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冬馬君は平和な日々を取り戻し……

冬馬君は彼女に萌える

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 翌日の月曜日の放課後、俺は早速道場へと顔を出していた。

 昨日帰ってから連絡したら、明日なら平気だと返ってきたからだ。

 自主練の日なので、自由に使って良いそうだ。

 というわけで……。

「さて、剛真。やるとするか」

「おう!言っておくが、俺も負けられぬ!!」

「ククク、お互いにな」

 何故なら……。

「冬馬君~!頑張って~!道着姿カッコいいよ~!」

「浜中君ー!負けんなよー!勝ったら……うん、一緒に帰ってあげるー!」

 と、このような状態なわけだ。
 ちなみに、部員達は色々な意味で男泣きしてる。
 部長にも春が来たと……もしくは、羨ましいと。
 いや、まだ付き合ってもいないけどね……。

「なっ——!?ま、負けられん……!冬馬!本気でいかせてもらおう!!」

「げげっ!?あいつなんてこと言いやがる……おいおい、素人に本気とか……聞いちゃいねえな……とりあえず、死なないようにしよう」

「行くぞ!!」

「こいや!」

 お互いに、道着を掴んでは払うを繰り返す!

「くっ——!?やりおる……!」

「チィ——!相変わらず隙がねえ……!」

「どうした!?冬馬!!組み合うのは怖いか!?」

「あぁ!?舐めんなよ!上等だ!コラァ!!」

 道場の真ん中にて、堂々と組み合う!

「ぐぬぬっ!!やはり、体幹がしっかりしておるな!」

「当たり前だ……!パワーでお前に敵うわけがないからな……!」

「部、部長と互角……」

「あいつ、なんでも得意なのか!?」

「苦手なものとかないのかよ!?」

 均衡状態が続く……が。

「どうした!?力が抜けてきてるぞ!?」

「クッ……!スタミナでは勝てないか……!」

「ふんぬっ!!」

「おおっ!?」

 俺が息を吐いたタイミングを見計らって、剛真が大外刈りを仕掛けてきた!

 そしてドーン!!という音がし……勝負はついた。

「チクショー、負けたかぁ……あぁー!疲れたー!」

「ハァ、ハァ……なんという奴だろうか。インターハイでも、こんな強い奴滅多にいない。だが、これで騎馬戦のリベンジを果たした」

「フゥ……ああ、そうだな。次は何して遊ぶか考えておくか」

「冬馬君!?大丈夫なの~!?」

「浜中君ー!良いぞー!今日、一緒に帰ろー!」

「ど、どうすれば良い?と、冬馬!!」

「どうって……帰れば良いじゃんか。勝利者としてな。というか、インターハイにもきてもらったらいいんじゃないか?お前、強くなりそうだ」

「グ、グヌゥ……!き、緊張するのである……!」

「……まあ、気持ちはわかるがな。男ならどっしりと構えてろ。なっ?」

「……そうだな。情けない男になるところだった……」

 その後、帰るかと思ったのだが……。

「ねえねえ!冬馬君!私にもできるかな!?」

「あっ!私もー!ちょっとやってみたいかも~」

「はい?いや、まあ……良いかもな」

「ん?何故だ?」

「綾は超絶可愛いからな。いざという時の為に、護身術を教えるのもアリだなと思ってな」

「ちょ、超絶……はぅ……」

「うむ!森川さんも可愛らしいので、必要かもしれないな!」

「何言ってるし!!」



 というわけで、女子用の道着に着替えたわけなのだが……。
 これは、嬉しい誤算があったな……。

「綾……めちゃくちゃ可愛いな!オイ!!」

「ふえっ!?ど、どういうこと!?え?普通の道着だよね……?」

 あっちでも剛真が、森川に似合っていると言っている。

「女子にはわからんか……!この可愛さは……!しかも……ポニーテール!!」

 男ならば分かるであろう!
 可愛い女子の道着姿の破壊力を!!
 しかも、ポニテ!!
 こう……萌えるわな!!

「よ、よくわかんないけど……あ、ありがとぅ……そ、そんなに見つめられると照れます……」

「断る。この目に焼き付けておく」

「あぅぅ……」

 ひとしきり眺め満足したので、訓練の時間にする。
 ちなみに、スマホにて綾の写真を撮ったことを明記しておこう。
 照れ顔もまたよし!

「まずは、俺が横から右の肩を掴むから……」

「えっと……こう?」

「そうだ。肩を掴んだ方の手を、掴まれてない方の手で思い切り引くんだ。それだけでも、相手はよろめく。もっと言えば、同時に肘鉄も食らわすと良いな」

「で、できるかな……?」

「まあ、怖いもんな。中々難しいよなぁ……1番単純だが、痛いやつを教えるか」

「えっと、どうしたらいいかな?」

「後ろ向いてくれ」

「う、うん……」

 ……ヤバイ、うなじが綺麗だ。
 ずっと見ていられるな……。
 え?俺がまるで変態だって?
 ……否定ができない。
 しかも、今から抱きつくし。
 
「では……失礼」

 後ろから綾の両腕と共に、身体をぎゅっと抱きしめる。
 と、同時にとてつもなく良い香りが俺を襲う!
 いかん……ムラムラしそうだ。
 いや、これじゃ変態そのものじゃねえか!
 しっかりしろ!これは必要な訓練なんだ!

「ひゃん!?」

「どうした?ほら、膝を曲げて俺の頭に頭突きをするんだよ。俺は、綾を襲う暴漢なんだから撃退しないと」

「え、で、でも……ドキドキしちゃう……」

「ほら、俺を暴漢だと思って」

「お、思えないよぉ~……だって……キュンとしちゃうもん……」

「ゴハッ!?」

 あまりの可愛さに、俺はその場に崩れ落ちる!!

「あ、あれ?ほどけた……?」

「や、やるな……!俺を萌え倒すとは……!」

 綾は、見事に俺を撃退することができた。
 萌えという攻撃により……。
 え?趣旨が違うって? 
 うん、俺もそう思う。

 もちろん、その後ちゃんとした訓練をした。
 というか、女子同士でやれば良いだけの話だった。
 俺も剛真も、道着姿の可愛さに冷静ではいられなかったようだ。




「なんか……楽しかったね!」

「そうか、ならよかったよ。俺も可愛い綾が見れて大満足だ」

「はぅ……と、冬馬君もかっこよかったですよ……?」

「ありがとよ。あっ、そういや黒野はどうした?」

 昼休みは俺といたし、放課後はこれだしな。

「うん、明日の昼休みに伝えるって。で、そのまま放課後遊ぶことにしたよー」

「そっか。じゃあ、明日はどうすっかなー」

「ふふ、寂しいですか~?」

「ああ、寂しいな」

「ふえっ!?あ、えっと、あの……」

「何故聞いた本人が照れる……?」

「だ、だって……むぅ~……私だって大好きな冬馬君を照れさせたいのです……」

「そんなの……簡単なことだ」

「え……?あれ?なんで顔背けて……どうして、今照れてるのー!?」

 ……自覚がないとは恐ろしいな。

   そのセリフ自体がどんな破壊力を持っているかも知らずに……。

 全く……可愛い彼女なことだ。

 一体いつになったら、慣れるのいうのか。

 ……そんな日は来なそうだな……。


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