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冬馬君は平和な日々を取り戻し……

冬馬君は最後に大事なことに気づく

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 ……重苦しい空気が流れたが。

 ちょうど良いタイミングで、食事が来たようだ。

「失礼します」

「あっ、ありがとうございます。そこに置いといてください」

「はい、畏まりました。では、ごゆっくりどうぞ」

 仲居さんは、丁寧にお辞儀をして部屋を退出した。

「さあ、食べよう。真兄、とりあえずは保留。黒野もだ。腹が減っては、おちおち話もできない。綾、手伝ってくれ」

「う、うん!」

 2人でお盆を取り、テーブルに置いていく。

「そうだな……冬馬の言う通りだ。加奈、すまなかった。とりあえず、食べるとしよう」

「兄さん……いいえ、私こそごめんなさい。そうね、食べましょうか」

 俺と綾も、天ざるそばを食べることにする。

「ん!?美味いな!サクサクでカリカリのエビの天ぷらだ!なのに中は半生だ!」

「美味しいね!お蕎麦も香りも良いし、喉越しが良いね!」

「そうだろそうだろ!ここのは高いだけあって美味いからな」

「そうね、美味しいわね」



 その後楽しく食事済ませてから、本題に入る。

「で、母親の件は一先ず置いといて……なんで、俺らに知らせに来たんだ?」

「あっ……そういえばそうだね。さっきのアレで忘れちゃってた」

「ああ、それなら……こいつが仲間外れが嫌だからってさ」

「兄さん!?そんなことは言ってないわ!」

「言ってたろ!森川がピンチの時に何も出来ず家にいたって。冬馬だって、清水を連れてたのにって。私だけ、なんの力にもなれてないって」

「そ、それは……」

「加奈……」

「それは違うぞ、黒野。森川のことを真兄に知らせたのはお前だな?」

「ええ……」

「そのおかげで俺は奴らを潰すことに専念できたし、後始末もする必要がなくなった。世間にも知られることなく、学校にも知られていない。それは真兄がいたからだ。俺も真兄の仲間も、真兄に伝える気は全くなかった……いや、正確じゃないな。遠慮して、伝えることが出来なかったんだ。だから、お前が伝えてくれたから助かったよ」

「吉野……あ、ありがとう」

「むぅ……冬馬君がかっこいいのです。でも、加奈が照れているのです……複雑です」

「綾、大丈夫よ。とったりしないから。というか、私じゃ見向きもされないから」

「黒野には悪いが、そういうことだ。俺の目には綾しか映らない、わかったな?」

「ひゃ、ひゃい……うぅー……」

「それはそれで何かムカつくわね……」

「無駄無駄、こいつらいつもこんなだし。全く、独身の俺の身にもなれってんだ」

「真兄はちゃらんぽらんだからなぁ。で、それだけ?後にはなんかあるの?」

「こいつが俺と出掛けたいって言うんだよ……まあ、幼かった加奈に罪はない。だから、俺も加奈の願いは叶えてあげたいとは思うわけよ」

「ウンウン、その気持ちはわかる。妹は可愛いからな!」

「私もわかります。誠也も可愛いですもん」

「は、恥ずかしいわね。そうか……私だけ末っ子なのね」

「まあ、そんなわけでな。カモフラージュが欲しいわけよ」

「……ああ、そういうことか」

「え?どういうこと?」

「真兄と黒野だけだったら変に思われるけど、俺と綾が一緒にいれば変な目で見られないってことだろ?」

「そういうことだ。だからお前らのイチャイチャを邪魔する気は無いが、たまに付き合ってくれると助かる。無論、最悪ばれても構わんしな。もちろん、ばれないに越したことはないがな」

「2人とも、ごめんなさい。たまにでいいので、付き合ってください……そ、その、兄さんとお出掛けがしたいの……は、恥ずかしい……」

「加奈が頼みごとなんて……冬馬君……」

「みなまで言うな。恩人と、大事な彼女の大切な友達の頼み……これで断る奴は男じゃない。ああ、わかった。前もって言ってくれれば、その日を空けとくよ」

「冬馬……へっ、良い男になったな」

「吉野……ありがとう」

「えへへ、やっぱり冬馬君大好き!」

「よせやい照れるわ。で、森川には言うんだろ?」

「それはもちろん。あの子だけ仲間はずれにはしないわ。綾、一緒に説明してくれるかしら?」

「もちろん!ふふ~ん!良いこと思いついちゃった!」

「綾?……まあ、良いけど……ほどほどにな……」

 ……なんとなくだけど想像はつくがな。  

 その後綾と黒野がお花を摘みに行っている間に、真兄と話していると………。

「あっ、そういや……淳と蓮二から連絡来たぞ」

「……2人ともなんだって?大丈夫だったのかな?俺、任せろって言われたから甘えちゃったけど……」

「馬鹿野郎、それで良いんだよ。俺達大人を頼ってくれ。もちろん、最近の大人が信用ならないのは確かだ。だが、そうじゃない大人もいる」

「真兄……うん、わかったよ。ありがとう」

「……ガラにもないことを言っちまったな……それでだな、4人で飯でもどうか?だってよ。カラオケとかも行きたいってよ、お前上手かったもんな」

「おっ、良いね。何年振りかな……2年以上かぁ」

「早いもんだな。そして、人生とは何が起きるかわからないもんだ。まさか、赴任先で弟分の冬馬に会い、妹の加奈にまで会うんだからな」

「たしかに……俺も、まさか彼女ができるとは思ってなかったし」
 
「随分と惚れ込んでるみたいだな?」

「まあね……でも必死だよ。綾は可愛いし性格も良いからモテるからね。本人は隠してるつもりだけど、告白されてるのは知ってるし。未だに、陰口なんかも叩かれるしね。俺は、もっとしっかりしないと。誰から見ても、綾と釣り合う男になるために……」

「ククク……本当に良い男になって……きっと清水のおかげでもあるんだろうな。良かったな、冬馬。人生観や、価値観を変えてくれる子はそうはいない。言うまでもないことだが、大事にしろよ?」

「ああ、もちろん。ただ……大事にし過ぎても重たいし、悩み所ではある」

「ハハ!それは言えてるな!クク、青春だねえ……」

 その後綾達が帰ってくるのを待ち、店を出て解散となった。

「真兄!ご馳走さま!」

「先生!ご馳走さまです!」

「兄さん、ご馳走さま」

「おう、気をつけて帰れよ」




 その後、俺は2人を送り届け帰宅する。

「あっ!お兄!お帰りなさい!」

 ……そっか。
 最近、相手してあげてないな。

「なあ、麻里奈」

「ん?どしたの?」

「今度、2人で出掛けるか?」

「ふえっ?べ、別に!で、でも……お兄がどうしてもって言うなら良いよ……?」

「ああ、頼む。可愛い妹とお出掛けがしたいんだよ」

「ふふ~ん!しようがないなぁ~お兄は!可愛い妹がお出掛けしてあげる!」

 そう言い、気分良さげにリビングへ入っていった。   

 ……どうやら、正解だったようだ。

 フゥ、アブナイアブナイ……兄貴失格になるところだったな。

 黒野のおかげで思い出せたな。

 妹も大事だという、当たり前のことを……。











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