十夢先生。お疲れ様です。今どこですか?」
ラジオと同じ声がスマホから聞こえてくる。公共放送の落ち着いた声色とは違い、もっと明るく砕けた口調をしていた。
十夢は口元を緩ませつつ、答えた。
「家だよ。ラジオ聞きながら飲んでいたところ」
「あ。それ、おれの番組でしょ? お便り読まれたの、聞きました?」
「今読まれてるよ。後で録音したのを聞き直そうかと思ってる」
「じゃ、一緒に聞き直しましょう! 今からそっちに行きますから」
「今から? もう九時過ぎてるけど……」
「いいじゃないですか。今先生の家の近くですし」
つまり、最初から来る気満々だったということだ。十夢は少し笑って答えた。
「はいはい、わかったよ。待ってるから早くおいで」
「はいっ! すぐ行きます!」
彼の声が弾んだのを聞いてから、十夢は電話を切った。
ラジオに目をやったら、既に「とみー」のお便りは読み終わっていて、違う人のお便りが読み上げられていた。
(……まあいいか)
自分には、それ以外の特別な声を聞くチャンスがいくらでもある。今からその本人が来てくれるのだ。この時間なら、ちょっとお話して「はい、さようなら」という流れにはなるまい。おそらく本人もそのつもりなのだろう。可愛い子だ。
上質な音楽を聞くのと同じように、そっと目を閉じてラジオの声を味わった。
五分ほど経ったところで、玄関の呼び鈴が鳴った。十夢はソファーから立ち上がり、リビングのドアフォンを覗き込んだ。画面に柚希の姿が映っている。
通話ボタンを押し、
「開いてるから自分で入っておいで」
と言ったら、直後にドアが開く音がした。「お邪魔します!」という声が聞こえ、次いでリビングに声の主が現れる。
「あ、十夢先生。お疲れ様です。今どこですか?」
ラジオと同じ声がスマホから聞こえてくる。公共放送の落ち着いた声色とは違い、もっと明るく砕けた口調をしていた。
十夢は口元を緩ませつつ、答えた。
「家だよ。ラジオ聞きながら飲んでいたところ」
「あ。それ、おれの番組でしょ? お便り読まれたの、聞きました?」
「今読まれてるよ。後で録音したのを聞き直そうかと思ってる」
「じゃ、一緒に聞き直しましょう! 今からそっちに行きますから」
「今から? もう九時過ぎてるけど……」
「いいじゃないですか。今先生の家の近くですし」
つまり、最初から来る気満々だったということだ。十夢は少し笑って答えた。
「はいはい、わかったよ。待ってるから早くおいで」
「はいっ! すぐ行きます!」
彼の声が弾んだのを聞いてから、十夢は電話を切った。
ラジオに目をやったら、既に「とみー」のお便りは読み終わっていて、違う人のお便りが読み上げられていた。
(……まあいいか)
自分には、それ以外の特別な声を聞くチャンスがいくらでもある。今からその本人が来てくれるのだ。この時間なら、ちょっとお話して「はい、さようなら」という流れにはなるまい。おそらく本人もそのつもりなのだろう。可愛い子だ。
上質な音楽を聞くのと同じように、そっと目を閉じてラジオの声を味わった。
五分ほど経ったところで、玄関の呼び鈴が鳴った。十夢はソファーから立ち上がり、リビングのドアフォンを覗き込んだ。画面に柚希の姿が映っている。
通話ボタンを押し、
「開いてるから自分で入っておいで」
と言ったら、直後にドアが開く音がした。「お邪魔します!」という声が聞こえ、次いでリビングに声の主が現れる。
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