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春休み編

第39話

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「だから心配なんですよ。もし祐介さんが迫ってきたらどうするんですか。先生、ちゃんと断ってくれるんですか?」
「そりゃあ断るよ。俺は祐介のこと、友達みたいな弟としか思ってないし」
「でも……」
「大丈夫だって。何度も言うけど、俺は夏樹のことが一番好きなんだ。その気持ちはずっと変わらないから、な?」
「…………」

 そう言われても、夏樹の心は晴れなかった。

 ずっと胸の内に隠していた疑問が、今更ながら頭をもたげてきた。

「先生は……俺のどこがそんなに好きなんですか?」
「はっ?」
「俺……自分で言うのもなんですけど、先生にそこまで気に入られる要素、持ってないですよ? 運動もできないし、料理も作れないし、お茶のお作法も知りません。先生は『可愛い』って言ってくれるけど、そんなの若いうちだけでしょ。十年も経てば今の若さもなくなっちゃいますし。それ以外で……先生が気に入っているところ、何かあるんですか?」
「夏樹……」
「外見以外で、俺の好きなところってどこなんですか?」

 多分自分は、祐介に嫉妬しているわけではない。自分に自信がないのだ。顔と身体以外でこの変態教師を引きつけられるものがないとわかっているから、自分よりも優れている祐介を妬んでしまう。二人の仲を疑いたくなる。

 市川からすれば自分なんて、十歳も年下の子供にしか見えないだろうし……。

「はあ……」

 市川が小さく息を吐いた。呆れているようにも、笑っているようにも聞こえた。
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