深淵の村

栗菓子

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閑話

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あの子は良い子でしたね。素直に従って、男に媚びて、愛されて死んでいった。

わずか5年の生ですが、なあにあれは上出来ですよね。 それにしても良い世の中になりましたね。

もう汚らしいオリジナルのモノなど見たくもない。 人工子宮で成長を早められた人工の女は、清潔で、早く死んでくれる。

そういう風に仕込んだし、精の受け皿でも優良な個体が生まれるようになった。 自然は駄目ですよ。貴方、粗悪で野蛮で依存的で出来の悪い子ばかり産む。金食い虫だし、寄生虫体質が多かった。


素敵ですね。男の夢の結晶。 子供も素直に孕んで、大人しく死んでくれる。

子どもは可愛いですよね。 人工で卵子と精子を組み合わせてセレクトするギフトも面白いですが・・。

わたしはねえ、原始的な交尾が好きなんですよ。

キモ。とか生意気にも嫌がるノーマルより、人工のほうが良いですよ。 

もうね。どうしてこんな醜い家畜を飼っているんだろうって情けなくなりましたよ。 頭が悪くて、口も悪くて、気性も荒くて悪い事ばかりする。

あそこも汚いし、どうしてこんな家畜がずっとはびこるのかと思っていました。

うれしいです。あの戦が無かったら、本当にほとんどの女を駆逐できなかったでしょう。

ノーマルの女のほうがいいんじゃないのか?

とんでもない。 あれはねえ。粗悪な個体が生き延びただけの子孫ですよ。

貴方。どうせなら良い匂いがして大人しいモノのほうが良いでしょう。

無駄に長生きして、頭も壊れるし、頭のおかしい個体がどんどん増えて一時は国は滅亡寸前でしたよ。

もう切り裂きたくて、たまらなかった。死臭や腐臭を放つんですよ。

何もできないくせに、無駄に自意識は高くて、無駄にお金を浪費して、愛を求め、理想は高いんですよ。


もうね。愛想尽き果てましたよ。

天才や偉大な男たちが、この問題を解決して、静かな良い時代が来た。

汚らしい女たちは、新しい土地の肥料になりましたよ。

その痕跡を埋めて、その上に、この実験場 ノアの島を作りました。

ここで、より良い個体が創り続けられるのです。

ああ素敵ではありませんか。

前の個体はどうしたか?嗚呼最後にはキュッと首を絞めて殺してやりましたよ。

自我や自意識が芽生えたのでうんざりして殺しました。

もうね。汚らしい口を吐くようになったらおしまいですよ。

古代の人たちは正しかったんですよ。

ゴミが多いんです。めんどくさくて汚くて嫌な匂いばかり放つんです。

ほんとうにあっという間に消えて清々しました。

あなたは何頭 首を絞めて殺しましたか? まあままいいじゃないですか。これはわたしとあなたの秘密で・・。



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