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第百二十話
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――本当に尻尾を犠牲にしてくれたんだな……。
初めて晴斗は、この食えないタヌキに心から感謝したくなった。
九尾もギュッと三尾を胸に抱き、優しくタヌキの身体を撫でながら言った。
「三尾……ありがとう。あなたのおかげで助かった。あなたのような親友がいて、私は本当に幸せだ」
「親友かぁ……。ま、今はそれでもいいけどね。僕たち、不慮の事故で三途の川を渡りさえしなければ、いつまでも生きていられるしさ。なーんにもできない無力な人間と違ってね」
自慢げに、三尾がアカンベーをしてくる。やや引っ掛かる言動だったが、今はあえて突っ込むのをやめた。そして、逆にこんなことを聞いてみた。
「お前、何が好物なんだ?」
「は?」
「だから好きな食べ物だよ。あるだろ? 『たぬきそば』とか、『たぬきむすび』とか」
「……なんで『たぬき系』の料理が好きなこと前提なわけ? ていうか、『たぬきそば』にタヌキなんか入ってないし。勝手なイメージで変な名前つけるから、人間は嫌いだよ」
「悪かったな。……で? お前は何が好きなんだ?」
「…………」
三尾はちょっと頭をひねった後、ふと思い出したようにこう答えた。
「『温泉卵の天ぷら』かな。九尾ちゃんには言ったと思うけど、僕、昔家康さんの世話になってて。家康さん天ぷら好きで、よく食事に出してくれたんだよね。……で、ある時温泉卵の天ぷらが出たんだけど、それがもう感動するほど美味しくてさ~。当時卵は高級食材で――というか、あまり食べる文化もなかったんだけど――あの味は今でも忘れられないな。家康さんと一緒に食べた、最後の天ぷらだったからね」
「え? 最後って……」
「最後は最後だよ。家康さん、天下取った時にはもう歳で長くはなかったの。当時食べる習慣がなかった卵を食べていたのも、栄養価が高かったからに他ならない。……ま、それでも結局歳には勝てなかったんだけどね」
「三尾……」
「というわけで、温泉卵の天ぷら。どうせだから、とびっきり美味しいヤツを用意してよね。僕の姿が戻るまで、毎日出してもらうから」
再びアカンベーをしてくる三尾。
初めて晴斗は、この食えないタヌキに心から感謝したくなった。
九尾もギュッと三尾を胸に抱き、優しくタヌキの身体を撫でながら言った。
「三尾……ありがとう。あなたのおかげで助かった。あなたのような親友がいて、私は本当に幸せだ」
「親友かぁ……。ま、今はそれでもいいけどね。僕たち、不慮の事故で三途の川を渡りさえしなければ、いつまでも生きていられるしさ。なーんにもできない無力な人間と違ってね」
自慢げに、三尾がアカンベーをしてくる。やや引っ掛かる言動だったが、今はあえて突っ込むのをやめた。そして、逆にこんなことを聞いてみた。
「お前、何が好物なんだ?」
「は?」
「だから好きな食べ物だよ。あるだろ? 『たぬきそば』とか、『たぬきむすび』とか」
「……なんで『たぬき系』の料理が好きなこと前提なわけ? ていうか、『たぬきそば』にタヌキなんか入ってないし。勝手なイメージで変な名前つけるから、人間は嫌いだよ」
「悪かったな。……で? お前は何が好きなんだ?」
「…………」
三尾はちょっと頭をひねった後、ふと思い出したようにこう答えた。
「『温泉卵の天ぷら』かな。九尾ちゃんには言ったと思うけど、僕、昔家康さんの世話になってて。家康さん天ぷら好きで、よく食事に出してくれたんだよね。……で、ある時温泉卵の天ぷらが出たんだけど、それがもう感動するほど美味しくてさ~。当時卵は高級食材で――というか、あまり食べる文化もなかったんだけど――あの味は今でも忘れられないな。家康さんと一緒に食べた、最後の天ぷらだったからね」
「え? 最後って……」
「最後は最後だよ。家康さん、天下取った時にはもう歳で長くはなかったの。当時食べる習慣がなかった卵を食べていたのも、栄養価が高かったからに他ならない。……ま、それでも結局歳には勝てなかったんだけどね」
「三尾……」
「というわけで、温泉卵の天ぷら。どうせだから、とびっきり美味しいヤツを用意してよね。僕の姿が戻るまで、毎日出してもらうから」
再びアカンベーをしてくる三尾。
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