深淵の村

栗菓子

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第4話 殺意

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ある一線を越えたら、人は人に殺意を向ける・・。

単純な動機もあれば、複雑な因果と要素が絡み合って、突発的な事件が起きる。 これは人類の中で普遍的な現象である。

しかし・・ある女はふと疑問に思った。 その殺意をなくした世界はあるのではないか・・。変化がない世界で全てが無関心な世界だったら永遠の平和が生まれる・・。

そう女はいってそんな世界をつくったらどうかと男に囁いた。

男はそうだなと言って、すぐに女を殺害した。 男は知っていた。人間が二人いる限り争いは避けられないと、そして男は自分を自覚していた。

男はどうしようもなく自分だけを愛していたのだ。 

女は唯一の他者だった。他者がいないと世界は平和なままなのだ。

そうやって、男は、己の複製をつくって、完璧な理想世界を創り上げた。

ノアの世界・・。 

かすかに情はあったが、それ以上に女の危険性、醜悪性を見逃すことはできなかった。

女の呆然とした顔が脳裏に浮かんだ。 これが殺意なのだなと思った。


矛盾だ。女に殺意を向けて殺した男が、創造神となる。 呆れるほど、自分しか見えていない閉鎖的な世界が生まれる。


だが、これが男の願いなのだ。単に邪魔で、目障りだったのだ。

男は、偉大なる者としてその世界に君臨するようになった。

男の頭脳は卓越していて、全世界の極僅かな選ばれし者だった。 その複製は更なる知恵と知識を貯めて、或る日、

高次元でも、神の次元でも、遥かな外宇宙へも移動できる力を得た。


それを契機に男たちの一族は、全ての知恵と知識、法則などを探求し始めた。

男たちは、狂ったように探求し続けた。 そして数多の神を創った。

そして、戯れにその星の管理人として設定した。 ある日、一定の罪と命の数が惑星の限界人数を超えたら自動的に
爆破するように仕掛けた。


それに気づいた惑星の天才は、あえて罪人の汚名を被ることで、大量虐殺者として、数百万人、数千万人 膨大な民族と、国を滅ぼした。

世界が清浄化して、安寧を取り戻したころ、天才は怨嗟とともに処罰された。

結果的に天才に救われた惑星だったのに・・男は、天才に敬意を払って黙祷した。


真実を知るのは極数人だった。天才の家族と、惑星の秘密を知っている者だけ・・。


その真実も発展するにつれ、聡明な人たちが真実を暴くのは時間の問題だろう。


その時が楽しみだと、男は愉悦の笑みを浮かべた。


大量殺戮者が惑星の救世主とは夢にも思わなかっただろう・・なんという皮肉な真理か・・。


絶望と共にかれらは自分の棲んだ惑星を以前の様には愛せなくなるだろう・・。

脱出を図るかもしれない。その予想は何度も試されていたことだった。


だが、男はあえて放置した。この実験惑星はどうなるのか見ものだった。






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